1月7日の午前9時30分から始まったミーティングで、長谷部茂利監督は2つの数字を掲げた。その数字は、川崎フロンターレを新たに率いる指揮官が最初に伝えたいことの“元”となるものだった。 そのうちの一つは、「66」。そしてもう一つは「57」。…
1月7日の午前9時30分から始まったミーティングで、長谷部茂利監督は2つの数字を掲げた。その数字は、川崎フロンターレを新たに率いる指揮官が最初に伝えたいことの“元”となるものだった。
そのうちの一つは、「66」。そしてもう一つは「57」。これが何かお分かりだろうか。2024年シーズンの川崎フロンターレのリーグ戦の得点数と失点数である。得点数はリーグ2位で、1位のサンフレッチェ広島の「72」に次ぐもの。J1王者となったヴィッセル神戸よりも「5」多いものとなっている。
しかし、失点数「57」に目を向ければ、これは全20クラブで7番目に多い数字である。失点数の上位3チームは、この年の総合順位の下から3チームで、今季はJ2で戦うことが決まっている。十分な攻撃力とは裏腹の守備の脆さが、川崎の総合順位8位という結果を招いていた。
それだけに、長谷部監督が呼びかけた言葉は明白だった。
「失点をここから20減らそう」
集まる選手、スタッフにそう声を発したという。そして、得点については、「J1の中では多い方だけれども、去年と一緒じゃなくてそれより取ろう」とも。
J1・2位の得点数をさらに伸ばし、失点を約30%減らす――。長谷部監督自身が「自分はこういうやり方をしますよっていうアナウンスに近い大枠の話をしました」と振り返るように、具体的なことはこれからにはなるだろうが、具体的な数字を挙げて大きなイメージを共有させた。
■沖縄キャンプでは日数を計算しながら逆算でのチーム作り
そして、そのミーティングで出たのが「攻撃サッカー」という言葉だった。長谷部監督といえば、アビスパ福岡で築いた強固な守備のイメージが強いだけに“守備的なサッカー”とのイメージも持たれるが、古巣に戻って掲げたのはそれとは別のもの。
ただし、「奪われた後、すぐに全員で守備をして失点を減らそうっていうことは言われた」と話す選手もいれば、「攻撃と守備は繋がってるものだと僕も思ってるんで、そのリスク管理の部分だったりをミーティングでやりました」と振り返る選手もいるように、攻撃と守備の両面を一体化させながら構築するようだ。
長谷部監督は練習後、「クラブのフィロソフィーを大事にしながら、それをまずは体現していく、プレーしていくことが大事ですし、勝点を取りながら、少し修正しなくてはならないことがあると思うんですね。優勝できないっていうことは、何かあるということなのでその辺を修正していきたい」と話しており、それが守備にかかわることであることは明白。
また、初戦までの時間の中でどのようにチーム作りを進めていくか聞いてみると、「自分の中では初戦に自分たちのプレーができるように。それは大事にしてるところも出したいし、先ほど言った修正したいところもありますし、試合で勝つために、勝点を取るために、段階的に作っていくつもりです。それが35日あります。そこからの逆算で作っていくつもりです」と、残り日数を口にしたうえで構想を明かす。
実際。長谷部監督はその沖縄キャンプで明確なプランを持っているようだ。というのも、“選手を集中させる期間”をすでに思い描いているようで、その間の過ごし方をデザインしているという。
(取材・文/中地拓也)
(中編へ続く)