2戦連続のリタイア──。RBと角田裕毅は、ここにきて苦しい戦いを強いられている。 ライバルたちがマシンを進化させてくるなかで、もはや中団トップのマシンではなくなってしまったという現実。そのなかでも、なんとか入賞が期待できるのではないかと思…

 2戦連続のリタイア──。RBと角田裕毅は、ここにきて苦しい戦いを強いられている。

 ライバルたちがマシンを進化させてくるなかで、もはや中団トップのマシンではなくなってしまったという現実。そのなかでも、なんとか入賞が期待できるのではないかと思われたアゼルバイジャンGPでも、予選でQ3に進むことができず、決勝では1周目の接触で実質的にレースを失ってしまった。


シンガポール入りした角田裕毅

 photo by Yoneya Mineoki

 ランス・ストロール(アストンマーティン)との接触について、ストロールの強引なドライビングは非難しつつも、そういったドライビング自体をさせないよう牽制することができたのではないか、というのが角田の見解だった。リプレー映像を見返し、客観的に自分の取るべき行動を考える。他人を責めるだけでは、その先に成長はない。

「かなり強引にノーズを入れるだけという動きだったので(事故の責任は)50/50ではなかったと思いますけど、僕も相手にそういう動きをさせない動きができたと思いますし、これからに向けて学びになったと思います。もう少しブロックして牽制できたかなとも思うし、(インに入られたあとも)ぶつからないようにできた部分もあったかもしれないと思います」

 過去2戦とも同じように撃墜されたことに加え、このシンガポールでも過去2回の出走は、いずれもクラッシュでレースを終えている。そういう意味では、今週末のシンガポールGPに向けていい刺激になったかもしれない。

 イタリアGPに投入した新型フロアも、アゼルバイジャンGPではうまく機能していたことが確認できた。

 モンツァ(イタリア)では、ブレーキを残しながらターンインしていくような高速コーナーでマシンバランスが安定せず、増加したダウンフォース量を使いこなせずにラップタイム短縮につなげられなかった。しかし、バクー(アゼルバイジャン)のような低速の90度コーナーであれば、ブレーキングとターンインは別々のアクションであり、そういった新型フロアの問題点は露呈しづらかった。そういう意味で、シンガポールでも新型フロアのよさを活かすことができるはずだという。

【今はウイリアムズが中団トップ】

 さらにシンガポールは、もともとRB・VCARB 01が得意としているハイダウンフォース仕様のサーキットだ。モナコやハンガリーと同様に好走が期待できる。

「クルマの特性的には悪くないサーキットだと思いますし、空力性能で負けている部分をマシン特性で挽回できる部分もあると思います。バクーでは思っていたよりもマシンアドバンテージがなくて、むしろウイリアムズとハースのほうが速かったんですけど、シンガポールはアゼルバイジャンとはまた違うコースなので」


角田裕毅のバクーは早々に終わってしまった

 photo by BOOZY

 アゼルバイジャンもこれまで得意としてきたサーキットだったが、今年はウイリアムズがアップデートでマシンを大幅に改善してきたこともあって、週末を通して0.3秒以上の差が縮まらなかった。

 ウイリアムズは空力効率を大幅に向上させてきており、コーナーでしっかりとダウンフォースを確保しながら、ドラッグ(空気抵抗)は小さくてストレートも速い。だから空力効率が問われるモンツァやバクーでは、中団トップの速さを示したのだ。

「今はウイリアムズが中団トップのクルマです。彼らも中団トップのランキング6位争いに加わってきていますし、このままの調子でいくとポイント的にもけっこう危ない(逆転される可能性がある)んじゃないかと思います」

 だからこそRBもマシンのアップデートが急務だ。しかし、それはオースティンのアメリカGPを待たなければならない。

 今回は現状のマシンパッケージで、それでも十分に得意で戦えると見られるシンガポールだからこそ、しっかりとポイントを獲得しておかなければならない。

 灼熱と湿度、そして休む暇もなく連続するコーナー。シンガポールはシーズンのなかでも別格のタフさだと、多くのF1ドライバーたちが口を揃える。

 肉体改造で体力には自信のある角田にとっても、かなりタフなレースだという。

「この暑さと湿度は厳しいですし、コースが壁に覆われているので風も入ってこなくて、コース上にクルマからの熱と湿度が滞留するんです。いい空気が入ってこないですし、コース自体も(コーナーが多くて)忙しいです」

【荒れることも多いシンガポールGP】

 昨年のカタールGPでは、異常な暑さとタイヤ制限によるフルプッシュのレースとなったことで、ドライバーたちは限界ぎりぎりの戦いを強いられた。だが、それ以上のタフなレースがシンガポールだと言われる。

 どちらのほうがタフかと角田に聞くと、苦笑いしながら答えた。

「僕はまだシンガポールで1回もレースをフィニッシュしたことがないんでわからないです(笑)。今年はなんとか完走したいなと思っています」

 荒れることも多いシンガポールGPだけに、今年はしっかりとマシン性能をフルに引き出し、レースを走りきって、シンガポールGPでの自身初のポイントを獲得してもらおうではないか。そして、シーズン終盤戦に向けてランキング6位争いを再び、自分たちのほうへと引き戻してもらいたい。