【連載】有村智恵のCHIE TALK 過去の連載記事はコチラ 有村智恵と原江里菜の対談・前編。盟友・原江里菜プロとの対談で今年の女子ゴルフツアーを振り返るなか、話題の中心は自然と2024年シーズン限りでのツアー撤退を発表した上田桃子プロにつ…
【連載】有村智恵のCHIE TALK
過去の連載記事はコチラ
有村智恵と原江里菜の対談・前編。盟友・原江里菜プロとの対談で今年の女子ゴルフツアーを振り返るなか、話題の中心は自然と2024年シーズン限りでのツアー撤退を発表した上田桃子プロについて。上田が86年、有村と原が87年生まれであり、3人は同世代のトッププロ同士として、長らく女子ゴルフツアー牽引してきた。有村智恵と原江里菜が総括する、2024年のJLPGAツアー。
※webスポルティーバのYouTubeチャンネルでは対談のフルバージョンを公開中。
【竹田麗央という新風と、黄金世代の復活】
――2024シーズンのJLPGAツアーはいかがでした?
原 竹田麗央プロの年間8勝って、不動(裕理)さん以来(※)のことで、ここ最近、なかったじゃないですか。女子ツアー全体のレベルが上がり、選手間の差がない状況がここ何年間も続いていたなかで、竹田麗央ちゃんの一強という状況が久々に起きた現象だったなという意味では、スターが出てきたというか。それはよかったですよね。
※国内ツアー通算50勝をあげている不動は、2003年にツアー記録となる年間10勝をマーク。
逆に、見ている側としては、いつになく早めに賞金女王も決まってしまって、ハラハラドキドキ感がちょっと足りないような感じもありましたけれど。
あとは、日本選手のレベルの高さが目立った1年だったかな。海外の試合でも、いろいろな選手が活躍したじゃないですか。(日本のツアーから)スポットで参戦しているのに、トップ10に日本人が何人入るんだっていう。日本女子ゴルフのレベルの高さを世界にアピールできた1年だったかなと思います。
有村 竹田さんという新しい風が吹いたのと同時に、今年は黄金世代復活の年でもありましたよね。復活だけではなく、臼井麗香ちゃんや天本ハルカちゃんが初優勝。そして、新垣比菜ちゃん、大里桃子ちゃん、河本結ちゃんなど、黄金世代の中でもちょっと先に勝っていた選手たちが、ここ数年間は苦労していたなかで、このタイミングでまたこうやって這い上がって復活優勝した。
彼女たちがまたさらなる強さを見せてくれて、ゴルフ界もまだまだこれから盛り上がりますよね。これからも、黄金世代から新しい選手が出てくるかもしれないし、新しい世代からも出てくるかもしれない。そこの楽しみはあります。
だけど、やっぱり上田桃子さんがいなくなっちゃうのは寂しいなと思います。だから、新しい風も吹いているけれど、30代の選手たちにも、もっと頑張ってもらいたいなという思いもあるので。(上田プロのツアー撤退は)やっぱり寂しさはあるよね?
原 そうだね。
【ツアー会場には必ず桃子先輩がいた】
――上田選手のプロツアー撤退は、今年の女子ゴルフ界ではいちばんのニュースかもしれませんね。
有村 宮里藍さん以来じゃないですか? しかも、藍先輩は(引退時は)アメリカにいたから、もともとみんな会えていなかったので、(引退を機に)会えなくなるっていう寂しさはそんなに大きくなかったと思うんです。
原 みんな、ツアー会場に行ったら、必ず桃子先輩がいるっていう感覚がありますからね。
有村 引退後も桃子先輩には気軽に会えますけど、逆に、桃子先輩のお母さんに会えなくなるのが寂しいなと思っちゃった。今までよりも(上田プロの)周りの人たち、スタッフさんたちに会う機会が少なくなるじゃないですか。それはすごく寂しいなって思う。
原 そこまで想像力が働いたか(笑)。
有村 暇だったから(笑)。ずっと客観的にツアーを見ていたからね。
――上田プロのツアー撤退については事前に聞いていました?
有村 直接、聞いたんだよね?
原 私は聞きました。しかも、ハーフターンの休みの時間にさらっと言われて。
有村 試合中に、ってことだよね?
