ライリーの個人技は世界で通用するレベルだ(C)産経新聞社 6つの協会が参加した、パシフィックネーションズカップ(以下PNC)は9月21日に決勝が行われ、日本代表(世界ランキング13位、以下ジャパン)はフィジー代表(同10位)に17-…
ライリーの個人技は世界で通用するレベルだ(C)産経新聞社
6つの協会が参加した、パシフィックネーションズカップ(以下PNC)は9月21日に決勝が行われ、日本代表(世界ランキング13位、以下ジャパン)はフィジー代表(同10位)に17-41で敗れ、準優勝に終わった。昨夏の対戦に続きフィジーには2連敗で通算成績はジャパンの4勝16敗となった。フィジーのPNC制覇は6度目だ。
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この一戦、ジャパンの立ち上がりは非常に良かった。試合開始から各選手のランのスピード、サポートの速さ、接点でのコンタクト全てでフィジーを上回り、敵陣での展開が続いた。前半7分にペナルティーゴールで先制すると、同20分にはディラン・ライリーがスピード豊かな突進から、敵の最終防御の裏にショートパントを蹴り、転がったボールを自らキャッチしてトライを奪った。コンバージョンも成功して10-3。チームの上げ潮ムードは大いに高まったのだが、この後はフィジーの強力なフィジカルと奔放なランが威力を発揮し始める。
こう着状態が続く中で、徐々にフィジーのボール保持時間が増えていき、32分にトライを奪われ10-10の同点に追いつかれた。さらに、38分にはタックルに行った原田が相手の顔に肩を当ててしまい、これが危険なプレーと判定されて10分のシンビンを宣告された。この10分間は無失点で乗り切ったが、ここでの疲労の蓄積がその後のプレーの精度の低下につながったようだ。
後半16分にペナルティーゴールでの勝ち越しを許すと、そこから約20分は完全にフィジーペース。スピード豊かでパワフルなランに翻弄され、次々とゲインを許した。高温かつ高湿度下の試合だったため、各選手が大量に発汗し、その影響で両チームともにハンドリングエラーが多かったが、ジャパンはそのミスにつけ込むことができす、逆にジャパンのミスは大幅な地域の後退につながった。トライにまでつながってしまった場面もあった。
ラインアウトの精度が低かったのも敗因の一つ。二つのスチールと二つのスローミスを犯し、4本が敵ボールになってしまった。特に20分過ぎのラインアウトでスチールを喰らったのが痛かった。相手のミスからのペナルティーキックで敵陣まで押し戻した、いい流れの中で、サインプレーの一つも仕掛けてトライまで持っていければその後の展開も変わっていたかもしれない。試合の流れを決めてしまったと言って良いほどの痛いミスだった。
その後は、積極果敢に攻めるが、最後の最後でミスを犯し、そこから致命的な逆襲を喰らう、という「いつかみた光景」をたっぷりと見せつけられ、36分までに41-10と試合を決められてしまった。最後の最後でマロ・ツイタマが奪ったトライは見事だったが、こういうトライを、せめて10点くらいの点差の時に挙げておきたかった。
今大会を通じ、ミスが多いことを再三指摘してきたが、最後の最後でまさに致命的なダメージにつながった。今後の修練で個人としてもチームとしてもミスを減らす努力を重ねていくほかない。
確かな収穫もあった。全試合でトライを挙げたディラン・ライリーの個人技は世界レベルであることが証明された。フィジー戦のラインアウトで2回スチールして見せたほか、キックチャージ、バックアップのディフェンス、ボールキャリーの力強さなど豊富な運動量を示したワーナー・ディアンズの成長も頼もしい。また、李承信のFBがそれなりに機能していたのも収穫の一つだ。BKの用兵に幅を持たすことができる上、試合中の柔軟なポジションチェンジで、相手のディフェンス網を撹乱することにもつながる。
次は10月26日にニュージーランド代表オールブラックスを横浜に迎えてテストマッチを行う。1か月という限られた時間の中で、オールブラックスとの差をどこまで詰めることができるのか。そしてその後に続く欧州の強豪との対戦で「超速ラグビー」をどこまで進化させることができるのか。この敗戦の教訓をしっかりと活かしてオータムシリーズに臨んで欲しい。
[文:江良与一]
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