今年10月に開幕したSVリーグ、男子バレーが活況を呈している。「世界最高峰のリーグを目指す!」 そのスローガンは大風呂敷ではない。平均で約8割の入場者数を記録し、これまで突破できなかった1万人の入場者という大台をすでにクリアしている(11…
今年10月に開幕したSVリーグ、男子バレーが活況を呈している。
「世界最高峰のリーグを目指す!」
そのスローガンは大風呂敷ではない。平均で約8割の入場者数を記録し、これまで突破できなかった1万人の入場者という大台をすでにクリアしている(11月3日、東京グレートベアーズ対サントリーサンバーズ大阪)。
髙橋藍のイタリア・セリエAからの帰国、西田有志の明朗でパワフルなキャラクター、山本智大の世界屈指のディグ、関田誠大の非凡なセットアップなど、パリ五輪で活躍した選手たちの躍動は、単純に多くの観客を興奮させている。来年1月のオールスターゲームの人気投票では、髙橋や西田以上に小野寺太志が最多の得票を誇り、リベロの小川智大が女性票を集めるなど、人気も多様化している。
海外の有力選手も多くやって来て、"世界最高峰リーグ爆誕"も夢物語ではない。少なくともその予感は漂っている。
では、"世界最高峰のチーム"はどこになるのか?
新天地サントリーサンバーズ大阪でのプレーにもフィットしてきた髙橋藍 photo by Kurobane Shiro
開幕後、2カ月あまりの時点で、西田を擁する大阪ブルテオンがSVリーグを牽引してきた。地上波のゴールデンタイムでも放送されたサントリー戦、3-0で快勝した勢いを続ける。火力を誇るロペス・ミゲル、パリ五輪でも活躍した山本、山内晶大など有力選手は多いが、チームを牽引するのは、やはり西田だ。
「西田は熱量が違いますね」
日本代表監督就任決定も発表されたブルテオンのロラン・ティリ監督は、西田の存在そのものを高く評価していた。
「西田は常に100%で、試合ですべてを出し尽くすことができます。たまにやりすぎるほどですが(笑)。いつもポジティブで、チームにとって重要な選手です。今年の夏からSVリーグが開幕して、すべてにハイレベルなプレーをし続けてくれています。そのレベルがなるべく落ちないようにするのが大事ですが、ここまでは大活躍してくれていますね」
数字も華々しいが、パーソナリティがチームを引っ張っている。リーグ3本の指に入る決定率を誇り、コートで見せる自信に満ちた姿は、チームの希望と言える。
【拮抗した戦いが続く】
ブルテオンを激しく追い、12月8日のヴォアレス北海道戦の勝利で首位を奪ったのがジェイテクトSTINGS愛知だ。
「新しいチームで、新しいメンバー」
ジェイテクトのミハウ・ゴゴール監督がそう説明しているように、開幕戦でVC長野トライデンツに敗れるなどスタートはつまずきながらも、その後はしっかりと勝ち星を重ねている。
「チームとして打開していく、試合を乗り越えていく、というのはとても楽しい」
スパイカーを自在に操る関田は語るが、彼のような百戦錬磨のクレバーなセッターがいることは大きなアドバンテージだろう。必然として、パリ五輪代表オポジット、宮浦健人も外国人選手と同格の得点を量産。アメリカ代表で世界トップのアウトサイドヒッター、トリー・デファルコも破壊力を披露し、ミドルブロッカーの村山豪も台頭を見せる。
一方、一昨シーズンの王者ウルフドッグス名古屋も3位で、拮抗した戦いを繰り広げる。パリ五輪日本代表はいないが、元代表のセッターである深津英臣、新たにキャプテンになったサイドの高梨健太、今年6月にはB代表でドイツ戦に出場したサイドの山崎彰都など好選手が多い。何より、ニミル・アブデルアジズはSV最高の得点力を誇る(総得点リーグ1位)。
そして王者サントリーサンバーズ大阪も、4位で復調の気配を見せる。新体制(コーチだったオリビエ・キャットが監督に就任)のチームは「(代表選手が多く、プレシーズンを一緒に戦えず)時間がかかる」というハンデを背負い、新たに入団した髙橋が足首の違和感を覚えて3試合欠場するなどしたが、逆境は織り込み済みだった。ようやく、コンビネーションが合ってきた。
苦戦するなかでの新鋭選手の成長は朗報で、ミドルの鬼木錬はそのひとりだろう。
「(チームに)来た当初から、鬼木はミドルブロッカーとしていい選手になる、とは思っていました。我慢強く、スマートで、素質は持っていたので、ひとつ一つのプレーから自信を積んでいるところで。ゲームのなかでまだ混乱から調子を落とすところはありますが、成長度合いには満足しています」
キャット監督は言うが、それぞれの選手のコンビネーションがフィットしつつあり、そのなかで成長も見られる。
SVリーグは44試合。まだ3分の1が終わったにすぎない。レギュラーシーズン上位6クラブがチャンピオンシップに進出し、チャンピオンシップはトーナメント方式となる。
果てしなく長い戦いだけに、これから起こる波乱こそ、戦いを彩ることになるだろう。
たとえば東京グレートベアーズがサントリーを撃破した試合では、2028年ロサンゼルス五輪に向けた代表選手としても期待されるサイドの後藤陸翔が次々にスパイクを決め、主役を飾った。
「その時代の一番になりたいっていうのはあるので、このチームを優勝させたい」
そう挑戦的に語っていた後藤は、髙橋らと同世代で競ってきた選手。彼のような存在がリーグに化学反応を起こすだろう。
このあと各チームは天皇杯を戦い、リーグ再開は12月27日となる。