五十嵐亮太が占うMLBポストシーズン展望(前編) メジャーリーグはレギュラーシーズンが終わり、いよいよワールドシリーズに向けたポストシーズンが現地時間10月1日(日本時間2日)から始まる。注目はなんと言っても、前人未到の「54−…
五十嵐亮太が占うMLBポストシーズン展望(前編)
メジャーリーグはレギュラーシーズンが終わり、いよいよワールドシリーズに向けたポストシーズンが現地時間10月1日(日本時間2日)から始まる。注目はなんと言っても、前人未到の「54−59」を達成した大谷翔平率いるドジャースだ。自身初のプレーオフ進出ということもあり、どんな活躍を見せてくれるのか楽しみだ。
はたして、ロサンゼルス・ドジャースはワールドシリーズに進むことができるのか? MLBコメンテーターも務めるオカモト"MOBY"タクヤ氏が、メジャーをよく知る五十嵐亮太氏を直撃。MLBポストシーズンの行方を占ってもらった。
ポストシーズンでの活躍が期待される大谷翔平(写真左)と山本由伸
photo by Getty Images
【想像を超えていく大谷翔平】
── まずは今シーズンの大谷選手の成績(打率.310、54本塁打、130打点、59盗塁)について、五十嵐さんの率直な感想をお聞かせください。
五十嵐 開幕前に多くの解説者が指摘していたことは、「盗塁に力を入れてくる」ということでした。今季は投手としてプレーしない、つまり二刀流ではないので、どこに力を注ぐかとなればそれは盗塁になるだろうと。そして実際にキャンプから力を入れていたじゃないですか。「トリプルスリー」や「40−40」といった記録を期待していましたけど、それより上の「50−50」に到達して、最終的に「54−59」まで伸ばしました。
ある程度想像できる範囲って、あるじゃないですか。ここまでくらいならいけるだろうって。それを超える確率はそんなに高くないだろうって予想していたところを、大谷選手は超えてしまうんですよね。自分が望んでいるものとか求めているものとか、イメージしていることを本当に実現してしまうところが、あらためてすごいなと思います。
── 開幕時にいろいろありましたが、それを忘れるくらいの活躍でした。
五十嵐 精神的にも辛かったと思うし、ましてやドジャース移籍1年目。振り返ってみるとドジャースの球団記録もことごとく塗り替えているんですよ。このままいけばMVPも......僕も含め、並の人は彼のことを語ってはいけないのかなと思っちゃいます。大谷選手はポテンシャルもすごいけど、努力もすごい。そういう人が想像している、見えている世界っていうものは、やっぱり違うんだなっていうのは、今シーズンを見ていてすごく感じましたね。
── シーズン当初の打順は2番、途中から(ムーキー・)ベッツ選手がケガで離脱した関係で、その後はずっと1番で起用されているんですけど、打順はどこが相応しいと思いますか?
五十嵐 大谷選手は何番を任されようが、チームから求められていることに対して応える。盗塁が増えたのは、やはり1番だからこそ、というのはありますよね。2番を打つベッツももちろん積極的にいく場面はありますけど、ある程度、走るか走らないかというところで見極めてくれていたのもありました。今シーズンの本塁打、そして盗塁の記録は、後続を打つバッターが非常に重要だったということをあらためて感じましたね。
【苦しいドジャースの投手陣】
── 今季のドジャースの戦い方、とくにシーズン終盤は、五十嵐さんのなかでどう映っていますか?
五十嵐 投手陣は苦しいですよね。こんなにケガ人が出るのかっていうくらい出てしまって......。そう考えると、ケガ人が多いこの状況は、ポストシーズンに向けて先発投手の数が不安ですよね。またブルペン陣も安定しているとも言えません。ポストシーズンは、打撃戦に持ち込んで、打ち勝つしかないと感じてしまいます。
── ドジャース先発陣は誰もローテーションを、シーズン通して守ることができませんでしたからね。
五十嵐 結局、そうだったんですよね。ジャック・フラハーティを獲得してよかったですよね。シーズン中にこうした投手を獲得できるところも、ドジャースの強さの秘訣です。
── また投手陣では、山本由伸投手が復帰して4試合投げています。ポストシーズンでは、どのような登板になると思いますか?
五十嵐 順調に球数は増やしていて、投げている球の質もいいと思います。ただ9月22日の登板(対コロラド・ロッキーズ)はいい結果ではありませんでした。自分の思ったところに投げられていなかった。ただ、身体的な問題があったわけではないと思います。抜けてしまっている球もありましたが、ある程度きれいな真っすぐを投げていましたし、変化球もしっかり曲がっていたので、慎重になりすぎた結果、四球が増えてしまったと思います。とはいえ、ポストシーズンでは先発の2番手ですので、期待したいですね。
── それにしても、山本投手はよく今シーズン中に復帰できましたよね。
五十嵐 僕も同感です。肩の腱板損傷は厄介な箇所。今シーズンの復帰は無理なのでは......と思っていました。戻って来られただけでもすばらしいですよね。でも、戻ったからには結果を出してほしいと思います。
── ポストシーズンの先発陣を考えると、フラハーティ投手がいて、山本投手が2番手となると、3番手は......。今季ケガから復帰してきたウォーカー・ビューラー投手はしばらく調子を落としています。
五十嵐 とはいえ、ビューラーにも頑張ってもらわないといけない状況ですよね。山本投手は「この試合はよかった」「この試合は悪かった」という印象で、今のところ絶対的な存在とは言えないと思います。だけど、蓋を開けてみれば「山本が頑張ったよね」というような状況にならなければ、ドジャースは勝ち進むことは難しいと思います。先発がダメなら中継ぎが頑張るかといえば、そういうチーム状況でもないので、とにかくどのピッチャーも最少失点で抑えることと、打線の援護に期待しながら粘り強い戦いができるかというところが、ポストシーズンを戦っていくうえで重要なポイントになると思います。
後編につづく>>
五十嵐亮太氏(写真左)とオカモト
五十嵐亮太(いがらし・りょうた)/1979年5月28日、北海道生まれ。千葉・敬愛学園から97年ドラフト2位でヤクルトに入団。プロ2年目の99年にリリーフとして頭角を現し、一軍に定着。04年はクローザーとして37セーブを挙げ、最優秀救援投手賞のタイトルを獲得。09年オフにメジャー挑戦を表明し、メッツと契約。12年はブルージェイズ、ヤンキースでプレーし、13年にソフトバンクと契約し日本球界復帰。18年オフに戦力外となるも、ヤクルトと契約。19年は45試合に登板したが、20年10月に現役引退を表明。現在は解説者として活躍している。
オカモト"MOBY"タクヤ/ロックバンドSCOOBIE DOのドラマー。J SPORTS・SPOTV NOW・ABEMAにて試合解説を担当。NHK「ミュージックMLB」ナレーション。FMおだわら「ベースボールは歌う」MC。著書に『ベースボール・イズ・ミュージック!』(左右社)。MLB観戦歴は35年以上。カブスの大ファン。
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