最近メディアで取り上げられることが多くなってきたスポーツクライミング。2020年東京オリンピックの正式種目に採用されたことで、認知度はますます上がってきています。 しかし、比較的新しいスポーツということもあって、その成り立ちについては知ら…

 最近メディアで取り上げられることが多くなってきたスポーツクライミング。2020年東京オリンピックの正式種目に採用されたことで、認知度はますます上がってきています。

 しかし、比較的新しいスポーツということもあって、その成り立ちについては知らない人も多いことでしょう。そこでロッククライミングからスポーツクライミングへの変遷について追っていきながら、その魅力について紹介します(監修:公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会)。

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そもそもロッククライミングって何?

 「ロッククライミング」は、「ロック(=岩)」と「クライミング(=手足を使って登る)」の複合語です、文字通り、岩をよじ登ることを指します。

 ロッククライミングは、登山の一要素でもありますが、それ自体がひとつのジャンルとして、欧米を中心に発展してきました。日本では長らく登山の一分野として扱われていましたが、1970年代に始まるフリークライミングの普及とともに、ひとつのジャンルとして認知されるようになっていったのです。

 フリークライミングとは、ロッククライミングの中でボルトなどの人工物を安全確保のためだけに使うスタイルのことです。

 その歴史は古く、少なくとも19世紀の後半にはドイツのエルベ川周辺の砂岩の岩塔において現在のものに近い考え方でフリークライミングが行われていたことが確認されており、これがフリークライミングの源流のひとつと言われています。


エイドクライミングとフリークライミング

 欧米ではロッククライミングは登山の一要素であると同時に、それ自体が独立したジャンルとして発展してきました。その過程で、きわめて難しいところはアブミ(短い縄梯子)やボルトなどの人工物を駆使して登ることが行われるようになりました。このスタイルを「エイドクライミング」といいますが、1950~60年代にかけて次第に人工物に過剰に依存するようになります。

 1960年代後半以後、そうしたエイドクライミングへの依存に対する批判がおこり、それまでエイドクライミングで登られていたところをフリークライミングで登ろうとする動きが起こります。とりわけ1970年代、アメリカ西海岸のヨミセテでフリークライミングが盛んになると、一気に世界的に広まりました。以降、ロッククライミングはフリークライミングスタイルを中心に発展していきます。

ロッククライミングの競技化とスポーツクライミング

 ロッククライミングは競技化に向く要素を内包していました。「誰がいちばん早く登れるのか」「どこまで登れるか」という誰にでもわかるルールで、クライマー同士が競うことができたのです。1980年頃からヨーロッパを中心に、自然の岩場で競技会が開かれるようになります。「スポーツクライミング」の始まりです。

 しかし、この競技会には問題もありました。自然の岩を対象にするため開催場所が限られること、大会が気象条件などに左右されやすいこと、観客席を設置しづらいことなどです。

 この問題は人工壁の登場により解決します。1980年代に登場した人工壁(日本では90年頃)はまたたくまにクライマーたちの心をとらえ、競技を身近なものにしました。自然の岩場と違って、基準が定めやすいこともあってスポーツ化が一層進むことになりました。

 スポーツ化を世界レベルで推進する組織も、UIAA(国際山岳連盟)内にできました。この組織はのちにIFSC(国際スポーツクライミング連盟)に発展し、現在に至ります。なお当初競技名は「競技クライミング」でしたが、2007年に「スポーツクライミング」と改められました。

スポーツクライミングの競技は3種類

 2020年の東京オリンピックから正式競技となったスポーツクライミングには、「ボルダリング」「リード」「スピード」の3種目があり、オリンピックもこれらの種目の成績を総合して最終順位を決定する複合種目としておこなわれます。

 歴史的にはスピードが最も古く、1940年代末から1950年代の初めにかけて旧ソ連で行なわれるようになりました。ボルダリングは、1990年代末に追加されました。身近で体験しやすく、ジムなども増えてきたので名前も聞き慣れてきた感じもしますが、残りのリードとスピードは聞き慣れないと思います。すべて壁をよじ登る競技ですが、設備やルールなどが微妙に異なりますので下にまとめました。

 最低限のルールを覚えておくと、自分で体験してみたくなったり、東京オリンピックでの観戦が楽しくなるかもしれません。

【スポーツクライミング3種目のポイント】

●ボルダリング

高さ5m以下の壁を、壁の下にマットを設置して安全確保して登る。あらかじめ設定された複数の課題(ルート)を一つずつ制限時間内にトライしていき、いくつのルートを完登(クリア)できたかで勝敗を決める。より多くの課題をクリアした人が勝者となる。課題数は予選が5、準決勝以後が4。

●リード

高さ12m以上の壁を、安全確保のためのロープを中間支点に通しながら登り、どこまで登れたかを競う。制限時間は6分。

▲写真提供/日本山岳・スポーツクライミング協会

●スピード

高さ15mメートルの壁をどれだけ早く登れるか、そのスピードを競う。安全確保は上からたらされたロープ(トップロープ)でおこなう。全ての大会、全てのラウンドで全く同じルートが使われるため、世界記録も認定される。決勝は2本のルートを使い一度に2人の選手が登場して対戦する勝ち抜き戦で行なう。

▲写真提供/日本山岳・スポーツクライミング協会

東京オリンピックでは日本選手のメダルに期待

 日本ではまだ競技人口も多くはなく、マイナースポーツの枠を出ないスポーツクライミングですが、実は世界的な強豪を多く輩出している国のひとつです。古くは1998年と2000年のリードのワールドカップで平山ユージ(裕示)選手が年間優勝。

 その後、ボルダリングでは野口啓代選手が2014年、15年と連続でワールドカップで年間優勝しています。最近でも、2016年の世界選手権のボルダリングで楢崎智亜選手が優勝。世界選手権の優勝は、日本人初の快挙です。

 また楢崎選手はワールドカップの年間ランキングでも1位ですし、2位には藤井快選手が入っています。女子も野中生萌選手がボルダリングランキング2位の座を獲得しています。そして年間を通じてのボルダリングの国別ランキングで、日本は2014年からずっと1位の座を守り続けています。

 東京オリンピック正式種目入りということもあって、こうした有力選手のますますの活躍が期待されます。そういった選手の活躍から、スポーツクライミングじたいのすそ野もさらに広がっていくのではないでしょうか。

[監修] 公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会
https://www.jma-sangaku.or.jp/

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<Text:瀬戸嶋 勝+アート・サプライ/Photo:Getty Images>

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