ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」――今年のGIチャンピオンズカップ(12月1日/中京・ダート1800m)は、非常に混戦の様相を呈していると思うのですが、いかがでしょうか。大西直宏(以下、大西)注目されるのは、古馬の王者がそ…
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
――今年のGIチャンピオンズカップ(12月1日/中京・ダート1800m)は、非常に混戦の様相を呈していると思うのですが、いかがでしょうか。
大西直宏(以下、大西)注目されるのは、古馬の王者がその地位を守るのか、それとも、新勢力が台頭するのか。そうした状況のなか、どの馬にも勝機があって、まさに難解な一戦と言えますね。
もともとダート路線は、地方交流戦や海外のビッグレースも絡んでくるため、勢力図がひと目で見通せない複雑さがあります。それに加え、(この時期は)世代交代の波が押し寄せるタイミングでもあり、各馬の能力比較がさらに難しくなっています。
昨年は12番人気の伏兵ウィルソンテソーロが2着に突っ込んで、3連単の配当が190万円超えという大波乱。今年も展開次第では、昨年のような波乱の再現があってもおかしくありません。
――注目ポイントとして挙げていただきましたが、現在のダート路線の勢力図をどうご覧になっていますか。
大西 近年のダート路線は、レモンポップ(牡6歳)やウシュバテソーロらが中核を担ってきました。しかし、先日の海外GIBCクラシック(11月2日/デルマー・ダート2000m)で3歳馬フォーエバーヤングがすばらしいパフォーマンスを見せて3着に入ったことで、世代交代の兆しが見え始めています。
今回、その3歳世代からはラムジェットが直前で回避してしまったので、出走馬はサンライズジパング(牡3歳)1頭だけになってしまいましたが、同馬も力をつけてきています。一方、レモンポップやウィルソンテソーロ(牡5歳)といった既成勢力も変わらず、今年も結果を出して実力を示しています。
こうして、新興勢力が活気づいているなか、既成勢力も衰えを見せることなく、今年のチャンピオンズカップは、世代間での勢力争いが焦点になることは間違いありません。今後のダート路線の行方を占ううえでも重要な一戦です。
――出走メンバーを見渡してみると、逃げ・先行タイプがそろっている印象があります。展開については、どう見ていますか。
大西 中京・ダート1800mは「先行有利」と言われるコースですが、今回のように逃げ・先行タイプが多い場合は、ペースが速くなる可能性がとても高いです。もし前半1000mが59秒台に突入するようなハイペースとなれば、後方待機の差し馬が台頭することも十分に考えられます。
特に「何が何でも逃げたい」というミトノオー(牡4歳)の存在は、展開に大きな影響を与えると思います。昨年、逃げ切り勝ちを収めたレモンポップは控えても競馬ができる馬ですが、ミトノオーと競り合うような形になると、ペースは一段と速まって先行勢には厳しい流れになるのではないでしょうか。
先週のジャパンカップが極端なスローペースになったことからも、騎手の心理を鑑みると、今週はその反動で速い流れになりやすいのではないかと考えています。
――人気面では昨年の1、2着馬が中心となりそうですが、連覇を狙うレモンポップはここがラストラン。同馬については、どう評価していますか。
大西 レモンポップは、現時点での国内ダート路線の王者。チャンピオンズカップをはじめ、昨年から国内では負けるシーンは見ていません。これまでの実績は圧倒的で、ラストランとなる今回も当然注目されるべき1頭だと思っています。
ただし、今回の課題は"展開面"。繰り返しになりますが、逃げ・先行勢が多いメンバー構成では、昨年のようにラクにハナをきれるかどうかわかりません。
昨春と今春、海外で大敗したふたつのレース、GIドバイゴールデンシャヒーン(10着。メイダン・ダート1200m)、GIサウジカップ(12着。キングアブドゥルアジーズ・ダート1800m)では、いずれもハナを奪えずに厳しい競馬を強いられました。中京のタフな1800m戦でも同じような展開になれば、リズムを崩してしまわないか、心配されます。その点が、連覇への重要なポイントになるでしょう。
――ウィルソンテソーロについてはいかがでしょうか。
大西 ウィルソンテソーロは昨年、12番人気ながら2着と健闘し、その後も着実に成長しています。先の地方交流GIJBCクラシック(11月4日/佐賀・ダート2000m)では、4馬身差の圧勝劇を披露。ここでも有力候補の1頭と言えます。
この馬の最大の強みは自在性。先行でも差しでも結果を出せるため、展開に左右されることはほとんどありません。さらに、鞍上の川田将雅騎手とのコンビは信頼度が高く、安定したパフォーマンスが期待できます。今年も上位争いに絡んでくると想定しています。
――そうした人気と実力を兼ね備えた既成勢力に対抗する、穴馬候補はいますか。
大西 先にも触れた新興勢力のサンライズジパングが気になります。このレースは展開面がカギを握るため、騎手のウエイトが大きくなると考えています。その点、武豊騎手が手綱を取るのは、非常に大きなアドバンテージです。
チャンピオンズカップでの勝ち負けが期待されるサンライズジパング
photo by Eiichi Yamane/AFLO
ジャパンカップを制したドウデュースの騎乗でもそうだったように、武豊騎手はどんな舞台でも冷静沈着。仕掛けを遅らせることで、末脚を最大限に引き出すスタイルが際立っています。
今回のサンライズジパングの騎乗でも、昨年のウィルソンテソーロのように、速いペースのなか後方でじっくり待機する形を取ってくるはず。そうして、直線に入ってから一気に脚を伸ばしてくるシーンが目に浮かびます。
また、斤量差があるのも大きいです。古馬より2kg軽い56kgという斤量は、直線で末脚を爆発させるうえで相当なメリットになるでしょう。その斤量差を生かせれば、上位食い込みは大いにあり得ます。
よって、チャンピオンズカップの「ヒモ穴」には、武豊騎手騎乗のサンライズジパングを推したいと思います。