蹴球放浪家・後藤健生は今年2月、中国へとおもむいた。U20アジアカップを取材するためだ。かつては入国することさえ難儀し…

 蹴球放浪家・後藤健生は今年2月、中国へとおもむいた。U20アジアカップを取材するためだ。かつては入国することさえ難儀した隣国で感じたのは、中国の大きな変化であった。

■タッチするだけで「自由に乗り降り」

 さて、前にもこのコラムで書いたことがあると思いますが、中国のバスは日本人にとってはとても使いやすいものです。

 中国のバス停にはすべて名前がついていて(バス停に名前がない国もたくさんあります)、車内では「次の停留所はナニナニ」というアナウンスがあり、電光掲示板で文字でも表示されます。もちろん、中国語ですから聞き取れませんが、字を見れば漢字ですから日本人にはすぐに分かります(深センでは最初に中国の共通語である北京語=普通話、次に地元の言葉である広東語、さらに英語でアナウンスがありました)。

 漢字は覚えたり、書いたりは大変ですが、一度覚えてしまえば読み取りやすく、たとえ発音できなくても一目見るだけで識別できる便利な文字です。

 しかも、「深セン通」という日本のSuicaのようなICカードを持っていれば、タッチするだけで乗車できます。現金だとお釣りが出ないので、小銭を常に確かめておかなければなりませんが、このカードがあれば、地下鉄でもバスでも自由に乗ることができるのです。しかも、最近はICカードが全国共通になったので、深センで買ったカードは北京でも上海でも重慶でも、どこでも使える(はず)です。

 香港側のICカード「オクトパス(八達通)」と共通のカードもあります。さらにQRコードで乗車することもできます。

 ですから、試合後のバスが少ない問題があっただけで、バスもきわめて快適に使うことができました。

■フラストレーションからの「開放」

 しかし、僕は中国語は本格的に勉強したことがないので、漢字は読めてだいたいの意味は分かるのですが、発音がでません。まして会話は不可能なので、毎日生活しているとフラストレーションが溜まってきました。

 1泊2000円のホテルは庶民的な下町にあったので、ホテル内も周囲でも英語など絶対に通じません。

 もっとも、こういうときには、たまに僕の発音が通じるとすごく嬉しくなります。食べ物屋の壁に書いてある漢字(紅焼牛肚粉)を見ながら中国風に「ホンシャオニュウドフェン」と発音してみたら、一発で通じて幸せな気分になったこともあります。

 これが英語なんかだと、通じないとショックを受けますが、中国語なら通じなくてもともと、通じたらラッキーなので、気楽と言えば気楽なのですが……。

 でも、意味が分かるのに読むことができないというのは気が滅入ります。「フリガナでもふっておいてくれぇ~」と叫びたくなります。

 そこで、思い出したのが、昔、東北地方(昔の満州)を旅行したときに、朝鮮族自治区の延吉(中国語でイェンジー、朝鮮語でヨンギル)を訪れたときのことでした。

 中国ですから看板にはもちろん漢字が書いてあります。しかし、住民の多くは朝鮮族ですから、ハングルも書いてあるのです。漢字は発音ができませんが、意味はすぐに分かります。一方、ハングルでは意味が分からない言葉もたくさんありますが、表音文字ですから発音は分かるわけです。で、漢字も中国語の音で読まずに、朝鮮式の音読みで読めばいいわけです(日本では一つの漢字に音読みが2つも3つもありますが、朝鮮語では1つの漢字に音読みは1つだけしかありません)。

 こうして、朝鮮自治区にいる間は、「読めるのに発音できない」というフラストレーションから開放されて、きわめて楽しかったものでした。

■「漢字」と「ローマ字」併記の香港

 準々決勝の翌日、2月24日に帰国のため、中国から香港に入りました。

 香港でも基本法で「公用語は中国語と英語」と決まっているのですが、香港で「中国語」というのは広東語のことです。深センの地下鉄やバスでは、北京語→広東語→英語の順でアナウンスがありましたが、香港では広東語→北京語→英語の順になります。

 まあ、北京語であろうと広東語であろうと聞き取れませんし、発音もできないのですが、香港ではありとあらゆるものが漢字とともにローマ字でも書いてあるのです。

「香港(広東語ではホンコン、北京語ではシャンガン)」は「Hong Kong」、「旺角」は「Mong Kok」というようにです。英語が元の地名にも、当て字でやはり漢字表記があります。「Nathan Road」(Nathanは英国人の第13代香港総督の名前)という大通りは漢字で「彌敦路」といったようにです。

 日本人は道路標識の漢字を見ればすぐに地名を認識できます。そして、何かの都合でどうしても発音しなければならないときには英語で読めばいいのです。

 香港というのは、なんと便利なところなのでしょう! ただし、深セン側と違って物価が高いので、1泊2000円ではホテルは見つかりませんが……。

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