【合田直弘(海外競馬評論家)=コラム『世界の競馬』】◆現3歳世代は牝馬の層が厚い評価に 2024年のワールド・ベストレースホース・ランキングが、国際機関のIFHAから1月21日に発表になった。ここでは、同時に発表された、2024年度版のヨ…
【合田直弘(海外競馬評論家)=コラム『世界の競馬』】
◆現3歳世代は牝馬の層が厚い評価に
2024年のワールド・ベストレースホース・ランキングが、国際機関のIFHAから1月21日に発表になった。ここでは、同時に発表された、2024年度版のヨーロッパ2歳馬ランキングの検証を行いたい。
首位に立ったのは、レーティング120を獲得したゴドルフィンのシャドウオブライト(牡2、父ロペデヴェガ)だった(年齢表記は24年時点のもの)。カルティエ賞の最優秀2歳牡馬にも選出された同馬は昨年、G1ミドルパークS(芝6F)、G1デューハーストS(芝7F)と2つのG1を制したが、120と評価されたのは、エクスパンデッド(牡2、ウートンバセット、レーティング118)にクビ差競り勝ったG1デューハーストSだった。
ただし、120という評価は、2歳首位の数字としては、2020年のセントマークスバシリカと横並びで、過去10年で最も低いものだった。2024年のレーティングは、3歳以上の首位128というのも、今世紀の最低タイと低く抑えられており、2歳部門もその流れを汲むものとなった。
シャドウオブライトは、2歳だった2019年にG1モルニー賞(芝1200m)、G1ミドルパークS(芝6F)を制しながら、3歳となった翌年はG1未勝利に終わったアースライトの半弟で、いささか成長力にかけるきらいのある血統であることから、三冠初戦のG1二千ギニー(芝8F)へ向けた前売りでは、オッズ9〜11倍の2〜3番人気に甘んじている。
1ポンド下の119で第2位にランクインしたのが、A.オブライエン厩舎のレイクヴィクトリア(牝2、父フランケル)で、同馬が2歳牝馬の首位となった。牝馬のアローワンスを加味すれば、実質的な2歳トップはこの馬ということになる。
それもそのはず、昨年は5戦し、G1モイグレアスタッドS(芝7F)、G1チェヴァリーパークS(芝6F)、G1BCジュヴェナイルフィリーズターフ(芝8F)と、距離の異なる3つのG1を含む無敗の5連勝を飾り、カルティエ賞最優秀2歳牝馬に選出されている。119の評価を受けたのは、2着デイライト(牝2、父アースライト)に3馬身という決定的な差をつけたG1チェヴァリーパークSにおけるパフォーマンスだった。
2歳牝馬の119というのは、2016年に121の評価を受けたレディオレリア、2015年に120の評価を得たマインディングに次ぎ、過去10年では3番目という高評価である。レイクヴィクトリアは、今年のG1千ギニー(芝8F)へ向けた前売りで、オッズ3.25〜4.0倍の1番人気。
母クワイエットリフレクションは、G1コモンウェルスC(芝6F)やG1スプリントC(芝6F)の勝ち馬で、距離延長にいささか不安のある血統背景を持つ馬ではあるが、G1オークス(芝12F6y)へ向けた前売りでも、オッズ8〜11倍で1番人気に推されている。
レイクヴィクトリアを筆頭に、2024年はレーティング110以上のリストに12頭の牝馬がランクイン。これは近年では最も多い数字で、今年の欧州3歳世代は牝馬の層が厚いという評価となっている。
第3位が118で、前述したG1デューハーストS2着馬エクスパンデッドと、ザライオンインウィンター(牡2、父シーザスターズ)の2頭が横並びとなった。両馬とも、管理するのはA.オブライエンだ。
同師と夫人のアンマリー・オブライエンによる競馬組織ウイスパーヴュー・トレーディング社による生産馬で、G3タイロスS(芝7F)勝ち馬ヘンリーアダムスの半弟にあたるのがエクスパンデッドだ。
昨年10月5日にカラ競馬場で行われたメイドン(芝7F)を制しデビュー勝ちを果たすと、そこから連闘で臨んだのがG1デューハーストSで、このローテーションでシャドウオブライトのクビ差2着という内容は、高く評価されてしかるべきだろう。同馬は、G1二千ギニーへ向けた前売りでオッズ9〜13倍の2〜3番人気という支持を受けている。
一方のザライオンインウィンターは、8月21日にヨーク競馬場で行われたG3エイコムS(芝7F)を1.3/4馬身差で制した際のパフォーマンスが評価されて118を獲得した。
G1二千ギニーへ向けた前売りで、オッズ5〜7倍の1番人気に推されているのは、この馬である。さらに、母ホワットアホームがヘイドックのG3ピナクルS(芝11F175y)の3着馬で、叔母にG3マンスターオークス(芝12F)、G3ギヴサンクスS(芝12F)という2重賞を制した他、G1愛オークス(芝12F)2着など4つのG1で入着を果たしたヴィーナスデミロがいるという牝系を背景に持つ同馬。
父の特性も加味すれば、明らかに距離が伸びて良い血統背景を持っており、ダービーの前売りでもオッズ6〜7倍で断然の1番人気に推されている。
(文=合田直弘)