秋のGIシリーズは早くも6レースを終えた。古馬GIでは、エリザベス女王杯でスタニングローズが返り咲き、2005年スイープトウショウ以来19年ぶりとなった秋華賞馬の4歳以降の勝利。天皇賞・秋はドウデュースがGI勝ち馬としては史上最速の上がりタ…

秋のGIシリーズは早くも6レースを終えた。古馬GIでは、エリザベス女王杯でスタニングローズが返り咲き、2005年スイープトウショウ以来19年ぶりとなった秋華賞馬の4歳以降の勝利。天皇賞・秋はドウデュースがGI勝ち馬としては史上最速の上がりタイムを打ち出し、マイルCSのソウルラッシュは同レース3度目の挑戦でGI初制覇を成し遂げ、秋前半戦も見どころたっぷりであった。

ここまで1番人気の勝利は秋華賞チェルヴィニアだけ。リバティアイランドやナミュールがまさかの大敗を喫するなど、ひと筋縄ではいかない結果ばかり。馬券でみても、3着以内の1番人気はチェルヴィニアしかいない。9番人気ルガルの勝利から幕を開け、菊花賞は7番人気3着アドマイヤテラ、天皇賞・秋は9番人気2着タスティエーラと8番人気3着ホウオウビスケッツ、エリザベス女王杯は12番人気2着ラヴェル、マイルCSは7番人気2着エルトンバローズと10番人気3着ウインマーベルと、元気な穴党も多そうだ。

ここでは、秋のGIシリーズを「メモリアル・記録」から読み解いていく。

◆【ジャパンカップ2024予想/危険な人気馬】人気先行の感、タイトルホルダーも敗れた「0.0.0.19」 血が示す適性外の舞台で“消し”

■5歳での秋天→JC連勝なれば“史上2頭目”

秋前半戦の波乱を演出した穴馬たちを見渡すと、近走思うような結果を残せていない実績馬といったパターンが目立つ。今年未勝利だったのはタスティエーラ、ラヴェル、エルトンバローズの3頭。残る3頭は人気の盲点といったところ。いずれも積極策に出て打開した。アドマイヤテラはマクって勝負に出たものだが、競馬は前にいればなにかを起こせるといわれる。この先も果敢な攻めで活路を見出す伏兵には十分、注意を払わないといけない。

さて、ここから未来に話題を移そう。今週はジャパンCだ。なんといっても秋古馬3冠を狙うドウデュースのGI5勝目がかかる。前走天皇賞・秋組は1986年以降、14勝を挙げ、このうち連勝を決めたのは5頭。スペシャルウィーク、テイエムオペラオー、ゼンノロブロイ、アーモンドアイ、イクイノックス。アーモンドアイ以外はすべて4歳で達成している。3歳時にすでにJC勝利を果たしていたアーモンドアイに対し、勝利経験なしの5歳馬ドウデュースはいかに――。

5歳で3着以内に入ったのは33頭。このうち、4歳時にジャパンCに出走したのは13頭おり、前年3着以内かつ、5歳(馬齢表記変更前の2001年以前は6歳)でも3着以内だったのはエアグルーヴ、テイエムオペラオー、ウオッカ、ブエナビスタ、キタサンブラック、アーモンドアイなど10頭。前年4着以下に敗れ、5歳で3着以内となると、エルナンド、ウィジャボード、サウンズオブアースの3頭に留まり、勝利を手にした馬はいない。

4歳から5歳は維持こそ可能なものの、パフォーマンスをあげる成長は難しいということだろうが、ドウデュースに関して言えば、天皇賞・秋をみても昨秋より状態があがっているのは明白。JC未勝利馬における5歳での天皇賞秋→JC制覇の“前例なき連勝”があっても不思議はない。

オーギュストロダン、ゴリアット、ファンタスティックムーンのボーナス込みの1着賞金9億5000万円をかける外国馬はどうだろうか。優勝は2005年アルカセットが最後。23回勝利がない。とはいえ、3番人気以内なら【4.4.4.21】勝率12.1%、複勝率36.4%で、該当馬は2011年デインドリームが最後だ。最近は正直、馬券を買いたくなる外国調教馬が出走していない。3番人気以内は2000~11年まで6頭いて、3、7、1、3、4、6着。0秒5以内の勝負圏内まで詰めたのは5頭もいる。ドウデュースの対抗格に選ばれるなら、馬券圏内に入ったって不思議はない。穴馬や刺客が目立つ今年は、状況的に馬券に一切入れないのは危険かもしれない。

■史上2頭目の連覇がかかるレモンポップ

チャンピオンズCにはレモンポップが連覇を目指すと同時に引退レースを迎える。前身のジャパンCダートを含め、連覇はトランセンド1頭のみ。同馬は2年連続逃げ切り勝利。昨年逃げ切ったレモンポップもスピードと粘りが身上だけに、似た部分が多い。トランセンドは前年勝利からフェブラリーS1着、ドバイワールドC2着、マイルCS南部杯1着、JBCクラシック2着から連覇を遂げた。レモンポップはサウジC12着のあとはさきたま杯、マイルCS南部杯1着で連勝中と王者にふさわしい競馬を経て、ここを迎える。

