熱狂の12日間がついに幕を閉じた。現地時間8日20時半から、「スタッド・ド・フランス」でパリ2024パラリンピックの閉会式が開催。雨が激しく降っていたが、会場はそれをはねのけるような熱気が充満した。改めてパリ大会の成功を感じさせるとともに、…

熱狂の12日間がついに幕を閉じた。現地時間8日20時半から、「スタッド・ド・フランス」でパリ2024パラリンピックの閉会式が開催。雨が激しく降っていたが、会場はそれをはねのけるような熱気が充満した。改めてパリ大会の成功を感じさせるとともに、2028年のロサンゼルスパラリンピックへの期待を高めた。

金メダリストが旗手の大役を務める

閉会式の前半では、パリ大会を振り返った。競技のハイライト映像で喜びや敗退の瞬間が次々と映し出されると、大会を通じてさまざまなドラマが生まれ、多くの人の心を揺さぶったことが改めて思い起こされる。音楽隊の演奏とともに、旗手たちが入場。開会式でも流れた『オー・シャンゼリゼ』が流れると、会場中が大合唱。ここでも、開会式で感じた期待と興奮がよみがえった。

閉会式の旗手は木村敬一(左)と和田なつきが務めたphoto by Hiroyuki Nakamura

会場が次第に熱気を帯びていくなか、日本の旗手、卓球の和田なつきと、水泳の木村敬一の金メダリストコンビが76番目に登場。和田が両手で旗を持ち、木村はその肩に左手をかけ、右手を大きく振る。どちらも笑顔が晴れやかで、どこか誇らしげだ。

フランス国旗カラーの演出もphoto by Hiroyuki Nakamura

和田は、「旗手に選んでいただいてとてもうれしいです。夢に見た金メダルを獲れて私は幸せです。次の目標を達成できるように、またコツコツと頑張りたい」。木村は、「このような大役を務めたこと、大変光栄に思います。今後もスポーツの持つ力を信じて、未来に向けて歩んでいきたい」と、日本代表選手団の代表として華やかな舞台に立つ喜びと、次のステップへの抱負を語った。

雨の閉会式に参加する選手スタッフら。日本代表選手団は金メダル14個を含む41個のメダルを獲得したphoto by Takamitsu Mifune

旗手の入場が終わると、パリ2024大会組織委員会のトニー・エスタンゲ会長と、国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドリュー・パーソンズ会長が、それぞれあいさつした。

「アスリートの皆さんが活躍するたびに、障がいに対する見方を変えた。インクルーシブな世界とはどんなものかを示した」(トニー・エスタンゲ)

「スポーツを通じ、チャンスさえ与えられれば、人は何ができるか見せてくれた。感謝と拍手の次は受け入れと行動だ。多様性は人々を分断するのではなく、結束させる。我々のインクルージョン革命は、変化を加速させる」(アンドリュー・パーソンズ)

大会の成功を喜び、インクルーシブ社会実現への期待と意欲を示した。

スピーチするアンドリュー・パーソンズ氏photo by Hiroyuki Nakamura
期待を高めたフラッグオーバーセレモニー

華やかな雰囲気のなかにも、アスリートたちの熱い戦いに心動かされた日々が終わってしまう一抹の寂しさが漂う。感傷的な気分を吹き飛ばしたのが、パラリンピック旗を次の開催都市へと渡す「フラッグハンドオーバーセレモニー」だ。

パラリンピック旗が引き継がれたphoto by Hiroyuki Nakamura

アメリカ国歌の一節が流れると、障がいのある8人のダンサーがブレイキンをパフォーマンス。次に、『パラリンピック賛歌』の演奏にあわせてパラリンピック旗が降ろされると、会場の中央に設けられた橋のようなステージの右側からエスタンゲ氏とパリのアンヌ・イダルゴ市長が、左側からは次の開催都市であるロサンゼルスのカレン・バス市長が登壇した。パーソンズ会長が待つ中央へと歩んでいくと、イダルゴ市長からパーソンズ会長へ、そしてパーソンズ会長からバス市長へとスリー・アギトスが描かれた旗が手渡された。

『カリフォルニア ドリーミング』をテーマとした映像では、ロサンゼルスの砂浜にあるスケートパークで、障がいのあるアーティストやスケートボーダー、アスリートたちが軽快なパフォーマンスを披露。音楽に合わせて、義足あるいは車いすでスケートパークを縦横無尽に疾走する姿に、会場中の目が釘づけに。おのずと次の大会への期待が高まる。

フランスのパラアスリートにより、ランタンの灯が消されたphoto by Hiroyuki Nakamura

会場が暗転すると、厳かな雰囲気のなか、フランスを代表するパラアスリートたちが聖火を灯したランタンを手に登場した。ステージ上で待つパラアスリートと合流すると、そっと息を吹きかけて聖火を消す。すると、12日間燃え続けたチュイルリー公園の聖火も消え、パリ大会の終わりを静かに告げた。

パリ大会は、選手やボランティアとともに、観客の存在がいかに大きなものかを改めて示した大会となった。選手は観客の声援や拍手に後押しされて力を発揮。大声援を受けながら、あるいは大切な人たちに見守られながら競技をすることの喜びを語る選手も多かった。

各会場では盛り上げ役にもなった大会マスコットのフリージュphoto by Takamitsu Mifune

また観客は、目の前で見るパラアスリートの渾身のパフォーマンスに、大いに心を動かされた。会場を埋め尽くした観客が熱狂する姿から、映像を通して観る人にもパラスポーツやパラアスリートのすばらしさが鮮明に伝わったはずだ。

スポーツやエンターテインメントが盛んなロサンゼルスでは、一体どんな大会になるのか。今から楽しみで仕方がない。

text by TEAM A

key visual by Takamitsu Mifune