60歳を目前にしているとは思えない肉体を披露したタイソン。(C)Getty Images レジェンドが19年ぶりに“公式戦”のリングに上がる。 現地時間11月15日、元プロボクシングの世界ヘビー級統一王者のマイク・タイソン(米国)は、米テキ…
60歳を目前にしているとは思えない肉体を披露したタイソン。(C)Getty Images
レジェンドが19年ぶりに“公式戦”のリングに上がる。
現地時間11月15日、元プロボクシングの世界ヘビー級統一王者のマイク・タイソン(米国)は、米テキサス州アーリントンのAT&Tスタジアムで、プロボクサーのYouTuberであるジェイク・ポール(米国)と対戦する。
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通常とは異なる2分8回戦ながら公式戦扱いとなる今回の一戦。タイソンがエキシビションマッチ以外の試合に臨むのは、現役引退を決めた2005年6月のケビン・マクブライド(アイルランド)戦以来、約20年ぶりとなる。ちなみにこの時には6回TKOを負けを喫していた。
世界最大級の動画配信サービス『Netflix』での生配信も決まり、高額のファイトマネーも見込める“異色カード”に向け、とくに元世界王者はやる気十分だ。14日に行われた前日計量でポールとフェイスオフしたタイソンは、相手の挑発的な態度に激高。右手で強烈なビンタを炸裂させると、両陣営が壇上に集結。親子ほどの年齢が離れた両雄を中心に会場はどよめいた。
前日計量だけでも大きな話題を生み出している今回の対戦。かつて史上最年少で世界ヘビー級王者となり、一世を風靡したレジェンドが、あの手この手で自らをプロモートし、ボクシングビジネスで異彩を放つ“炎上上等”のYouTuberとガチンコで殴り合う。この要素は「エンターテインメント大国」にあって飛び切りの娯楽と言えよう。
無論、懸念がないわけではない。31歳という両者の年齢差もあり、「公式戦」とするにはあまりに娯楽重視がすぎるマッチメイクを疑問視する関係者も多い。実際、業界最大のプロモーターの一人であるエディ・ハーン氏は、英公共放送『BBC』で「この試合は危険で無責任。私の考えでは、ボクシングというスポーツに対する敬意も欠いている」と断言。さらに「少しでも頭がある人なら馬鹿げていることは分かる」と辛辣に批判した。
それでもなお、当人たちをはじめ、プロモーションに携わる関係者たちが試合を推し進める理由はいくつか挙げられる。ひとつはカネだ。両陣営が総額4000万ドル(約60億円)の賞金を得るとされる興行を業界関係者が見過ごすわけにはいかないのである。
ただ、カネだけではないという意見もある。『Al Jazeera』の取材に応じた元世界3階級制覇王者のデューク・マッケンジー(英国)は、「特にタイソンが試合をする理由は彼自身のエゴだ」と指摘。元世界王者としてのプライドが、YouTuberとの試合に向かわせていると分析した。
「私たちが見ているのは、ショックで疲れ果てた老戦士ではある。だが、残念なことに、彼はまだ過去を追体験したがっている。彼のエゴが試合から逃げることを許さない」
おそらく今回の試合は身体に及ぶ危険性を考えれば、ハーン氏の指摘する通り、やるべきではない。それでも若年層のボクシング・ファンをはじめとする多くの観衆が「見たい」と願ってやまないところに奇妙な、異様な魅力がある。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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