メジャーリーグの地区優勝争いが白熱するなか、個人タイトルの賞レースも過熱してきました。ア・リーグではニューヨーク・…

 メジャーリーグの地区優勝争いが白熱するなか、個人タイトルの賞レースも過熱してきました。ア・リーグではニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジがホームラン数を43本まで伸ばし、2位のオークランド・アスレチックスのクリス・デービスに4本差をつけてトップを走っています。

※数字は現地9月16日現在



メジャー屈指の飛ばし屋と評判のジョーイ・ギャロ

 ただ、ア・リーグのホームラン王争いは彼らふたりに絞られたわけではありません。その後方には数本差でリーグを代表するスラッガーが続々と名を連ねています。そのなかでも注目したい選手は、テキサス・レンジャーズのジョーイ・ギャロです。

 現在23歳のギャロはアマチュア時代にネバダ州の高校記録(65本塁打)を塗り替えるなど、当時から「超高校級スラッガー」として有名な存在でした。2012年にドラフト1巡目追補・全体39位でレンジャーズに指名されてプロ入り。将来の大砲として育てるべく、さっそくマイナーリーグに送られました。

 高校を卒業したばかりながら、ギャロはルーキーリーグでいきなり規格外のパワーを発揮します。2013年~2014年と2年続けて40本塁打以上を記録。そのパワーはマイナーレベルをはるかに超えており、わずか21歳7ヵ月でメジャー昇格を果たしました。

 しかし、メジャーの舞台に立ったギャロは思うように結果が出せず、まさかの苦しい日々が続きます。メジャーデビューした2015年は6本塁打で、2016年も出番が限定されてわずか1本塁打。粗いバッティングで三振の山を築き、自慢のパワーはすっかり鳴りを潜めてしまいました。

 ところが今シーズン、ギャロに思わぬ転機が訪れます。ベテランのエイドリアン・ベルトレが故障で欠場することになり、開幕からスタメンで起用されるチャンスが舞い込みました。すると、ついにギャロはその素質を開花させます。8月にはホームラン11本を放ち、現在、37本塁打でリーグ4位。打球を飛ばす能力はピカイチで、マイアミ・マーリンズのジャンカルロ・スタントンに並ぶほどと評されています。

 また、ギャロのバッティングで注目すべき特徴は、37本ものホームランを放っている一方で、シングルヒットは今季わずか28本しか打っていないという点でしょう。

 歴史を振り返ると、1998年~1999年のマーク・マグワイア(1998年=61単打・70本塁打、1999年=58単打・65本塁打/当時セントルイス・カージナルス)や、2001年のバリー・ボンズ(49単打・73本塁打/当時サンフランシスコ・ジャイアンツ)など、シングルヒットより本塁打のほうが多いケースはありました。ただ、ギャロのようにシングルヒットを27本しか打っていないのに本塁打王争いをしている例は非常に珍しいです。この稀有な左打ちのスラッガーから今後も目が離せません。

 そしてア・リーグの打撃部門でもうひとり注目したいのは、打点王争いをしているボルチモア・オリオールズのジョナサン・スコープです。現在25歳のスコープはオランダ領アンティル諸島にあるキュラソー島の出身。元楽天のアンドリュー・ジョーンズや、ヤクルトのウラディミール・バレンティンなどが生まれた島としてご存知の方も多いのではないでしょうか。

 2008年にアマチュアFAでオリオールズに入団し、2013年9月にメジャーデビュー。二塁手として順調に成長を遂げ、2016年には全162試合に出場して打率.267・25本塁打・82打点という好成績を残しました。また、今年3月のWBCではオランダ代表として4番・バレンティンの後ろを任されています。

 今シーズンはバッティングでのパワーが著しく向上し、現在打率.301(リーグ9位)・32本塁打(9位タイ)・104打点(2位)をマーク。オリオールズの歴史において、二塁手および遊撃手で「30本塁打・100打点」をクリアしたのは、カル・リプケン・ジュニア(1991年)とミゲル・テハダ(2004年)に次ぐ史上3人目の快挙です。

 昨シーズンとの大きな違いは、ボールをよく見るようになってフォアボールが増えた点でしょう。昨年は出塁率(.298)が低くて下位打順でしたが、今年はそれが3割5分前後まで向上したことにより、いまやオリオールズ不動の3番バッターです。現在打点トップのネルソン・クルーズ(シアトル・マリナーズ)との差は6打点。あと20試合ほど残っているので、逆転する可能性も十分にあると思います。

 一方、ア・リーグの投手部門でもっとも盛り上がっている賞レースは最多勝争いではないでしょうか。現在、6人のピッチャーがトップタイで並んでいます。クリーブランド・インディアンスのコーリー・クルーバー(16勝4敗)とトレバー・バウアー(16勝9敗)とカルロス・カラスコ(16勝6敗)、カンザスシティ・ロイヤルズのジェイソン・バルガス(16勝10敗)、ボストン・レッドソックスのクリス・セール(16勝7敗)、そしてセールの同僚のドリュー・ポメランツ(16勝5敗)です。

 クルーバーやセールは毎年のように最多勝争いを演じるエースですが、28歳のポメランツはまったく違います。今シーズン開幕前のキャンプでは先発5番手を争うほどの評価で、首脳陣の信頼度も決して高いほうではありませんでした。

 ただ、ポメランツはプロ入りしたときから評価が低かったわけではありません。2010年のドラフト1巡目・全体5位でインディアンスから指名を受けた当時は、将来を嘱望される若手ピッチャーのひとりでした。しかしながら、2011年にコロラド・ロッキーズでメジャーデビューを果たすも3年間でわずか4勝と芽が出ず、2014年~2015年のアスレチックス時代も合計10勝12敗。時には先発からリリーフに回されることもありました。

 ところが昨シーズン、トレード先のサンディエゴ・パドレスでシーズン前半を8勝7敗で折り返し、7月にレッドソックスでも3勝を挙げて自身初のふたケタ勝利をマーク。これが自信につながったのか、今シーズンはカットボールを多く投げるようにしたことで、まるで見違えるように勝ち星が増えていきました。いまやポメランツはレッドソックスに欠かせない堂々たる先発2番手です。

 本塁打王、打点王、最多勝……いずれも長い歴史を持つ名誉ある栄冠を、はたして誰が手にすることになるのか。初めての個人タイトル奪取に挑む彼ら3人にも注目です。