第97回選抜高校野球大会に初出場する滋賀短大付は、レベルアップのために様々なトレーニングを練習に取り入れている。投手陣…

 第97回選抜高校野球大会に初出場する滋賀短大付は、レベルアップのために様々なトレーニングを練習に取り入れている。投手陣を中心に、自分に適した「構え」を作る「4スタンス理論」の導入がその一つだ。

 4スタンス理論は、人間の体の重心位置によって理想の動きは違うという発想に基づく。ゴルフなどを中心に取り入れられている考え方だ。滋賀短大付にこれを指導するのは大阪市の工藤俊介トレーナー(42)だ。

 工藤トレーナーの説明によると、人間の足の裏の重心の置き位置で考えた場合、つま先・閉じタイプ(A1)、つま先・開きタイプ(A2)、かかと・閉じタイプ(B1)、かかと・開きタイプ(B2)の4タイプに分類できるという。

 それは選手によって様々だ。そのタイプに応じて本来の力を出せる構えは幾通りもある、というものだ。

 2月20日、工藤トレーナーは大津市の滋賀短大付を訪問。投手陣の投球フォームを見ながら、一人一人の動きのチェックをしていった。

 エース左腕の桜本拓夢投手(3年)はかかと・開きのB2タイプ。「感覚としては重心が少し後ろに残るタイプ」と工藤トレーナーは説明する。それをふまえて、桜本投手の投球を見ながら、何度も腕を振って力を入れるタイミングをチェックしていった。桜本投手の場合は「セットに入ってからの足の上げ方、体の平行移動の部分を中心に教えてきました」と工藤トレーナーは話す。

 工藤トレーナーは4スタンス理論で数々のスポーツの選手を指導してきた。現在教えているのは、野球、ゴルフ、テニス、バレー。自身が社会人まで野球をしていたことから、野球での指導経験が最も豊富だ。

 昨秋のドラフト会議でソフトバンクから高卒ながら1位指名でプロ入りした村上泰斗(たいと)投手(18)は、神戸弘陵時代に工藤トレーナーが指導した選手。昨年の選抜でベスト8入りした阿南光(徳島)も工藤トレーナーが指導に入っていた。

 工藤トレーナーの指導で最も変化が見えてきたのは、桜本投手と切磋琢磨(せっさたくま)する中井将吾投手(3年)だ。中井投手はかかと・閉じのB1タイプ。クイックが遅く、盗塁を許すことが多かったが、工藤トレーナーのフォームチェックで「牽制(けんせい)も速くなったし、制球力が上がりました」と話す。

 中井投手によると、クイックモーションからの投球は0・3秒速くなったという。もともと右横手投げで変則フォームだったが、セットの仕方はかなり前傾姿勢をするようになり、中井投手は「みんなから良い意味で『気持ち悪くて打ちにくい』と言われるようになりました」。

 工藤トレーナーは「なかなか4スタンス理論を言語化するのは難しいですが、ひと言で言うとしたら、その選手にオーラが出てくるかどうか。マウンドに立ったらその姿を見て打者が圧倒されるような感じになれば、という感じです」という。

 工藤トレーナーが今まで見たスポーツ選手でそれを最も感じたのは、大相撲で全勝優勝を重ねていた頃の白鵬。「理論にあった立ち姿で、自分が一番力を発揮できる状態に見えました。野球にもそれは通じる考え方で、白鵬のようなオーラが出てくれれば」と話す。(坂上武司)