フィゲロアを手数で圧倒し、ふたたび王座に就いたフルトン。(C)Getty Images ボクシング界でも小さくない話題となった敗北は、名手の成長を促した。 去る23年7月、当時WBC&WBO世界スーパーバンタム級統一王者に君臨していたスティ…
フィゲロアを手数で圧倒し、ふたたび王座に就いたフルトン。(C)Getty Images
ボクシング界でも小さくない話題となった敗北は、名手の成長を促した。
去る23年7月、当時WBC&WBO世界スーパーバンタム級統一王者に君臨していたスティーブン・フルトン(米国)は、バンタム級からの転級初戦だった井上尚弥(大橋)と対峙。難攻不落の王座を維持していた30歳だったが、序盤から主導権を握られて8回TKO負け。本人はもちろん、陣営にとってもショッキングなキャリア初黒星を喫していた。
井上の強打に屈した試合後の会見で「征服できなかった」と漏らしたフルトン。ただ、敗北の味を知った名手は、時間をかけながら自身を修正。ついにはふたたび世界の頂に就いた。現地時間2月1日に米ネバダ州ラスベガスで行われたボクシングのWBC世界フェザー級タイトルマッチ12回戦で、王者ブランドン・フィゲロアに判定勝ち(116-112×2、117-111)。約2年半ぶりとなる世界タイトル奪取だった。
階級を改めてから2戦目だが、地力をしっかりと発揮した。序盤から近距離戦を仕掛けてきた名手フィゲロアをいなしたフルトンはパンチの着弾数で圧倒。アッパーとフックを確実に当ててポイントを稼ぎながら攻防戦を繰り広げ、見事に12ラウンドを戦い抜いた。
試合巧者ぶりを発揮したフルトンにとって、この試合は井上戦から得たものを集約させる機会でもあった。現地時間2月3日に米ボクシング専門YouTubeチャンネル『YSM Sports Media』のインタビューに応じた30歳は、「今の時代、試合に負けると何でもかんでも批判されるが、敗北から学べることは勝利以上に多いんだ」と強調。完敗を喫した“怪物”との一戦からの自身の変貌を語った。
「イノウエとの試合での敗北が俺を変えた。あの試合も普通に戦っていれば、もっと成功していたかもしれない。でも、負けた。それで俺は神を第一に考えることを学んだ。そして、誰が本当に自分を支えてくれるのかも見極められた。あの敗北は俺を作り直すきっかけになったんだ」
長く王座にいたことで有頂天になっていたのかもしれない。そんな己を律して、徹底的に改善を図った。だからこそ、「新たな自分を証明できた」というフルトンは自らがいるべき世界王者の地位に返り咲いた。
今後については「まだ考えていない」というフルトン。彼の王座を望むライバルは、引く手あまただが、果たしてどのような防衛劇を繰り広げていくのか。“再起”を遂げた名手の動静から目が離せない。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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