第101回箱根駅伝(来年1月2、3日)で2年ぶりの王座奪還を狙う駒大の山川拓馬(3年)が、強さを増して箱根路に戻ってくる。けがの多かった体を見直し、10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝と快走。駒大のエース格として迎える今大会では、5区…

 第101回箱根駅伝(来年1月2、3日)で2年ぶりの王座奪還を狙う駒大の山川拓馬(3年)が、強さを増して箱根路に戻ってくる。けがの多かった体を見直し、10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝と快走。駒大のエース格として迎える今大会では、5区の山上りを希望する。“4代目・山の神”襲名を目指す山川の快走が、駒大を勝利へ導く。

 山川の勢いが止まらない。「昨年とは、本当に全く別物」と自身でも成長を明かす。10月の出雲駅伝3区2位と好走。11月の全日本大学駅伝は最終8区で3位から2位の青学大を猛追し、1995年に早大の渡辺康幸がマークした日本人最高記録にあと10秒と迫る57分9秒で区間賞を手にした。チームの2位という結果に「(優勝した)国学院大の背中が見えていた。まだいけたんじゃないかなって悔しい気持ち」と語る姿にエースの自覚が漂った。

 地道な努力がパワーアップさせた。前回箱根は左恥骨の故障などが影響し4区6位。青学大と4秒差で受けたタスキを1分26秒まで広げられ、チームも2位で連覇を逃した。「自分は故障が多く、走っては壊れ、走っては壊れっていう感じでした」。箱根の悔しさもあり、けが続きの体を根本的に見直した。

 体のバランスの左右差が大きいことが判明し、日本コンディショニング協会のトレーナーから筋肉量を整える指導を受けた。3か月、丁寧に鍛え続け、3月に走る練習を再開すると「体をうまく使いながら走れている。足が前に出る」と実感。骨盤が前方に傾いて腰が反った状態になる反り腰も改善した。復帰戦となった6月の1万メートルで、いきなり29分10秒72の自己ベストを更新。7月には28分36秒98まで縮めた。夏が終わる頃には、藤田敦史監督(48)も「力が違う」と感じたという。

 新春の箱根では山上りの5区を希望する。1年時は5区4位と好走し、駒大初となる学生3大駅伝制覇に貢献した。長野・上伊那農高時代、夏場に標高1200メートルの萱野高原を頂上までの約5キロ、坂練習を反復していることから「かなりハードな練習で、今に生きている」と坂道には自信がある。そして、「(1年の記録)区間4番では終わりたくない。区間賞まではいきたい」との思いも強く、目標は「山の神になりたい」と言い切った。

 藤田監督は山川を平地の主要区間に起用する考えもある一方で、「彼の良さを箱根でも引き出してあげたい。楽しみにしていてください」とも明かす。「優勝を狙って頑張っていきたい」と山川。進化した姿を新春の箱根路で披露する。(手島 莉子)

 ◆5区「山の神」 初代の今井正人(順大)、2代目の柏原竜二(東洋大)、3代目の神野大地(青学大)が「山の神」と呼ばれた。5区で区間新記録で、往路の優勝テープを切ることが“襲名”の条件と言われる。07年に今井が区間新記録をマークしてゴールした瞬間に日本テレビの河村亮アナウンサーが初めて「山の神」という言葉を使い、定着した。今でも中継する日本テレビのアナウンサーの裁量に任される部分が大きい。今大会では駒大の山川拓馬(3年)、青学大の若林宏樹(4年)、城西大の斎藤将也(3年)、創価大の吉田響(4年)が「4代目」の候補に挙がる。

 ◆山川 拓馬(やまかわ・たくま)2003年7月30日、長野・上伊那郡箕輪町出身。21歳。箕輪中から上伊那農高に進み、3年時は5000メートルで全国高校総体出場。駒大の経営学部経営学科に進み、大学駅伝デビューとなった1年時の全日本大学駅伝で4区区間賞を獲得。箱根駅伝は5区4位で駒大史上初の学生3大駅伝3冠に貢献。2年時は出雲駅伝3区2位、全日本8区区間賞、箱根4区6位。3年時は出雲3区2位、全日本8区区間賞。自己ベストは5000メートル13分56秒92、1万メートル28分36秒98、ハーフマラソン1時間1分36秒。169センチ、54キロ。