6月9・10日、ボルダリングW杯第5戦が米国・ベイルで行われた。男子はチョン・ジョンウォンが今シーズン2度目の優勝を果たし、2位には楢崎明智、3位には緒方良行と日本の若手が躍進。女子では接戦を制したショウナ・コクシーが3勝目を手にし、2位…


 6月9・10日、ボルダリングW杯第5戦が米国・ベイルで行われた。男子はチョン・ジョンウォンが今シーズン2度目の優勝を果たし、2位には楢崎明智、3位には緒方良行と日本の若手が躍進。女子では接戦を制したショウナ・コクシーが3勝目を手にし、2位に野口啓代、3位に野中萌生と、第4戦・八王子大会に続いて日本勢が男女共に2位・3位に並ぶ結果となった。

 今シーズン好調を維持する日本勢は、米国・ベイルでもその勢いを世界に示した。特に男子予選では上位10人のうち9人が日本人という前代未聞の展開。決勝でも6人のうち4人を日本勢が占めた。中でもインパクトを与えたのは緒方だ。予選から準決勝まで取りこぼしなく、準決勝1位で決勝に進出。開幕戦での優勝以来、苦戦が続いていた藤井快も予選を全完登、準決勝は3完登で2位につけ開幕戦以来4大会ぶりに決勝へ。同じく予選を全完登した楢崎明智は、準決勝の第1、第2課題を一撃し自身初のW杯決勝に駒を進めた。対照的だったのは年間王者を目指す2名。1位を走る渡部桂太は苦しみながらも2完登で準決勝をギリギリの6位で通過し、楢崎智亜は他選手が苦しんだ最終課題を完登するもアテンプト差で9位に止まり、準決勝敗退となった。日本勢以外では八王子大会で優勝したアレクセイ・ルブツォフが3位、チョン・ジョンウォンが4位で決勝へ進出した。

 迎えた男子決勝。第1課題を6人全員が完登すると、勝負を分けたのは第2課題。渡部、楢崎が続けてボーナスに届かずフォールすると、3番手のチョンが3トライ目で完登。雄叫びをあげて会場を沸かせた。4番手のルブツォフはゴールに触れながらも掴み切れず、藤井は2アテンプトで完登。緒方は4トライ目でなんとかボーナスを掴むに止まる。第3課題で楢崎が3アテンプトの完登でプレッシャーをかけるが、チョンは一撃で攻略して頭一つ抜け出すことに成功。ルブツォフと緒方も粘りの完登で望みを繋いだ。そして最終課題、楢崎が2アテンプトの完登で1位に浮上する。しかしチョンは1トライ目でフォールするも、焦らずじっくりと時間を置いた2トライ目で全完登を達成して優勝を決めた。残りの2位、3位争いはルブツォフ、藤井が完登できずに終わると、緒方が一撃して5位からの逆転3位でフィニッシュ。楢崎が初の決勝で2位、緒方もW杯初の表彰台と若手が大躍進した。

 女子では日本勢のエントリー4人全員が予選を通過。上位4人が全完登というし烈な争いとなった準決勝は、予選1位の野中が4完登7アテンプトで2位、予選2位の野口は第1課題で苦戦するも第2課題以降は堅実なクライミングで5位につけて決勝に進出した。昨季女王ショウナ・コクシーは抜群の安定感をみせて1位で通過したが、八王子大会で優勝した絶好調のヤンヤ・ガンブレットがまさかの敗退という波乱が起こった。スロベニアの17歳を1アテンプト差の僅差で上回ったのは数々の実績を持つ地元の雄、アレックス・プッチョだった。日本の尾上彩は第2課題を完登したが、第3課題でゴールを掴むもわずかに時間が足りず11位。小武芽生は第2課題で7アテンプトと粘り、なんとか1完登を記録するも13位敗退となった。

 決勝は準決勝に続いてハイレベルなデッドヒートに。第1課題で1番手のプッチョが大声援をバックに一撃すると、後に誰も続くことができずアドバンテージをとる。第2課題では一転、プッチョがボーナスで終わると野口、野中、コクシーが完登し4人が1完登で並ぶ状況に。スタートのホールドからダブルダイノでボーナスが掴めるかがポイントとなった第3課題では、プッチョが6アテンプトを刻んだのに対し、コクシーは2アテンプトで完登。野口は3、野中は4アテンプトをかけ、今度はコクシーがわずかにアドバンテージを取る展開で最終第4課題へ。ここでプッチョが完登をみせるも3アテンプトで上位争いから大きく後退すると、続く野口が一撃でトップに浮上。野中はスタート直後のホールドでフィットできずにフォールし、2アテンプトで完登。野口に1アテンプトをつけられ暫定2位でコクシーの結果を待つことに。そのコクシーは笑顔を見せながら登場すると、落ち着いたクライミングで貫録の一撃。2アテンプト差で野口を振り切り、今シーズン3回目の表彰台トップを踏んだ。

左から野口、コクシー、野中

 女子は八王子大会に続いて、野口・野中の両エースが2、3位フィニッシュで並ぶ安定感を示す一方、男子は楢崎明智と緒方の若手コンビが初の表彰台に上がり、改めて日本男子のレベルの高さを見せた。W杯も残すところ2戦となり、年間ランキングの上位争いからも目が離せない。男子は相変わらずの混戦模様で、100ポイント差内に1~5位がひしめく。特に1位渡部が332ポイント、2位に浮上したチョンが326ポイントとその差はわずかに6となっている。第6戦のインド・ナビムンバイ大会は2週間後の6月24・25日。今大会で遅れをとった楢崎智亜の今シーズン1勝目、また復調の兆しを見せた藤井の追い上げにも期待したい。

<男子・決勝>

1位 チョン・ジョンウォン(韓国/21)4t9 4b8
2位 楢崎 明智(18)3t6 3b5
3位 緒方 良行(19)3t11 4b7
4位 アレクセイ・ルブツォフ(ロシア/28)2t5 3b8
5位 藤井 快(24)2t6 4b10
6位 渡部 桂太(23)1t3 1b3
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7位 堀 創(27)
9位 楢崎 智亜(20)
10位 杉本 怜(25)
15位 藤脇 祐二(21)
18位 原田 海(18)
21位 渡辺 海人(20)

<女子・決勝>

1位 ショウナ・コクシー(イギリス/24)3t4 4b5
2位 野口 啓代(28)3t6 4t6
3位 野中 生萌(20)3t7 4b7
4位 アレックス・プッチョ(米国/27)3t10 4b10
5位 カーチャ・カディッチ(スロベニア/21)1t3 2b4
6位 ペトラ・クリングラー(スイス/25)0t 1b2
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11位 尾上 彩(21)
13位 小武 芽生(20)

CREDITS

篠幸彦 /

写真

窪田美和子/アフロ