原 NEC(NEC軽井沢72ゴルフトーナメント)の試合で言われて。私は推薦でしかツアーに出ていないので、たまにしか会えないじゃないですか。(予選1日目が上田プロと)同じ組だったので、同じ時間帯で休憩していたら、そんなようなこと言っていたので、「今、言うんだ!?」って思って(笑)。
初日がサスペンデットになったので、次の日(予選2日目)も同じ組だったんですよ。その間にこっちは完全にセンチメンタルな気持ちになってしまって。「これが最後だ!」みたいな。でも、目の前でプレーを見られたのはすごくよかったなと思います。
ただ、あまりにあっさりと言われたので、その時は悲しさまでは感じませんでした。そうは言っているけど、本当はまだやるのでは? とか、ちょっと思ったりもして。まだ8月だったこともあったので。
有村 私はその話を聞いていなかったから、江里菜から聞いたんですよ。
原 (有村プロは)会えなかったからね。
有村 ずっと会えていなかったから。桃子先輩、今年はいまだにお会いできていないんですよ。(上田プロは)ずっとツアーに出ていましたし。
寂しいという気持ちもあるけど、私は、桃子先輩とは仲がいいからこそ、彼女がどんな思いでその決断に至ったんだろう、ということを考えてしまいました。私は、QT(※来季のツアー出場資格を争う予選会)を受ける立場になったから、シードを取れなかったから、スパッと(ツアー休養の)決断ができた部分があったのですが、桃子先輩はまだ試合に出られる状況、来季のシードを持った状況での決断なので、葛藤もあっただろうなと。
【100%を試合に注ぎたい人なんだと】
――実際に発表されてどう思いましたか?
有村 あの人がその決断を発表するということは、心に決めていたんだろうなと思います。ああいう風に(周りの反応も)派手にもなっちゃうし。
原 私も発表しないと思っていました。
有村 発表しないで、出たいときに出るスタイルにするのかなと思っていたんです。だから、あんな風に発表したってことは、ああ、本当に決めたんだって。これからの人生のほうが長いし、楽しいことがいっぱいあると思うので、試合に戻りたくなったら戻ればいいですしね。
でも、すごく納得できたのは、あの人は0か100かの人なので、100%を試合に注げない状況じゃないと試合には出ない、という選択をするんだろうなと。
私たちはいろいろなことやっていて、0でも100でもないじゃない?(笑)。 『LADY GO』をやったり、ちょっと違う仕事をしながらも試合に出ていましたけど、桃子先輩はやっぱり100%を試合に注ぎたい人なんだと。だから、彼女らしいなと思いました。
(つづく・対談の後編は2025年1月に更新予定)
【Profile】
有村智恵(ありむら・ちえ)
1987年11月22日生まれ。プロゴルファー。熊本県出身。
10歳からゴルフを始め、九州学院中2年時に日本ジュニア12~14歳の部優勝。3年時に全国中学校選手権を制した。宮城・東北高で東北女子アマ選手権や東北ジュニア選手権、全国高校選手権団体戦などで優勝。2006年のプロテストでトップ合格。2007年は賞金ランク13位で初シードを獲得した。2008年6月のプロミスレディスでツアー初優勝。2013年からは米女子ツアーに主戦場を移した。2016年4月の熊本地震を機に日本ツアーへ復帰。2018年7月のサマンサタバサレディースで6年ぶりの優勝を果たすなど、JLPGAツアー通算14勝(公式戦1勝)をあげる。
2022年に30歳以上の女子プロのためのツアー外競技「LADY GO CUP」も発足させた。
2022年11月に、妊活に専念するためツアー出場の一時休養を表明。2024年4月に双子の男の子を出産した。
原江里菜(はら・えりな)
1987年11月7日生まれ。プロゴルファー。愛知県出身。
東北福祉大学年在学中の2006年にファイナルQTで43位となり、TPD(トーナメント・プレーヤーズ・ディビジョン)非会員登録制度を活用して2007年よりプロ転向。初年度からシードを獲得し、2008年8月の「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」でツアー初優勝。2015年の「大東建託・いい部屋ネットレディス」で2勝目を挙げる。
東北高校出身で、有村智恵とは同級生。