ア・リーグのホームラン王争いがアーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)を筆頭に盛り上がっているのに対し、ナ・…

 ア・リーグのホームラン王争いがアーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)を筆頭に盛り上がっているのに対し、ナ・リーグの打撃部門で目が離せないのが首位打者タイトルの行方です。今シーズンはふたりの30代プレーヤーが初タイトルを獲るべく僅差で争っています。

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リーグ1位タイの17勝をマークしているザック・デイビーズ

 現地9月18日現在、打率.332でリーグトップを走っているのはコロラド・ロッキーズに所属する31歳のチャーリー・ブラックモン。2008年のドラフト2巡目・全体72位でプロ入りした左打ちの外野手です。2011年にメジャーデビューを果たし、2014年は外野のレギュラーに定着してオールスター初選出。2015年にはリーグ3位の43盗塁をマークするなど、「走って打てる中距離ヒッター」として名が知られるようになりました。

 ブラックモンのすごいところは、打率だけでなくパワーでも著しい成長を遂げている点です。2016年に自己最多の29本塁打をマークして初のシルバースラッガー賞に輝くと、今年はオールスターゲーム前日のホームラン競争にも出場しました。現在35本塁打をマークしており、ナ・リーグ3位タイにつけています。

 また、1番バッターながら今季すでに93打点を記録するなど、チャンスに強いことも特筆すべき点です。1番バッターで「30本塁打・80打点」以上をマークしたのはナ・リーグ史上4人目の快挙。いまやブラックモンは「現役最高のリードオフマン」と言っても過言ではないでしょう。

 そのブラックモンとは対照的に、今シーズンになって急激に知名度を上げたのがロサンゼルス・ドジャースに所属する32歳のジャスティン・ターナーです。

 2006年のドラフト7巡目・全体204位でシンシナティ・レッズから指名されたターナーは、プロ入り後もしばらく目立った活躍はできませんでした。2009年にボルチモア・オリオールズでメジャーデビューを果たし、2010年のシーズン途中でニューヨ−ク・メッツにトレードされるも、最初の5年間はまったく芽が出ず。2014年にドジャースに移籍したときも、マイナー契約という扱いでした。

 当時ドジャースで二塁手を務めていたのは、現在中日ドラゴンズでプレーしているキューバ出身の新人アレックス・ゲレーロ。ターナーはゲレーロの控えという立場で加入しました。しかしそのシーズン、規定打席不足ながら打率.340をマークしたことで、チーム内での評価がグッと高まったのです。その後、三塁手としてレギュラーの座を奪取し、ようやくドジャースで居場所を見つけることができました。

 今シーズン序盤はケガで出遅れたものの、復帰後はヒットを量産して7月19日に規定打席に到達。その時点で打率.374でメジャートップに立ち、オールスターのファイナルボート「32人目の男」にも選ばれました。夏場に調子を落として現在リーグ3位の打率.323ですが、まだチャンスは十分にあります。これまで日の目を見てこなかったドジャース不動の3番バッターに今後も注目してください。

 そしてナ・リーグの投手部門は、やはり最多勝争いが面白いことになっています。球界を代表するドジャースのクレイトン・カーショウ、アリゾナ・ダイヤモンドバックスのザック・グレインキーと並び、現在17勝でトップを競っているのがミルウォーキー・ブルワーズのザック・デイビーズです。

 現在24歳のデイビーズは2011年にオリオールズからドラフト26巡目・全体785位という下位指名でプロ入りしました。つまり、アマチュア時代は期待されるようなピッチャーではなかったのです。2015年7月にブルワーズにトレードされた際もまだメジャーデビューする前で、マイナーでの実績も決して高くはなく、9月にメジャーデビューを果たすもデイビーズへの期待度は変わらずでした。

 ところが2016年、フルシーズン1年目で突如、大化けしたのです。チーム最多の11勝(7敗)・防御率3.97をマークして関係者を大いに驚かせました。そして今シーズンも先発ローテーションの主軸として勝ち星を積み重ね、現在17勝9敗・防御率3.89というすばらしい成績を残しています。

 デイビーズはカーショウやグレインキーのように剛腕タイプのピッチャーではありません。速球はせいぜい90マイル(約145キロ)程度。メジャーのなかでは平均以下のスピードです。しかし、その速球にカットボールとチェンジアップを織り交ぜる頭脳的なピッチングが冴えており、ストライクゾーンの低めにボールを集める技術も卓越しています。

 今シーズンのピッチングを見ていても、対戦相手の並み居るスラッガーをゴロで打ち取っているシーンが目立ち、バッターの多くはバランスを崩されていました。過去のピッチャーでたとえるなら、通算355勝を挙げて「精密機械」と称されたグレッグ・マダックスのタイプに近いと言えばいいでしょうか。

 今年のブルワーズが躍進した原動力は、間違いなくデイビーズです。カーショウ(17勝4敗)やグレインキー(17勝6敗)といったサイ・ヤング賞投手と最多勝を争っているのですから、彼に注目しないわけにはいかないでしょう。

 レギュラーシーズンが終盤に入り、個人タイトル争いも佳境となってきました。今回紹介した選手が栄冠を手にできるのか、最後まで目が離せません。