2024年のJ1リーグが終わった。最終節までサンフレッチェ広島と争った末、ヴィッセル神戸が連覇を果たした。来シーズン、この「2強」に対抗できるチームは、どこなのか。サッカージャーナリスト後藤健生は、最終節での戦いから、あるチームに可能性を…
2024年のJ1リーグが終わった。最終節までサンフレッチェ広島と争った末、ヴィッセル神戸が連覇を果たした。来シーズン、この「2強」に対抗できるチームは、どこなのか。サッカージャーナリスト後藤健生は、最終節での戦いから、あるチームに可能性を見出している。
■非常に整理された「プレッシング」
ボールを握って攻撃を仕掛ける回数は多かったサンフレッチェ広島だが、1本目、2本目のパスはつながっても、3本目または4本目のパスをカットされたり、走る選手とパスのコースがズレてしまったりする場面が多く、なかなかフィニッシュまで行けなかったのだ。
ガンバ大阪のプレッシングは非常に整理されており、リトリート(相手にボールを奪われた際に、自陣に戻って守備陣形を整えること)すべきときはしっかりと引いて守り、効率的にプレッシングをかけた。だからこそ、90分を通じて運動量を落とさないですんだのだろう。
そんな中で、広島は70分に左からの東俊希からのクロスを、加藤陸次樹が胸で落として素晴らしいゴールを決めたかに見えた。だが、すぐにVARが介入してオフサイドでゴールは取り消されてしまった。
加藤の体幹はDFより後ろにあったものの、3Dラインを引くと体の一部がオフサイドラインより前に出ていたようだ。現行ルールでは、確かにオフサイドだったのかもしれないが、オフサイド・ルール本来の趣旨からすれば、ゴールと認めるべきプレーだと思う(たとえば、パリ・オリンピックのスペイン戦での細谷真大の“幻のゴール”と同じだ)。
もし、加藤の同点ゴールが認められていたら、確かに勝負の行方は分からなかった(もっとも、広島が逆転勝利していても、神戸の優勝は動かなかったのだが)。だが、加藤の“幻のゴール”の後、G大阪は2点を追加して勝負を決めて見せた。
ただ、試合の結果がどうなっていたとしても、この試合、内容的にG大阪が上回っていたことは間違いない。
■攻撃面でも大きく貢献した「MOM選手」
広島の攻撃を封じる、水際立ったG大阪の組織的な守備。
ディフェンスリーダーの役割を担ったのは、この日の試合前にJ1リーグ300試合出場の表彰を受けた中谷進之介だ。僕は、もしマン・オブ・ザ・マッチの投票があったとしたら、間違いなく中谷に1票を投じていたことだろう。
柏レイソルの育成組織出身で名古屋グランパスを経由して今シーズンからG大阪に加わった中谷。年代別代表に招集され続けて将来を嘱望されたDFも、もう28歳になった。日本代表にも招集経験はある。代表に定着することはできなかったが、その素晴らしい才能がG大阪で花を開いたようだ。
最終ラインを統率すると同時に、必要な場面では右のCBというオリジナルポジションを離れてタッチライン際まで出て対応したり、また、広島のシャドーの選手(加藤やトルガイ)が中盤に下りた場合にはしっかりついていったりと、非常にクレバーなプレーを見せて、広範囲をカバーした。
そして、1対1の局面でも強さと巧みさを見せた。
たとえば、26分にG大阪側から見て右サイドで、広島の川辺駿が仕掛けてきた場面。川辺がゴールラインのところで中谷を抜きにかかると、中谷は腕を使って川辺の動きを封じながら、巧みなターンで反転して確実にボールをクリアした。
中谷は81分には鈴木徳真のFKをダワンが折り返したボールに反応して、DFと競り合いながら押し込んで、勝利に大きく近づく2点目を決め、攻撃でもG大阪の快勝に大きく貢献した。