雰囲気が明らかに違う。ホームのUvanceとどろきスタジアムに中国の上海海港を迎えた、5日のAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)リーグステージ第4節を前に、川崎フロンターレのDF佐々木旭はチーム内の変化を感じていた。 直近の試合…
雰囲気が明らかに違う。ホームのUvanceとどろきスタジアムに中国の上海海港を迎えた、5日のAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)リーグステージ第4節を前に、川崎フロンターレのDF佐々木旭はチーム内の変化を感じていた。
直近の試合が1日の鹿島アントラーズとのJ1リーグ第35節。前半だけで3ゴールを奪われる惨敗を、ホームで喫していたからこそ違いは鮮明だった。
「ふがいない試合をしてしまった直後でしたし、やはりホームだったので、同じ失敗を繰り返さないように、みんなでいろいろと話し合っていました。試合前のロッカールームでも、先発の選手だけじゃなくてリザーブの選手も一緒になっていい雰囲気を作ってくれていたので、それがいい前半になった要因だと思います」
ロッカールームは具体的にどのような状況だったのか。佐々木が続ける。
「特にリザーブの選手たちが『行こう、行こう』などと声をかけあっていました。先発組は試合へ向けて集中しているし、いろいろな準備があるので、リザーブの選手たちがそうした声をかけてくれるだけで気持ちのスイッチが入りました」
■「鹿島にああいう負け方をして、みんなが気づいたところもあった」
対照的に鹿島戦を含めて、今シーズンでふがいない結果に終わった試合前は決まって同じ状況だったと37歳のベテラン、FW小林悠は鹿島戦後に悔やんだ。
「年齢などに関係なく、絶対に勝つ、といった気持ちをもった選手が多いチームほど強い。それが誰になるのか。自分を含めて、やれることがもっとあった」
対照的に上海海港戦は川崎が12分にMF家長昭博、13分にFW瀬川祐輔、33分にはDFファンウェルメスケルケン際と逆に前半だけで3ゴールをゲット。守っては83分の1失点にとどめて、リーグステージの星を2勝2敗とした。
「鹿島にああいう負け方をして、みんなが気づいたところもあったと思う」
自然と雰囲気が変わったと振り返った小林は、さらにこう続けている。
「今日ではっきりしたのは、前半から全員でハードワークして、先制点を取れれば強いということ。逆に先に失点すれば、あまりいい試合ができていない。先制点を取るためにも、強気でアグレッシブな姿勢を最初から見せなければいけない」
■「鹿島戦に出なかった選手は試されている部分もあった」
鬼木達監督は鹿島戦から、出場停止中のFWマルシーニョを含めて先発を5人入れ替えた。リザーブのまま90分を終えた鹿島戦から一転、ゲームキャプテンとしてフル出場したDF丸山祐市は試合後にこんな言葉を残している。
「自分も含めて、鹿島戦に出なかった選手は試されている部分もあったと思う」
鹿島戦で途中出場だった瀬川、ベンチ外だった際が奮起してゴールを決めた。いい意味での競争意識がチーム内で煽られ、再び中3日の9日に敵地で待っている、京都サンガF.C.とのJ1リーグ第36節へ向けて好循環が脈打っていく。
「相手があってのことなので、今日と同じ感じでいってもうまくいくとは限らないけど、サッカー以前の部分、たとえば気持ちの強さや戦う姿勢はどんなときでも疎かにしちゃいけない。まずはそこでしっかりと戦えるように準備していきたい」
今後へ向けてこのように気持ちを新たにした佐々木は、ハードワークを続けた影響からか、足の痙攣が治まらなくなった85分に自らダメ出ししてDFジェジエウと交代した。それでも試合後には、京都との次戦へ向けて問題ないと笑った。
「恩師の曺さんが率いる京都戦は、自分のオウンゴールで負けた試合以来、なかなか出られていないので。今回は勝ち点で並んでいるし、勝って引き離したい」
流通経済大時代にコーチだった曺貴裁監督が率いる京都とは勝ち点44で並び、得失点差で川崎が暫定11位、京都が同13位という状況で対峙する。
京都戦での佐々木の先発は記憶通りに0-1で敗れた、ルーキーだった2022シーズン第16節が現時点で最初にして最後。川崎の最終ラインを支えてきた佐々木は、上海海港戦を介してチーム全員が共有した勝利への合言葉に、恩師に成長した姿を見せる個人的なモチベーションを融合させながら、京都戦のキックオフを待つ。
(取材・文/藤江直人)