現在、中国で開催されているU20アジアカップ。Uー20日本代表も出場し、準々決勝進出を決めたが、その道のりは順調とはい…

 現在、中国で開催されているU20アジアカップ。Uー20日本代表も出場し、準々決勝進出を決めたが、その道のりは順調とはいえず、薄氷を踏む思いのグループ2位通過。なぜ、苦戦しているのか。ワールドカップ出場権のかかった準々決勝のイラン戦の「展望」も含めて、現地で取材中のサッカージャーナリスト後藤健生が緊急リポート!

■1990年以来の「可能性」も

 U-20日本代表は、韓国と引き分けてグループDを2位で通過し、U-20ワールドカップ出場権がかかる準々決勝で中東の強豪イランと対戦することが決まった。

 けっして順調とは言えないグループリーグでの戦いだった。シリア戦での引き分けによって日本は窮地に追い込まれた。最終戦で韓国に敗れた場合、シリアがタイに勝利すれば勝点4で並ばれ、得失点差での争いとなるのだ。3位でグループリーグ敗退の可能性もあるU20アジアカップ(旧アジアユース選手権)でグループリーグ敗退となると、1990年以来の出来事だ(実際にはシリアは最終戦でタイと引き分けに終わった)。

 シリア戦では序盤にFKのクイックスタートから展開された場面でマークが後追いになり、抜け出したモハマド・アル・ムスタファに先制を許してしまった。そして、その後も何度もカウンターから危ない場面を作られた。

 高岡怜颯のゴールで2対2の同点となった後にも、アル・ムスタファにフリーでシュートを撃たれ、市原吏音がブロックする危険な場面があった。

■選手個々の「能力」は高いが…

 日本チームの選手個々の能力は間違いなく高い。だが、組織ができていなかった。守備面ではどのように追い込んで、どこでボールを奪うのかといった意識の統一が見られず、1対1の勝負に持ち込まれてしまう場面が多かった。シリアの選手たちは2人だけ、3人だけでも日本陣内深くまでボールを持ち込む技術を持っていた。組織で守らないと難しい。

 攻撃面でも、日本はチームとしての攻撃パターンがなく、個人のアイディアに頼っていたため、なかなか崩し切れなかった。

 そんな心配をよそに、韓国戦では日本が完全にゲームを支配。28分には左サイドからの石井久継のクロスを韓国のGKキム・ミンスがファンブルしたところを神田奏真が押しこんで日本が先制する。

 やや幸運な得点ではあったが、優勢に試合を進め、何度もチャンスを作っている中で先制できたのだから順調なスタートだった。

 ゴールは左サイドでの攻撃から生まれた。

 左サイドでは石井がサイドハーフ、髙橋仁胡がサイドバックの関係だが、石井が中に入って髙橋がオーバーラップしたり、逆に髙橋がインサイドハーフのポジションに上がって石井がサイドに開いたりと、バリエーションが豊富で韓国の守備陣は対応しきれていなかった。

 得点場面でもやや内に入っていた髙橋から石井にパスが渡って、石井が数歩中に持ち込んでからクロスを上げた。つまり、このゴールは偶然のものではなく“必然のゴール”ということになる。

■若い世代には「よくあること」

 シリア戦では攻撃の組織ができていなかったが、韓国戦ではゴールに結びついた左サイドのコンビネーションだけでなく、中盤での大関友翔とトップ下の佐藤龍之介の関係性もとてもよく、互いに相手の位置を意識し合いながらうまく連係して攻撃の形を作っていた。守備的な役割を担う小倉幸成も含めてMF3人のバランスはとても良かった。

 このあたりは、チームとしてシリア戦の反省も含めて立て直した結果だろうし、また試合を重ねることによって自然とコンビネーションが出来つつあるのだろう。大会が始まって試合を重ねるごとにチームが出来上がっていくことは、とくに若い世代のチームにはよくあることだ。

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