◇米国男子◇AT&Tペブルビーチプロアマ 事前(28日)◇ペブルビーチGL(6972yd)、スパイグラスヒルGC(7041yd、いずれもカリフォルニア州、パー72)世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーが今季開幕戦「ザ・セントリー」を…

昨年末にまさかのけが。スコッティ・シェフラーが悲劇を語った

◇米国男子◇AT&Tペブルビーチプロアマ 事前(28日)◇ペブルビーチGL(6972yd)、スパイグラスヒルGC(7041yd、いずれもカリフォルニア州、パー72)

世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーが今季開幕戦「ザ・セントリー」を欠場すると発表されたのは昨年末のことだ。悲劇が起きたのはクリスマス。ディナーの準備中に割れたガラスで右手のひらを負傷した。

事件は聖夜のささやかな思い付きに端を発する。「“ラビオリ”をイチから作りたかったんだ」。小麦粉で作った2枚のパスタ生地の間に、ひき肉や野菜を挟んで四角形に切り分けたイタリア料理。「生地を丸めたり、切ったりしなくてはいけなかったんだけど、賃貸の家だったから道具がなくて。唯一(使えそうなので)あったのがワイングラスだけだったんだ」。ムムム、嫌な予感…。

世界ランク1位がいよいよ始動する

世界1のショットを放つたくましい腕力が悲劇を呼んだ。「ワイングラスの上に手を置いたら、割ってしまったんだ」。割れた破片で手のひらの真ん中上あたりを切り、流血。家に来ていた外科医の友人が止血をしたが「動いたら、かなり痛かった」。翌日に試合会場への移動を予定していた中での出来事だった。「ラビオリ? 美味しかったよ。良かったけど良くなかった」と笑って振り返った。

けがが治るまでは「最初は運動することもできなくて、やれることが少なかった。家でゆっくり(妻と子どもの)3人で過ごせたのは良かったけど、テレビでゴルフの番組を見るとプレーできないのがやっぱり悔しかった」とフラストレーションをためる日々だった。

「人生いろいろアクシデントも起こる。同じようなことをして破片が手を貫通したという人の話も聞いて、もっと悪い事態に見舞われていたかもしれない。私のようにワインを飲まない人でも、ワイングラスは本当に気をつけないとね」。コース外でも学びはある。

昨季は「マスターズ」を含む7勝を挙げ、「パリ五輪」では金メダルを獲得。世界ランクでは2009年のタイガー・ウッズ以来、一度も王座を譲らなかった。その強さは、ロリー・マキロイ(北アイルランド)が「全盛期のタイガーを思い出す」と評するほどだ。

復帰戦でも、出場するからには頂点を目指す。休養中には昨年の試合を見直した。「当時の自分の気持ちや頭の使い方を思い出して。首位になった時、あるいは首位に近づいた時に自分は何を考えていたのかを知ることができた」。“眠れるシェフラー”がついに目を覚ます。(カリフォルニア州ペブルビーチ/石井操)