ワールドグランドチャンピオンズカップ(グラチャンバレー)の男子大会で、”ガイチジャパン”は5戦全敗の勝ち点なし。4年前の前回大会と同じ結果となったが、その成績とは裏腹に今大会に感じたのは、決して”絶望”ばかりではなかった。



最終戦のブラジルに敗れ、天を仰ぐ柳田

 大会前から注目されていたのは、柳田将洋と石川祐希の”Wエース”だった。しかし、腰に痛みを抱える石川は、初戦のアメリカ戦で本来のプレーができず、第2戦のフランス戦では、サーブで狙われた際にヒザを負傷し、残る3試合の欠場を余儀なくされる。

 チームの状況が苦しくなるなか、柳田は続くイタリア戦でチーム最多得点をマークした。その他の試合でも得点数はチーム内でほぼ2番手につけるなど、ポイントゲッターとして貢献。主将の深津英臣が控えの時にはコートキャプテンも務め、積極的に声をかけて、おとなしい若手選手たちを鼓舞し続けた。

 大会後の会見で、中垣内祐一監督は柳田の評価について、「チームの評価と同じですね。それほど高いものでも、低いものでもない。会場が大阪に移ってから(第2戦までは名古屋)は普通に彼ができることはしましたが、前半戦はそれほど。(活躍した)ワールドリーグのようにまではいかなかったですね」と厳しい言葉を口にしている。

 ただしこれは、もともとの期待値が高いことや、柳田だけの評価を求められるなど、メディアの”特別扱い”を意識した対応のようにも見えた。実際に、第3戦のイタリア戦後には、石川不在の影響を聞かれた際に、「石川がいないことで、僕が感じるのは柳田が非常に責任感を持ってプレーしてくれていること。サーブもサーブレシーブも頑張っていた」と、その奮闘を称えていた。

 名古屋での2戦で、柳田より苦しんでいたのは、オポジット(セッター対角の攻撃専門のポジション)の大竹壱青だった。初戦のアメリカ戦で11打数4得点4失点。続くフランス戦で3打数2失点と精彩を欠いてしまう。ここで大竹は、現役時代に中垣内祐一監督とバルセロナ五輪に出場した経験のある、父の秀之氏に助けを求めた。電話を通して思い切り泣き言をぶちまける息子に、秀之氏は「思い切ってやるだけだ!」とゲキを飛ばした。

 そのおかげか、第3戦のイタリア戦は途中出場で25打数13得点と復調の兆しを見せ、第4戦のイラン戦は33打数15得点で、サービスエースと合わせて16得点。チームのベストスコアラーとなった。大竹にその経緯を聞くと、「名古屋大会の自分があまりにも情けなくて、父の助けを借りました。そこで吹っ切れて、アドバイスに従って、足の長いスパイクを打つようにしたら、シャットアウトされることが少なくなったんです。手応えがつかめました」と、少し照れくさそうに答えた。

 この大竹を含め、今大会の全日本は身長2mを超える選手が5人揃っていることが話題になったが、中垣内監督が”チームの大型化”を進めようとする意図が見えた。その象徴が、東海大学4年で201cmの小野寺太志を、イラン戦の第4セットと最終戦のブラジル戦でほぼフル起用したことだ。

 小野寺は、グラチャンバレーの約1カ月前に、ミドルブロッカーからレセプションアタッカー(サーブレシーブを担うアタッカー)へのコンバートを言い渡された。現代バレーにおいては、ミドルブロッカーは後衛でリベロと交代してサーブレシーブは行なわないため、レセプションの経験はほとんどない。かなりの”無茶ぶり”に、小野寺は泣きながらサーブレシーブの練習に励んだ。

 コンバート間もない選手を、世界ランキング1位のブラジルとの試合でいきなり先発させたことについては賛否両論あるだろう。しかし、東京五輪での起用を見据え、少しでも早く世界トップのチームとの対戦を経験させたいという、中垣内監督の強い想いを感じた。

 この試合後、ブラジルの主将であるブルーノ・レゼンデは、全日本について「前回(4年前の同大会)は、小さくて守備がいいチームという印象だったのが、今回は若くて高身長にしてきたなと感じた。このレベルの大会で勝っていくためには、その考え方は正しいと思う。今後、どんどんいいチームになるだろう」と述べた。

 リオ五輪でメダルを獲得した3国(ブラジル、イタリア、アメリカ)と、同大会で5位に食い込んだイラン、ワールドリーグを優勝したフランスとの差は大きかった。それでも、「東京五輪では、あるいは……」と期待を抱かせるチームに変わりつつある。

 中垣内監督はグラチャンバレーまでのチームの評価を「(世界選手権の出場権という)当初の目標はクリアしていますので、グラチャンで勝利を挙げることができれば、かなり高い点をつけられたんですが……。そうではなかったので、及第点に届かないくらいですかね」と厳しい表情で振り返った。

 たしかに、小さくて守備のいい選手で固めた女子とは対照的に、男子はグラチャンバレーでは結果を残せなかった。それでも”大型化”という方向性を定めて東京五輪に向けて新たな一歩を踏み出したことは間違いない。まずは来年の世界選手権で、目標に掲げるベスト8進出を狙う。