2月14日に迫ったJリーグ開幕を前に、先週末2つのカップ戦が行われた。その2試合からサッカージャーナリストの後藤健生が、試合に臨んだ4チームの現状からJリーグの今後まで、ズバリ占う!■移籍したマテウス・サヴィオの「代役」 Jリーグ開幕を目…

 2月14日に迫ったJリーグ開幕を前に、先週末2つのカップ戦が行われた。その2試合からサッカージャーナリストの後藤健生が、試合に臨んだ4チームの現状からJリーグの今後まで、ズバリ占う!

■移籍したマテウス・サヴィオの「代役」

 Jリーグ開幕を目前に、それぞれのチームが、それぞれの事情を抱えながら準備に余念がない。

 昨年度の主力が残留して、今シーズンはさらに完成度を上げたいチーム。監督が交代してプレースタイルを変えようとしているチーム。選手の大幅な入れ替えがあったチーム。初めてのJ1リーグ昇格で盛り上がっているチーム……。

 週末のプレシーズンマッチでも、それぞれの課題とそれへの向き合い方が見えていて興味深かった。

 第29回ちばぎんカップでジェフ・ユナイテッド千葉に快勝した柏レイソルは、リカルド・ロドリゲス監督の就任によって大きくスタイルを変えようとしているチームだ。

 キャプテンで生え抜きの古賀太陽をはじめ、選手の多くが残留しているが、何と言っても大きな影響がありそうなのが、昨シーズンまで攻撃の組み立て役だったマテウス・サヴィオの移籍である。その穴をどうやって埋めるのか……。

 代役候補は、マテウス・サヴィオと入れ替わるように浦和レッズからやって来た小泉佳穂だった。浦和時代にはリカルド・ロドリゲス監督の下で戦った経験があるだけに、チームへの融合も順調そうだ。

 そして、右のシャドーに入った小泉は素晴らしいプレーで柏の攻撃を活性化させた。

 試合は、前半の3分に左タッチライン沿いにドリブルで抜けた小屋松知哉がそのままボックス内に持ち込んで、ファーサイドのゴール右隅に流し込んで、柏があっさりと先制して始まった。

 千葉の選手がまだゲームに入り切れていない隙を衝いての先制弾だった。

 昨シーズンまでは、インサイドハーフ的なプレーをしていた小屋松を、3-4-2-1の左ウィングバック(WB)として起用したところが、リカルド・ロドリゲス監督のアイディアだった。

 そして、小屋松は前半終了間際に2点目を決め、後半立ち上がり46分のゴールもアシスト。2ゴール1アシストの大ブレークとなった。

 もっとも、チーム全体としては、小屋松のいる左サイドではなく、右サイドからの攻撃が目立った。その右サイドで攻撃を組み立てたのが、小泉だったのである。

■変幻自在のプレーで攻撃に絡んだ「小泉」

 柏のシステムは古賀を中央に置いた3バック。右のストッパーに原田亘。サガン鳥栖から加わった新戦力の1人だ。左には、左足のキックを特徴とする杉岡大暉。杉岡もWBとしてプレーできる攻撃力のある選手のはずだが、この日の柏では攻撃参加はもっぱら右サイドの原田だった。

 右WBに入ったのが久保藤次郎。昨シーズンは名古屋グランパスから鳥栖にレンタルされていた久保。右サイドでさかんにドリブルで仕掛ける。

 そして、その久保の前のスペースに飛び出したり、インサイドから久保をサポートしたり、時には久保を中でプレーさせて自らタッチライン沿いでドリブルを仕掛けるなど変幻自在のプレーで攻撃に絡んだのが小泉だった。

 原田、久保、小泉の3人の関係性が深まれば、柏にとっては大きな戦力となることだろう。

 実際、先制ゴールこそ小屋松の個人能力によって生まれたものだが、柏の2点目、3点目は右サイドでの崩しから、逆サイドから詰めた小屋松が絡む形だった。

 41分の2点目も、久保のドリブルの仕掛けから生まれた。

 久保のドリブルでFKを得た柏は、原田が抜け目なくクイックスタートして裏に走った小泉がフリーでシュートを放ち、このシュートがニアサイドのポストに当たって跳ね返ったところを小屋松が決めたもの。

 さらに、後半開始早々にはマークのミスでフリーになった柏の細谷真大が右サイドを崩し、細谷のクロスがDFに当たって逆サイドに転がったところで小屋松がシュート性のクロスを入れ(本人はシュートのつもりだったのだろう)、これを左のシャドーでプレーしていた仲間隼斗が決めた。

■千葉の小林監督は「ありえないこと」怒り

 0対3というスコアだけでなく、千葉にとっては失点の仕方も自らのミスから招いた最悪の形だったし、試合開始早々、前半終了間際、そして後半のアタマと悪夢のような試合だった。クイックスタートで完全に裏を取られてしまった2失点目について、千葉の小林慶行監督は「ありえないこと」と怒りを隠さなかった。

 もっとも、千葉のほうは昨年とはかなりメンバーを変更してスタートしたので、完成度が多少低いのは仕方がなかったかもしれない。新監督を迎えたばかりの柏はチームの最終チェック的な意味合いを持ってベストメンバーで戦ったのに対して、小林監督3シーズン目の千葉は開幕戦(いわきFC)を見据えて、その準備のために戦っていたような印象だった。

 そういう、両チーム首脳陣の判断が正しかったのか、それとも間違っていたのか……。それは、シーズンが始まって、ある程度の試合数をこなしてからでないと判断できないことだろう。

 ただ、千葉にとっては、昨シーズン、J2リーグで23ゴールを決めて得点王となった小森飛絢シントトロイデンに移籍)の不在を埋めることは容易ではない。1人で決めきれるようなタイプの選手がいないとなれば、チーム全員で攻め、全員が得点に絡むようなスタイルを早く構築したいところである。

 いずれにしても、柏レイソルの新戦力、小泉佳穂が大きくクローズアップされた、ちばぎんカップだった。(2)に続く。

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