冬のパラリンピック競技・アイスホッケーのクラブチーム日本一を決める全国大会が12月7日と8日、やまびこスケートの森アイスアリーナ(長野県岡谷市)で行われた。昨年は4チーム出場だったが、今年は3チームに減り、総当たりで優勝を争った。第33回全…
冬のパラリンピック競技・アイスホッケーのクラブチーム日本一を決める全国大会が12月7日と8日、やまびこスケートの森アイスアリーナ(長野県岡谷市)で行われた。
昨年は4チーム出場だったが、今年は3チームに減り、総当たりで優勝を争った。
日本代表の石川率いる東京・関西連合は初戦を落とす7日に行われた第1試合は、東海アイスアークスと東京・関西連合が対戦した。
東京・関西連合は東京アイスバーンズとロスパーダ関西による合同チーム。前回大会でチームの中心にいたフォワード伊藤樹、日本代表のGKである堀江航を欠く東京・関西連合は、キャプテンの石川雄大が安定したプレーで東海アイスアークスのゴールを脅かしたものの、固い守備に阻まれた。
試合は3対2で東海アイスアークスの勝利。前回大会(4位)は味わえなかった勝利に「やったー!という気持ち」と正橋幸夫キャプテン。初めて公式戦を戦うスタッフも多かったといい、意味のある1勝に笑顔を見せた。
一方、正橋は「フォワード陣が攻撃的にプレーできず、守りの時間が増えてしまった」「交代の練習をしていなかったため、タイミングが遅くなった」などの課題を挙げ、次戦に備えた。
成長著しい若手を擁する東海アイスアークス約2時間後に行われた長野サンダーバーズと東海アイスアークスの第2試合は、前回王者の長野サンダーバーズが力を見せつけた。
日本代表でも活躍するエースでキャプテンの熊谷昌治が単独でパックを運んだり、GKとの駆け引きを制したりするなど圧倒的な存在感を見せて4得点。試合は5対1で長野サンダーバーズが勝利し、連覇に王手をかけた。
「決める人が決め、演出する人が演出した」と試合を振り返った熊谷。一方、鵜飼祥生や河原優星ら伸び盛りの選手を擁する東海アイスアークスに対し、「僕(49歳)らは年をとるが、彼らは伸びていく一方」と敬意を忘れなかった。
今大会に選手不足で出場できなかった北海道ベアーズからレンタル移籍により、東海アイスアークスで出場した森崎天夢も、期待される10代選手だ。
「スピードが武器なので、それを見せられたのはよかった」と森崎。前回の大会では試合中にバテていた、と語るが、月に2度の強化合宿で効率のいい漕ぎ方を習得したという。今大会で1年間の成長を実感し、胸を張った。
王者・長野サンダーバーズの苦悩8日に行われた第3試合の長野サンダーバーズと東京・関西連合による注目の一戦。第1ピリオド途中までは1対1だったが、またもや熊谷が大量に得点し、最終的に10対3で長野サンダーバーズが制した。
敗れた東京・関西連合の石川は「日本代表が多いチームから3点が取れたのはまずまず」としつつ、「(チームで)練習ができていないので仕方ない面はあるが、10失点というのはよくないかな」と反省の弁。
それでも、「1試合目よりコミュニケーションもよかったし、点に対する意欲も増えたのかなと思う」と前を向いた。
終始声を張ってチームを盛り上げた金子幹央は、今大会1得点2アシスト。金子を含め、強化合宿に参加している代表選手が活躍した。
「(合同で出場した)関西は、3~5年後には若手が育ち、恐ろしい成長を見せると思う。東京も頑張ってメンバー勧誘して増やし、来年は単独で出られたら」と語った。
メンバー不足に悩むのは王者も同じだ。
「クラブチームは人数も限られて人が増えない問題がある。ずっと同じようなメンバーでやっているというのが課題。女子選手や小学生が興味を持ってくれているが、後輩の育成をしていかなきゃいけないと思っている」と熊谷は語る。
さらに熊谷は今大会を振り返り、「一人の選手が強いチームじゃダメだと思う。(日本代表の)新津(和良)などには、もっと得点に絡んでもらい、ゲームを作るということをしてほしい。敵に対しても、強くなってほしい思いがある。クラブ選手権でもっと接戦の試合ができれば」と高みを見据えて語った。
今大会は出場チーム数も、3チームと少なかった。
「クラブチームは日本代表メンバーが中心なので、全体のレベルは着実に上がっている」と熊谷。
クラブチームの裾野の広がりを願いつつ、今はトップ選手が日本代表としてパラリンピック出場を目指して奮闘しているのが日本の現状だ。
日本代表はミラノ・コルティナに向けて強化中2026年のミラノ・コルティナ冬季パラリンピックを目指す日本代表は、2025年1月に長野市若里多目的スポーツアリーナ(ビックハット)で3ヵ国4チームによるトーナメント戦を行う。
クラブチーム選手権で活躍した熊谷、石川のほか、若手の伊藤、ベテランの須藤悟らが出場予定。現在、世界ランキング10位の日本代表は、ミラノ・コルティナ大会の最終予選で上位に食い込むべく、貴重な国際大会で経験を積む。
text by Asuka Senaga
photo by Takamitsu Mifune