会見後の囲み取材で現況について語る那須川。(C)CoCoKARA next 10月11日、東京都内でアマゾンプライムが13日と14日に開催するボクシング世界戦『PRIME VIDEO BOXING 10』に向けた記者会見を開き、今興行でWB…

 

会見後の囲み取材で現況について語る那須川。(C)CoCoKARA next

 

 10月11日、東京都内でアマゾンプライムが13日と14日に開催するボクシング世界戦『PRIME VIDEO BOXING 10』に向けた記者会見を開き、今興行でWBOアジアパシフィックバンタム級王座決定戦に挑む那須川天心(帝拳)ら18人のファイターが登壇した。

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「体調も全てよく、全部整えてきた。あとは明後日の計量を待つだけ。前回KOで倒せた勢いというか流れを引き続きやってきた。トレーニングだけでなく、世間ともしっかり勝負してきたのでそれをしっかり回収して、必ずいい結果で終わらせたい」

 王者が居並んだ会場で意気込みを求められた那須川は、キッパリと言い切った。今年1月に行われたルイス・ロブレス(メキシコ)戦、同7月のジョナサン・ロドリゲス(米国)戦と、連続して3回TKO勝ちと成長著しい26歳は自信を深めていることが感じ取れた。

 無論、過去4戦よりも注目度は高まっている。必然的にプレッシャーも増すが、彼の言動にはどこか余裕すら漂う。キックボクシング時代からベルトを懸けてきた経験は大きいのだろうか。国内外の多くの記者や関係者を前にしても「会見、長いっすよね。はたして、必要かって思っちゃいますよね(笑)」と冗談を口にし、白い歯を見せる姿に精神的な動揺は微塵も見受けられない。

 今回の興行ではバンタム級のトップ戦線も大きく動く可能性がある。初日に井上拓真(大橋)と堤聖也(角海老宝石)がWBAタイトルマッチ、2日目には中谷潤人(M.T)とペッチ・ソー・チットパッタナ(タイ)によるWBCタイトルマッチがそれぞれ行われる。

 その中で虎視眈々と王座を見据える那須川は、「グラディエーター」の異名を持つジェルウィン・アシロ(フィリピン)相手に内容と結果の両方が求められる。

 下馬評は那須川の優位という見方が強く、残さなければいけないノルマも確実に上がっている。しかし、立ちはだかる壁が大きくなればなるほど彼は闘志を滾らせるタイプだ。デビュー以来、KO勝ちを求める世間とも「しっかり勝負してきた」今の彼なら、ボクサーとして対戦相手レベルが上がっても、これまで以上のパフォーマンスは期待できそうである。

「倒しに行くと倒せない」

 無論、タイトル奪取を切望する本人に浮足立つ素振りは見られない。今回の一戦に向けて陣営から「お前はパンチ力がないんだぞと改めて言われた」という神童は、こう自身の現状を語る。

「倒しに行くと倒せない。流れの中で戦って、相手を導いて、自分で相手を動かして戦うことをずっと意識してます。パンチ力は元々ある方ではないんで。相手の見てないところで打つのが一番効くので、そういう状況をどう作るかというのを常に重視してます。それがより明確になってきました」

 アッパーも織り込んだフィニッシュの連打を見せた前回のロドリゲス戦では適応能力の高さも示した。序盤にしきりに飛んできた鋭いパンチに対して右のパンチモーションをよりクイックにすることで対応。こうして相手を袋小路に追い込み、TKO勝ちを収めた。一連のパフォーマンスには「流れの中で戦う」ことへのこだわりが垣間見えた。

 ボクシング転向から約1年が経ち、その深みを知り、どんどんのめり込んでいる。挑戦前は「正直、やる前までは(ボクシングが)地味だなと思っていた」という那須川は「めっちゃハマってる。好きなんです」と語る。こうした言動を見ても、彼が興行の主役を張る日は遠くないように思える。

 ボクシングへの愛が増している。だからこそ、14日のタイトルマッチでは「生き様を見せたい」と語る偉才の姿を目に焼き付けたい。

[取材・文:羽澄凜太郎]

 

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