チャンピオンズCといえば、JBCクラシック経由が主流だが、実はこの連勝は2007年ヴァーミリアン1頭しかいない。中3週のGI連戦はダートの猛者といえど、簡単ではない。ヴァーミリアンは大井JBCから連勝したが、翌年は園田JBCを勝ち、ジャパンCダートは3着に敗れた。前走JBC1着馬は大井【1.2.0.5】、大井以外【0.2.3.4】。大井以外のうち広いコースの盛岡を除くと【0.2.2.3】複勝率57.1%に上る。今年は小回り佐賀で行われており、昨年3着で高配当を演出したウィルソンテソーロは今年、レモンポップを逆転できるかが見どころになりそうだ。

■2歳GIは“無敗馬”に勢い

2歳GIは無敗馬に注目。とりわけ2連勝で挑みGIを勝った馬は1986年以降、28頭いる。阪神ジュベナイルフィリーズは11頭。新馬→重賞から3連勝を飾ったのはビワハイジ、レーヴティソール、レッドリヴェール、ラッキーライラック、レシステンシア、アスコリピチェーノの6頭。不思議と桜花賞を勝った馬はいないが、のちの活躍は言うまでもないだろう。ブラウンラチェットは無敗3連勝でGI制覇なるか、そして桜花賞の結果まで追いかけたい。

朝日杯フューチュリティステークスは同じ3連勝でのGI制覇は14頭と牝馬路線の半分。2勝目が重賞だったのはローズキングダム、ダノンプレミアム、サリオス、ドルチェモア、ジャンタルマンタルの5頭。阪神JFもそうだが、特に近年はこの傾向が強い。2連勝で重賞を勝ったトータルクラリティは理想的なローテで駒を進める。GIを勝ち、主役でクラシックを迎えたいところだろう。

ホープフルSはGI昇格後の7年において、3勝が2連勝の無敗馬。サートゥルナーリア、コントレイル、ダノンザキッドがいる。このうちクラシックウイナーは2頭。連勝で2000mGIを勝つ価値は高い。クロワデュノール(出否未定)、マジックサンズ、マスカレードボールはここを突破すれば、文句なしの横綱候補だろう。

■五輪イヤーの有馬は荒れ模様

有馬記念は世相馬券をいくつか紹介する。まずは五輪イヤー。1988年ソウル五輪以降を調べると、

88年オグリキャップ(2、1、3番人気) 92年メジロパーマー(15、5、4番人気) 96年サクラローレル(1、3、14番人気) 00年テイエムオペラオー(1、2、13番人気) 04年ゼンノロブロイ(1、3、9番人気) 08年ダイワスカーレット(1、14、10番人気) 12年ゴールドシップ(1、10、2番人気) 16年サトノダイヤモンド(1、2、3番人気) 21年エフフォーリア(1、5、2番人気)

1992年以外はすべて1番人気が3着以内に入っている一方で、9番人気以下の激走が9回中6回もある。今年はヒモ荒れ傾向のGIシリーズだけに、最後もひとひねり必要か。また、史上たった2頭しかいない秋の中距離GI3連勝を決めたのも五輪イヤー。ドウデュースはジャパンCを突破し、王手をかけるようなら、あるいは可能性は高いかもしれない。

球界では横浜DeNAベイスターズが1998年以来の日本一を決めた。その1998年の有馬記念といえば、グラスワンダーが3歳で勝った年だ。この時の3着は11番人気ステイゴールド。やはり人気薄は押さえた方がいいかもしれない。野球ネタの連続で恐縮だが、ペナントレース3位からの日本一、いわゆる下剋上といえば、2010年千葉ロッテマリーンズを思い出す。この年の有馬記念もヴィクトワールピサ(2人気)、ブエナビスタ(1人気)のワンツーも、3着には14番人気トゥザグローリーが粘り込んだ。いや、2桁人気馬は買い目に必須なのではないか。

再三書いたように、今秋のトレンドは人気薄が一角を崩す波乱。とっておきの穴馬をひねり出すのが勝ち筋だろう。

◆【ジャパンカップ2024予想/前走ローテ】天皇賞・秋組に「2.0.3.0」の堅軸候補 “美味しい存在”となりうる凱旋門賞出走馬

◆【ジャパンカップ2024予想/血統展望】オーギュストロダンより“美味しい”外国馬は ランド&ピルサドスキーと共通する「日本適性」

◆【ジャパンカップ2024特集】出走予定・枠順、予想オッズetc. 「ドウデュースvsオーギュストロダン、日英ダービー馬対決」お役立ち馬券攻略ガイド

◆著者プロフィール

勝木淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬ニュース・コラムサイト『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)などに寄稿。