『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(13)日本製鉄堺ブレイザーズ 上村琉乃介(連載12:日本製鉄堺ブレイザーズ安井恒介は田中龍之介の言葉で気持ちを奮い立たせる>>)(c)古舘春一/集英社(連載12>>) 礼儀正しく、腰も低く、真面目な…
『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(13)
日本製鉄堺ブレイザーズ 上村琉乃介
(連載12:日本製鉄堺ブレイザーズ安井恒介は田中龍之介の言葉で気持ちを奮い立たせる>>)
(c)古舘春一/集英社
(連載12>>)
礼儀正しく、腰も低く、真面目な性格なのだろう。インタビューでも、年長者が座るまで決して先には座らない。発する言葉も謙虚だった。
しかし、上村琉乃介はこう宣言した。
「日本一になりたい」
野心を隠しているのだ――。
バレーボールとの出会いは、偶然とも、運命的とも、どのようにも解釈できた。
小学1年から5年まではサッカーをしていたが、あまり上達が感じられず、心が離れつつあった。小5のある日、母親のママさんバレーについていった時だ。地元にあるチームのVC長野(トライデンツ)が「ジュニアチームを立ち上げる」という話を聞いた。新しいものが始まる気配に、関心を持った。VC長野の元選手のプレーも見ることができ、羽ばたくようにスパイクを打つ姿に魅了された。
「何が楽しい、とかは覚えていないんですが、スパイクを打つフォームがカッコいいなって」
上村は真っ直ぐな目をして言う。
「それでVC長野のジュニアに入って、トップチームの選手とも話せる機会があったのがよかったです。当時は(Vリーグ)チャレンジリーグで戦っていたと思うんですけど、"この舞台でやってみたい"って思いました。中学生の時には、親に『Vリーガーなる』と言っていたそうです。試合観戦も行きましたし、『すごいな』って」
小学校、中学校と、全国でトップになるような強豪でプレーしたことはなかった。しかし、トップレベルのバレーが近くにあったことで、戦う準備はできた。
上村は強いエゴを持つわけではなく、任されたポジションに全力で挑む性格だった。中学はミドルブロッカーで、山梨の強豪・日本航空高校ではミドルブロッカーと、アウトサイドヒッターでプレー。東京学芸大では1、2年時はミドルブロッカーだったが、3年からオポジットに転向した。
「ミドルブロッカーは前、3ローテしかないし、アウトサイドヒッターはレセプションをしないといけない。オポジットも右打ちが苦手だったんですが......トスを遠くまで持ってきたら、幅の利点を生かして打てるなと。それに、バックアタックが好きで、1番跳べる。いろいろなポジションをやってきたことが、オポジットにつながっていると思います」
おとなしそうに見えるが、ギリギリの展開を楽しみたいという衝動がある。
――バレーボールの快感を覚える時は?
その問いに、彼は朴訥(ぼくとつ)にこう答えている。
「フルセットで勝った時とかの"ギリギリ感"がいいですね。もともと、常に勝つチームでやっていたわけじゃないので、なんとかして勝ったという時の喜びが体に染みついているのかもしれない。
大学4年時の春季リーグ入替戦で、相手に先に2セット取られてしまって......そこから『困ったら全部、自分にもってこい』と。それで3セット取り返して勝った時は、1部に残留できたし"気持ちいいな"ってなりました」
上村は静かに燃える。「バレーをやめよう」と思ったことは一度もない。
「バレーボールは、どんな有利な状況になっても確実に"勝った"と言えませんし、比較的に大逆転も多い。ひとりではどうにもできず、確実性が低く、流れが大事なスポーツだと思います。今までも、どうにもならないことのほうが多くて......。でも、だからこそ、かみ合った時の感じは最高。バレーボールは納得するまで続けようと思います。頂の風景を見てみたいですし。(バレーボールに出会えたのは)......運命なんですかね?」
彼は自問するように言った。
【上村が語る『ハイキュー!!』の魅力】
――『ハイキュー‼』、作品の魅力は?
「ひとりひとりのキャラがしっかりと描かれていて試合も楽しいし、『この選手が対戦相手にいたら嫌だな』とか、感情移入ができるところですかね。特に高校生の時、夢中で読んでいました」
――共感、学んだことは?
「主人公の日向(翔陽)や鴎台の星海(光来)とかの物語が好きで、『こうやって戦える選手になりたい』と思っていました」
――印象に残った名言は?
「日向(翔陽)が烏野に入る前、中学時代の最後の試合で、(劣勢のなかで)『まだ負けてないよ?』と相手チームの選手に言ったシーンは心に残っています。自分も、常に勝つチームでプレーしてきたわけではないので」
――好きなキャラクター、ベスト3は?
「1位は白鳥沢学園の天童(覚)で! キャラクターが可愛いじゃないですか。何も考えてなさそうなのに、実はいろいろと考えている感じが好きです。2位は稲荷崎の角名(倫太郎)。アクロバティックにいろんな体勢からスパイクを打てるし、『こんな感じで打ちたい』と思いました。3位は日向。主人公だし、ほかのキャラとの絡みがいいですね」
――ベストゲームは?
「烏野vs稲荷崎です。烏野が絶対に勝てなさそうな展開になるじゃないですか。でも、果敢に挑んでいくのがいい。ずっと烏野目線で読んでいました」
(連載14:Astemoリヴァーレ茨城の長内美和子が語る中心選手としての覚悟 落ち込んだときの支えは田中龍之介の言葉>>)
【プロフィール】
上村琉乃介(かみむら・りゅうのすけ)
所属:日本製鉄堺ブレイザーズ
2001年4月19日生まれ、長野県出身。186cm・オポジット。VC長野トライデンツのジュニアチームで技術を磨き、山梨の強豪・日本航空高校では春高バレーに3回出場した。東京学芸大を経て、2024年に日本製鉄堺ブレイザーズに入団した。