パリ五輪代表で躍動した吉井は移籍1年目の三遠でも目覚ましい活躍 photo by B.LEAGUE9年目を迎えたBリーグも開幕して1カ月。全22チームが9試合を戦い、第5節を終えた。近年の男子日本代表で活躍した選手がそれぞれの所属チームで躍…


パリ五輪代表で躍動した吉井は移籍1年目の三遠でも目覚ましい活躍

 photo by B.LEAGUE

9年目を迎えたBリーグも開幕して1カ月。全22チームが9試合を戦い、第5節を終えた。近年の男子日本代表で活躍した選手がそれぞれの所属チームで躍動するなか、昨季のCS進出4チームが属する中地区ではBリーグ優勝経験のあるアルバルク東京と昨季の地区優勝チーム・三遠ネオフェニックスが好スタートを切り、西地区では島根スサノオマジックが8勝1敗と突っ走っている。

*文中の「CS(チャンピオンシップ)」はプレーオフのこと。

東地区点検>>渡邊雄太不在も千葉が堅守で首位 宇都宮、群馬が追う

【中地区:鉄壁の守備を誇るAアルバルク】

 昨季のCS(チャンピオンシップ)出場8チーム中4チームが所属するなど、開幕前から激戦が予想された中地区で好スタートを切ったのは、東地区から編入したアルバルク東京と昨季の地区優勝チーム・三遠ネオフェニックスだ。

 A東京は4試合で相手を70点未満に抑える強固なディフェンスによって、8勝1敗という好スタートを切っている。2ケタの平均得点記録者はセバスチャン・サイズ、ライアン・ロシター、レオナルド・メインデルの3人だけだが、7人が6点以上を記録。また、8人が10分以上の出場時間を得るなど、層の厚さが東京の強みとなっている。

 7勝2敗で2位の三遠は、敵地で迎えた琉球との開幕戦を延長でモノにし、10月20日に東京から90点を奪って勝利。佐々木隆成と大浦颯太という質の高い司令塔ふたりを揃え、ヤンテ・メイテンがインサイドで強烈な存在感を発揮し、新戦力の吉井裕鷹とデイビッド・ヌワバが三遠のオフェンスをよりパワーアップ。特にパリ五輪でも活躍した吉井は、出場機会が増えた新天地でFG成功率で驚異の64.8%、平均13.7得点をマークし、古巣のA東京に勝った試合で17得点とすばらしい活躍をしている。

「本当に我慢強く戦ってくれたと思います。相手に打たせたくないシュートを打たせてしまっていたのと、自分たちにとって打たれてもいいシュートを相手に何回も決められていたことで我慢しきれず、違うところにフォーカスしていた。そこからしっかりとマインドセットし直して、自分たちのゲームプランをやり切ってくれた」

 A東京に勝利後に大野篤史コーチがこう語ったように、フィジカルの強さを武器にしている相手にどう戦うか。三遠がCSクォーターファイナル(1回戦)敗退に終わった昨季以上の結果を出すためのカギになるだろう。

 シーホース三河は、昨季の主力がほとんど残ったことに加え、日本代表歴のあるシューターの須田侑太郎が入団。2年目を迎えたライアン・リッチマンHCの下、三遠にホームで2連敗したものの、大阪エヴェッサの連勝を4で止めるなど、6勝3敗のスタートを切った。名古屋ダイヤモンドドルフィンズは三遠と三河に大敗で2連敗を喫するなど、一貫性に欠ける10月を過ごしてきた。新戦力の今村佳太が故障から復帰し、スコアラーのひとりとして活躍することを浮上のきっかけにしたいところ。

 ニック・ファジーカスの現役引退、元チェコ代表指揮官のロネン・ギンズブルグをHCに迎えた川崎は、B1での経験が少ない飯田遼や益子拓己の奮闘があるものの、2勝7敗で10月を終えた。ロスコ・アレン、サッシャ・キリヤ・ジョーンズ、アリゼ・ジョンソンの外国籍と、アジア特別枠(*)のマシュ・ライトがオフェンス面で牽引することが、勝利を積み重ねるために欠かせない。

