竹田麗央はプロ3年目の2024年、4月「KKT杯バンテリンレディス」での国内女子ツアー初優勝を手始めにシーズン8勝をマークして初の年間女王の座に就いた。獲得賞金額はツアー史上最高の年間2億6573万16円。11月「TOTOジャパンクラシッ…
竹田麗央はプロ3年目の2024年、4月「KKT杯バンテリンレディス」での国内女子ツアー初優勝を手始めにシーズン8勝をマークして初の年間女王の座に就いた。獲得賞金額はツアー史上最高の年間2億6573万16円。11月「TOTOジャパンクラシック」を制して米女子ツアーの出場権も手にした。圧巻のシーズンを振り返り、想定よりも早かったという来季の米本格参戦について語った。
■同世代に先を越された2年間
2021年11月に日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)のプロテストに合格した竹田は、その後2シーズンにわたって同年代の活躍を見届けてきた。22年に川崎春花と尾関彩美悠、23年に入ると神谷そらと櫻井心那が優勝。「同い年の選手が優勝を結構していて。その勢いに続きたかったけど、できなかった。今年は頑張ろう、という感じでスタートしました」。3年目の準備、意気込みは並々ならぬものがあった。
開幕前のオフはグリーン周りの技術を強化。ツアー屈指の飛距離の持ち主は、「ショートゲームの練習量が少ない」とチッピングの時間が最も長くなるように練習の比率を見直した。「これまでは(長い距離の)ショットをメインに練習をしていたけど、それが逆になるぐらいに。ショートゲームを練習してから、余った時間で長いクラブの練習をするようにしました」
パーオン失敗ホールをパー以下で上がるリカバリー率は、ランキングの規定ラウンド数に満たなかった初年度(20試合)は全体88位相当の55.5957%、プロ2年目の昨季(37試合)は55位の61.2319%、今季(32試合)は7位の69.1517%だった。精度アップは紛れもない練習の成果。「早く優勝したい」と初優勝の準備は整っていた。
■初優勝で変わった心境
他を圧倒したシーズンを振り返る上で、「すごく意味のある大会」だったと思い返すのは開幕第5戦の「ヤマハレディースオープン葛城」。初日の2位発進から2日目に単独首位に浮上したが、最終日に「73」とスコアを伸ばせず小祝さくらに優勝を譲った。「自分が最後に崩れて負けたからすごく悔しかった。そこで、最終日に伸ばさないと優勝はないってすごく感じた」
序盤のつまずきを糧に、2試合後の「KKT杯バンテリンレディス」で優勝。小学1年生の時から観戦していた地元、熊本での大会で念願の初タイトル獲得となった。「初優勝をしてからすごく試合中も落ち着いてプレーすることができるようになって。優勝争いにも自信を持って臨めるように」
壁を乗り越えた翌週の「フジサンケイレディス」で、史上4人目の初Vから2週連続優勝を達成。以降も5月「ブリヂストンレディス」で3勝目、8月「北海道meijiカップ」で4勝目と勝利を重ね続け、不動裕理(2003年)と稲見萌寧(2020-21年)に続く3人目のシーズン8勝を達成した。
■シーズン途中で考え始めた米挑戦
輝かしい国内ツアーでの活躍の一方で、竹田はシーズンの中盤に2025年の米ツアー挑戦を決めた。出場権を争う最終予選会(Qシリーズ)にエントリー。「自分のゴルフに自信が持てるようになった。アメリカでもやってみたい」と5日間90ホールのサバイバルに名乗りを上げた。
今季開幕前は想定していなかったチャレンジ。9月の「日本女子オープン」「ソニー日本女子プロゴルフ選手権」の優勝が心変わりのきっかけになった。日本タイトルを獲得したことで、25年から10年間のうちであれば任意の年に行使可能な5年シードを得た。
「小さいころからアメリカでやりたいとは思っていた。日本人の選手が(米ツアーで)ずっと活躍していて。そういうのを見てきて、自分もいつかは行きたいなっていうのが強くなった」
もともと長期的な目標は立てないタイプで、「計画通りにいく自信もないので、目の前のことにベストを尽くそう」というのが信念。それでも、「10勝ぐらいしてから行きたいって思っていたので、もうちょっと先かなって。22、23歳あたりとか」と漠然と思い描いていた。想定よりも早い21歳での海外挑戦になったが、心構えはできている。
11月の日米ツアー共催「TOTOジャパンクラシック」で優勝し、最終予選会を回避して来季の米ツアー本格参戦を決めた。同大会での戦いには新しい発見もあった。「TOTOジャパンクラシックの前ぐらいからショットの調子がそんなに良くなくて。それでも、優勝できた。すごく自信になったというか、この状態でも優勝できるんだっていうのに気付きました。(翌週の)伊藤園レディスで予選落ちした時は、これじゃだめだ、と思ってやっていましたけど(笑)」。不調時でも優勝できることがある。その経験は今後のキャリアに生きる。
■日本での3年間を糧に新天地へ
主戦場を米ツアーに移して臨む新シーズンは1月30日にスタートする開幕戦「ヒルトン・グランドバケーションズ トーナメント・オブ・チャンピオンズ」(フロリダ州・レイクノナG&CC)で始動する。「すごく楽しみな気持ちが大きい。最後まで自分のベストを尽くして、色んな経験ができたらいいな」と胸は高鳴る。
新しい拠点の構想を含め、急ピッチで渡米準備を進めている最中。国内で帯同してくれた母・哲子さんの同行は決まっており、キャディは「基本は米ツアーのキャディさんにしようと思っていて」と経験豊富な現地の人材を探す考えだ。「一昨年、昨年と色んなキャディさんに担いでもらって、情報が入りすぎると優柔不断で決め切れない時があった。英語はよく分からないから、それが良いのかなって」
すでに米ツアーを主戦場にする先輩選手だけでなく、同じタイミングで米ツアーに挑む日本人選手の存在が心強い。「『炊飯器は持って行った方がいい』ってたくさん聞きました」。日本とは異なる芝への対策として、バウンスが違うウェッジを複数持っていくつもりでいる。
「海外には、自分より飛ぶ選手がたくさんいると思うので、そういう選手の中でもしっかり自分の距離に自信を持っていけたら。今年はバンカーからのリカバリー率が低かったのでそのあたりとショートゲームをもっと練習してから行きたい」
「アメリカの色んなところでプレーできるのが楽しみ。あとは野球観戦が好きなのでメジャーリーグが見られたら。大谷翔平選手を見たことがないので見たい」。まずは新天地での生活に馴染むことが最優先。挑戦者としての新シーズンの幕開けはすぐにやってくる。(取材・構成/石井操)