2024年9月からドイツ1部リーグ「ケルン99ers」(ケルン・ナインティナイナーズ)でプレーしている車いすバスケットボールの赤石竜我。「ドイツでの奮闘ぶりが知りたい!」と編集部がリクエストしたところ、全3回にわたり、現地からレポートしてく…
2024年9月からドイツ1部リーグ「ケルン99ers」(ケルン・ナインティナイナーズ)でプレーしている車いすバスケットボールの赤石竜我。「ドイツでの奮闘ぶりが知りたい!」と編集部がリクエストしたところ、全3回にわたり、現地からレポートしてくれることに。第1回の今回は、ドイツ挑戦を決めた理由や初めての自炊生活についてお届けする。
2000年9月11日生まれ、埼玉県出身。東京パラリンピックで銀メダルを獲得した男子日本代表の最年少メンバー。2024年4月1日、10年間所属した埼玉ライオンズから川崎WSCへ移籍。同年9月よりドイツのケルン99ersでプレー。趣味はマンガとゲーム。ドイツでも日本の漫画やゲームの話題でチームメートと盛り上がることがあるそう。コロプラ所属。
クリスマスシーズンのドイツはめちゃくちゃ寒い!初めての方は、はじめまして。以前から知ってくださっている方は、お久しぶりです! 車いすバスケットボール選手の赤石竜我と申します。僕はいま、ドイツのケルン・ボン空港から車で30分ほどのところにあるミュルハイムという街で一人暮らしをしながら、ケルン99ersというチームでプレーしています。
いまは、ちょうどクリスマスシーズン。ドイツといえば、クリスマスマーケット発祥の地として有名ですよね。大小さまざまなマーケットが各地で開かれ、多くの人でにぎわいます。僕の街の駅前でも小規模なマーケットが開かれていて、日が暮れるとイルミネーションがキラキラと輝いてきれいですよ。とにかく人が多いので、僕はあまり近づきませんが。
それでも先日、車いすのリムが冷たくて耐えられないと思っていたところ、手袋がパッと目に入ったので、購入しました。ドイツの冬ってめちゃくちゃ寒いんですよ。僕の実家がある埼玉では、雪が降るのは年に1、2度なのですが、こちらでは11月から降り始めました。雪が降らない日でも雨や曇りが多く、本当に11月?って思っちゃうぐらい、寒かった。防寒着も日本から持参したものでは足りず、すでに2着も現地調達したほどです。
誕生日に“第2の人生”をスタート僕がドイツに到着したのは、9月11日のことです。その日は僕の24歳の誕生日だったんですよ。年男になる年の誕生日に、新しい地でいわば“第2の人生”のスタートを切ったわけで、ちょっと運命みたいなものを感じました。もちろん、狙ったわけじゃないんですけどね。
空港にはチームのスタッフが「ようこそ、ドイツへ」という感じで出迎えてくれて、家まで車で送り届けてくれました。そしてその日の夜、早速チーム練習に合流しました。
チームにはドイツをはじめ、イギリス、トルコ、イスラエル、オランダといろいろな国の選手・スタッフが集まっていて、ちょうど顔合わせの日でもありました。僕以外にも「はじめまして」の選手が何人かいたので、あいさつや自己紹介の時間があるかと思っていたのですが、とくにそのような時間はなく、いきなり練習がスタートしたのには、ちょっと驚きました。
そもそも僕は車いすバスケットボールを始めた当初から、将来は海外で活躍できる選手になりたいという憧れがありました。とはいえ、慣れ親しんだ環境に甘えていたこともあり、なかなか行動に移せない自分がいました。
それが一気に変わったきっかけが、パリ2024パラリンピックの出場権を逃したことでした。日本と世界との差はものすごく大きいと感じざるを得ませんでしたし、東京からパリ予選までの2年間の過ごし方がよくなかった結果だとも思いました。なのに、また同じ過ごし方をしたら、2028年のロサンゼルスパラリンピック出場をかけて戦う予選大会でも同じ轍を踏むことになってしまいそうです。ならば、いつまでもビビっているわけにはいきません。自分自身が進化するために、海外に行こう。そう決心しました。もちろん、海外に行けば上手くなるわけではありません。でも、まずは環境や行動を変えることが大事だと思ったのです。
世界的名将のもとへ海外挑戦を決めた後、ありがたいことに、ヨーロッパのビッグクラブを含む海外のいろいろなチームからオファーをいただきました。その中からケルン99ersに決めたのは、ハジ・バーニアコーチの存在です。当時、僕は知らなかったのですが、ハジコーチは世界的に有名な名将で、日本代表の先輩でもある香西宏昭選手も「ハジは本当にすごいコーチだよ」と言っていました。そんな素晴らしいコーチのもとでバスケットボールができるなら、と思ったのです。
渡独を決めてからは、ドイツでプレー経験がある先輩方からたくさんアドバイスをいただきました。香西選手からは、「シンプルに楽しんできて」と背中を押してもらいました。また、元日本代表ヘッドコーチの及川晋平さんには「おもてなしバスケをするなよ」と言われました。一言で言うと、プレー中はまわりに気を使い過ぎなくていい、ということですね。
英語を勉強しておくといいよ、とも言われたので、英語の勉強もちょっとがんばりました。英語は学生時代、一番といっていいぐらい苦手な科目だったのですが、車の中でラジオ英会話を流したり、嫌いだった文法も中学校レベルの教材をAmazonで買って、学校の宿題のようにコツコツと解いたりもしました。英語の勉強はいまも継続中です。まだすらすら話せるわけではありませんが、チームメートやコーチとコミュニケーションをとるために、苦戦しながらもがんばっています。
自炊に挑戦中もうひとつ、渡独前に練習したのが、料理です。体が資本ですし、外食は高くつくため、自炊することにしたのですが、料理経験はゼロでした。そのため、簡単に作れる料理を実家で母に教えてもらいました。こちらに来てからは、YouTubeで初心者向けの料理を検索し、挑戦したりもしています。
夕食は、2022年までドイツにいた香西選手にゆずってもらった炊飯器で炊いたごはんで、親子丼や回鍋肉、豚丼などにすることが多いです。朝食は夕食の残りを食べることもありますし、ベーコンエッグを作ってパンやごはんに添えるなど、そのとき冷蔵庫にある食材でさっと作って済ませたりしています。
自炊派にとって少々難点なのが、ほしい食材が手に入りにくいことでしょうか。例えば、こちらでは豚肉といえばかたまり肉で、近所のスーパーには僕がほしい薄切り肉がありません。仕方がないので、自宅から少し離れたところにある「Go Asia」というアジアンスーパーに買いに行くのですが、輸入品店ですし、ドイツの物価高、かつ円安ということもあり、とにかく高い。僕の肌感覚だと、日本の1.5倍から2倍はすると思います。
このように、できるだけがんばっているのですが、どうしても面倒くさくて料理をしたくないときもあります。そんなときは、ごくたまにですが、近所のバーガーキングでジャンクフードを食べちゃうこともあります。まだまだ始まったばかりの海外一人暮らしで自炊を無理なく続けるためには、神経質になりすぎないことも大切ですからね。
text by TEAM A
photo provided by Akaishi himself