*同時出場が可能な外国籍選手2名とは別枠で、1名の同時出場が認められるアジア国籍(Bリーグ指定国に限る)の選手枠

★中地区 順位表/10月31日現在
1 アルバルク東京 8勝1敗(.889)
2 三遠ネオフェニックス 7勝2敗(.778)
3 シーホース三河 6勝3敗(.667)
4 サンロッカーズ渋谷 5勝4敗(.556)
5 名古屋ダイヤモンドドルフィンズ 5勝4敗(.556)
6 横浜ビー・コルセアーズ 5勝4敗(.556)
7 ファイティングイーグルス名古屋 2勝7敗(.222)
8 川崎ブレイブサンダース 2勝7敗(.222)

【西地区:新戦力を軸に島根が開幕ダッシュに成功】


ベンチスタートながら島根の得点源として好調なチームを支えるクラーク(右)

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 9試合中7試合がホームゲームだったとはいえ、島根スサノオマジックは10月23日に琉球相手に37点差で大勝するなど、8勝1敗という最高のスタートを切った。ジェームズ・マイケル・マカドゥー、コティ・クラーク、エヴァンス ルークは、新戦力として期待に応えている。肩の故障で昨季を棒に振ったマカドゥーはインサイドでの得点に加え、ピック&ロールのディフェンス対応で機動力を発揮できるのが強み。ポール・ヘナレHCは「彼の加入はチームにとって大きなプラスだ」と語っている。

 三遠から移籍してきたクラークはシックスマン(ベンチスタートの選手)として登場しているが、平均20点はB1全体で3位という得点力など、オールラウンドなスキルを存分に発揮中。FE名古屋から加入した帰化選手のエヴァンスはリバウンドの強さと3Pも決められるパワーフォワードとして、島根が今季採用するビッグラインナップを機能させるうえで非常に重要。司令塔である安藤誓哉の活躍が必要なのと同様、エヴァンスの存在は島根の勝敗を左右する要素になるだろう。

 琉球ゴールデンキングスはB1に戻ってきた滋賀レイクスに89点を奪われての敗戦に加え、敵地とはいえ島根に大敗と、リズムに乗り切れないシーズン序盤を過ごした。ホームに戻った10月26日と27日の広島戦に連勝して6勝3敗にしたものの、11月はアウェーで好スタートを切った大阪エヴェッサ、佐賀バルーナーズ、千葉Jとの試合がある。島根との差を広げさせないためにも、この6試合で勝ち越せるか否かは大きな意味を持つだろう。岸本隆一、ヴィック・ロー、ジャック・クーリーに加え、新戦力のアヴェ・アルマ、脇真大のステップアップは、勝利を手にするうえで欠かせない。

 昨季の王者・広島は、朝山正悟HCが新指揮官に就任したものの、開幕前の予想以上に厳しい戦いを強いられている。外国籍選手と先発ガード陣の顔ぶれは不変も、河田チリジが開幕前に椎間板ヘルニアで離脱したことの影響は、80失点以上の試合は5戦全敗という状況ということでも明白。ディフェンスの質を高めることが勝利への近道なのだが、得点源のひとりであるニック・メイヨが10月26日の琉球戦で左足首を捻挫したこともあり、11月以降も苦戦を強いられる可能性が高い。

 広島と対照的なのが大阪エヴェッサ。藤田弘輝新HCの下、開幕からの4連勝を含む6勝3敗で3位。昨季はアンジェロ・カロイアロ(現・京都ハンナリーズ)の故障後に連敗地獄に陥ったこともあり、主力のケガを回避することで何とか上位争いに生き残りたいところ。新加入のマット・ボンズが平均18.2点とチームを牽引していることに加え、アジア枠選手のレイ・パークス・ジュニアが平均18点と好調。26日のレバンガ北海道戦で27点を最高に、20点以上をすでに3度記録している。11月2日と3日にホームで迎える琉球戦は、大阪の強さが本物か否かを知る指標になるだろう。

★西地区 順位表/10月31日現在
1 島根スサノオマジック 8勝1敗(.889)
2 琉球ゴールデンキングス 6勝3敗(.667)
3 大阪エヴェッサ 6勝3敗(.667)
4 長崎ヴェルガ 5勝4敗(.556)
5 京都ハンナリーズ 4勝5敗(.444)
6 佐賀バルーナーズ 4勝5敗(.444)
7 広島ドラゴンフライズ 2勝7敗(.222)
8 滋賀レイクス 1勝8敗(.111)