林陵平のフットボールゼミ注目を集めた今季1戦目の"クラシコ"、レアル・マドリード対バルセロナは、アウェーのバルセロナが4…

林陵平のフットボールゼミ

注目を集めた今季1戦目の"クラシコ"、レアル・マドリード対バルセロナは、アウェーのバルセロナが4-0の大勝を収めた。なぜ大差がついたのか。バルセロナの何がよかったのか。試合の詳細を人気解説者の林陵平氏に、徹底解説してもらった。

【動画】林陵平深掘り解説「レアル・マドリードvsバルセロナ」レビュー↓↓↓

【レアル・マドリードは狙いを持った4-4-2】

 レアル・マドリード対バルセロナのクラシコは、4-0とアウェーのバルセロナが勝利。前半はレアル・マドリードペースだったのですが、後半、バルセロナが選手を入れ替えて変化を加え、強さが目立ったゲームになりました。


バルセロナのフレンキー・デ・ヨングは、クラシコで試合の流れを変える活躍

 photo by Getty Images

 レアル・マドリードの初期配置は4-4-2。バルセロナのほうは4-2-3-1という形でスタートしました。

<レアル・マドリード>
FW/ヴィニシウス、エムバペ 
MF/カマビンガ、チュアメニ、バルベルデ、ベリンガム 
DF/メンディ、リュディガー、ミリトン、ルーカス・バスケス 
GK/ルニン

<バルセロナ>
FW/レバンドフスキ
MF/ラフィーニャ、フェルミン・ロペス、ヤマル 
MF/ペドリ、カサド 
DF/バルデ、イニゴ・マルティネス、クバルシ、クンデ 
GK/イニャキ・ペーニャ

 レアル・マドリードは3-4-2-1や4-3-3も試してきたなかで、ジュード・ベリンガムを右、エデゥアルド・カマビンガを左に置いた4-4-2にしてきました。

 この狙いは、左はまずバルセロナの右サイドのラミン・ヤマル&ジュール・クンデの攻撃に対して、フェルラン・メンディひとりの対応では難しいので、守備の部分を考えてカマビンガをMFに置いたのかなと思います。

 逆に右サイドは攻撃時に、相手左サイドバック(SB)のアレックス・バルデに対し、ジュード・ベリンガムとルーカス・バスケスで、2対1の数的優位を作って崩していくイメージがあったのかもしれません。

 バルセロナのほうは、直近のゲームと変わりなく4-2-3-1でしたが、中盤ではペドリが状況に応じて上がったり、下りてきたりするケースが多かったです。

【レアル・マドリードはバルセロナの背後を狙った】

 レアル・マドリードの前半のゲームプランは、すごくはまっていました。守備では前から相手を捕まえにいきました。センターバック(CB)のふたりには、ヴィニシウス・ジュニオールとキリアン・エムバペ。両SBにはベリンガムとカマビンガ。マルク・カサドとペドリのところもチュアメニとバルベルデというように、マンツーマン気味に前からついていきました。これがかなりうまくはまりました。

 攻撃時は、バルセロナが最終ラインをかなり高くするので、ボールを保持した時には、やはりその背後を突く長いボールが多かったです。これに対してエムバペが何度も飛び出してのチャンスシーンが多かったんですが、オフサイドが多かった。

 29分には、これもレアル・マドリードの狙いだったのかなというシーンなんですが、エデル・ミリトンが後方でボールを持った時に、右サイドでベリンガムが少し内側に入り、大外のスペースにルーカス・バスケスがあがりました。そこにミリトンからロングボールが入り、ルーカス・バスケスからのパスを相手の裏に抜け出したエムバペがループシュート。しかし、これもギリギリでオフサイドでした。

 レアル・マドリードとしては、この前半に点を取れなかったのが痛かった。またバルセロナはこれだけギリギリの攻防がありながら、このハイラインを保てるところに凄まじさを感じました。

【バルセロナは後半出場のフレンキー・デ・ヨングが大きかった】

 後半、バルセロナはフェルミン・ロペスに代えて、フレンキー・デ・ヨングを入れてきました。デ・ヨングがピボーテ(ボランチ)に入り、ペドリを1列前に出しました。

 これでバルセロナの何が変わったかというと、ボールを保持する時間です。デ・ヨングがかなりボールを引き受けてターンするなど、プレス回避のところで個人で時間を作れるようになったのが大きかった。

 こうなると、レアル・マドリードはハイプレスにいきたくてもいけなくなる状況が生まれます。バルセロナは全体のラインを押し上げられて、やりたいことができるようになり、流れが変わりました。

 そうしたなか、54分、バルセロナに先制点が生まれました。中盤でカサドがボールを持って前を向いた時に、ロベルト・レバンドフスキが相手の最終ラインの背後をとり、スルーパスを受けて決めました。この時、前線中央にはペドリとラフィーニャがいて、レアル・マドリードの2CBがこれについていた。レバンドフスキの飛び出しについていた右SBのルーカス・バスケスはオフサイドをとろうと動きを止めましたが、左SBのメンディが少し残っていました。

 このシーンを見ると、DFラインを揃えて上げるというのは簡単なようでそうではないと感じます。CBがラインを上げても、SBの選手は相手のウイングの位置に結構引っ張られて残ってしまいがちなんです。バルセロナはラインを揃えて上げられていましたが、レアル・マドリードはそうではなかった。

 バルセロナは56分に2点目と畳みかけましたが、このシーンでも中盤でデ・ヨングが一度前後のパス交換で相手を食いつかせてから空いた左奥へパス。そこにバルデが走り込み、クロスからレバンドフスキがヘディングシュートを決めました。ここにもデ・ヨングの才能をすごく感じました。

【2列目からの飛び出しを狙ってもよかった】

 レアル・マドリードは、後半、なかなか自分たちの時間を作れませんでした。背後に飛び出しても、エムバペは何回もオフサイドかかってしまう。

 たしかに、もう少しバルセロナのラインの上げ下げにアジャストしてほしいなというシーンもありました。ただ、最前線でプレーしているなかでそこから走り込もうとすると、意識していたとしてもやはりオフサイドになってしまうものなんです。相手とギリギリの駆け引きをしているなかでのプレーですから。

 そこで、この試合では2列目からの飛び出しも必要だったんじゃないかと考えました。たとえばベリンガムをトップ下に入れて、バルベルデを右MF、ヴィニシウスを左MFに。モドリッチとカマビンガのふたりを中盤に置く、4-2-3-1を試してもよかったのかなと。これであれば2列目のベリンガムやバルベルデが助走をつけて走り込んで、バルセロナの最終ラインの背後を取れたのではないかと思いました。

 このあと点を取りに行こうと全体が前掛かりになったレアル・マドリードに対して、バルセロナはその背後を突くようにして2点を追加しました。

 レアル・マドリードは前半ゲームプランがはまったので、本当にそこでゴールを決められればよかったんですけど、後半、ハンジ・フリック監督の修正でバルセロナに流れがいきました。バルセロナは攻守4局面においてすごくプレーが明確で、「強いな」と思わせる戦いでした。

 ダニ・オルモやガビなどケガをしていた選手が帰ってきて、DFラインもロナルド・アラウホやアンドレアス・クリステンセン、エリック・ガルシアなども戻ってくると結構盤石になります。

 ただ、このハイラインをクラシコでも見せつけたとなると、他のチームは「じゃあ、どういう風にそのハイラインを破っていくか」と対策もどんどん出てくると思います。そのあたりがこれからの楽しみになりますね。