7月15、16日、クライミングと音楽が融合したコンペティション「ADIDAS ROCKSTARS TOKYO 2017」が東京のB-PUMP荻窪で開催された。第2回となる今大会はROCKSTARクラス(オープン)、BE A ROCKSTA…


 7月15、16日、クライミングと音楽が融合したコンペティション「ADIDAS ROCKSTARS TOKYO 2017」が東京のB-PUMP荻窪で開催された。第2回となる今大会はROCKSTARクラス(オープン)、BE A ROCKSTARクラス(アマチュア)に加えて、ROCKSTAR Jr.クラス(小学生対象)を新設。9月にドイツで開催される本戦への出場権をかけた熱い戦いが繰り広げられた。

 前日に予選が行われ迎えた16日、午前の部ではこどもたちを対象にした「YOUNG ATHLETES CHALLENGE」を開催。「こどもじゃない。挑戦者だ。」をコンセプトに、前半はアディダスが考案するレベルの高い動きに必要なリズムを養う「リズミックトレーニング」を体験。後半には安間佐千、野中生萌、藤井快によるボルダリングセッションが行われた。3グループに分かれて各選手のレッスンを受け、参加したこどもは「足の使い方のアドバイスをもらって、できない課題ができるようになった」と、トップ選手の的確なアドバイスでレベルアップを体感した様子だった。




 そしてメインとなるコンペティションは準決勝からスタート。ドイツ行きがかかるROCKSTARクラスには藤井、野中のほか、楢崎智亜や野口啓代、昨年優勝の緒方良行、原田海など、日本代表のトップ選手たちがずらりと顔を並べた。多くのクライマー、観客が詰めかけたなか、W杯と同様のベルトコンベア形式で彼らは次々とハイレベルなクライミングを披露していく。女子で1位通過したのは全4課題を一撃した同じく代表選手である加島智子。2、3位には野口、野中が、4~6位には2003年生まれの中学2年生、青柳未愛、柿崎未羽、工藤花の3人が入り、一回り以上年の離れた現代表と未来の代表候補6人が決勝にコマを進める形となった。男子では楢崎と原田が全完で決勝へ。山内誠、亀山凌平、緒方が続くと、リードW杯シャモニー大会から帰国したばかりの藤井も6位でファイナリストに滑り込んだ。

 このまま決勝へは向かわず、見せ場を作るのがADIDAS ROCKSTARS。インターナショナルに活躍するロックバンド「Survive Said The Prophet」が登場し、アコースティックライブを披露。渾身の楽曲がきたる決勝に向け会場を盛り上げていく。その後に登場したDJ RENもクライマーとのセッションタイムを演出し、クライミングと音楽の融合という名に相応しい舞台が展開されていった。





 迎えた決勝。ROCKSTAR Jr.クラスは小俣史温がただ一人の全完登でこのクラスの初代王者に輝くと、BE A ROCKSTARクラス男子では番匠大樹が、女子では中里渓夏が優勝。そして誰もが待ち望んだROCKSTARクラス。世界を知るセッターらによって仕掛けられた高難度課題に、ボルダリング強国でトップクラスの彼らであってもアテンプトが重なっていく。完登者が現れなかった最終第3課題は落とせなかったものの、昨年の本戦覇者・楢崎がさすがの登りで首位通過。それに続いたのが元BJC王者、山内誠。近年は岩場をメインに活動する強者はコンペへのブランクを感じさせない登りで楢崎と同じく2完登3アテンプトとし、3位の藤井をかわしてスーパーファイナルへと駒を進めた。女子では野中が終始安定感あるクライミングで貫録の全完登。第1、第3課題を完登した野口も2名しか許されない狭き門を突破し、最終ラウンドで日本を代表する女子2人の一騎打ちが実現することとなった。

集中力を高める野中

昨年のROCKSTARクラス覇者である緒方も驚異の保持力で観衆を沸かせた

スーパーファイナルに進出した2014年BJC王者・山内誠

 戦いのフィナーレは時間無制限、同じ課題を登り先にゴールした方が勝者というデュアル方式のスーパーファイナル。先に行われた女子ではファーストトライで2人がシンクロするようにフォールし、思わず笑い合う一幕からスタート。その後野口がTOPに手をかけるもつかみ切れずに再度フォールし、後れをとっていた野中もTOPにトライ。しかし、彼女も本戦への切符を手中に納めることができず、タイムトライアル要素を持つアディダス独自ルールがさらなる興奮を呼び起こす。結局、優勝を果たしたのは野口。3トライ目にしてドイツ行きのチケットを手に入れた。続いて楢崎と山内が登場。彼らもファーストトライで女子同様に揃ってフォールするも、2トライ目で先にスタートを切った楢崎がそのまま完登し決着がついた。

 優勝した野口は「ドイツ本戦でも生萌とスーパーファイナルを戦えると嬉しい」と語ると、昨年の本戦で優勝している楢崎は「2連覇を目指して頑張ります」と力強いコメントを残した。クライミングと音楽が見事に融合し、難関課題がクライマーたちを唸らせた今大会。9月15、16日、ドイツ・シュツットガルトで行われる本戦でも、野口、楢崎らの雄姿に期待したい。







<リザルト・ファイナル>

ROCKSTAR Jr.クラス
1位:小俣 史温 3t8 3b3
2位:安楽 宙斗 2t3 3b3
3位:小池 はな 2t3 3b4
4位:工藤 空  2t4 3b3
5位:藏敷 慎人 1t1 3b4
6位:庄子 直宏 0t 2b2

BE A ROCKSTARクラス 女子
1位:中里 渓夏  2t2 3b4
2位:石井 穂   2t2 3b6
3位:本多 由梨奈 1t2 3b6
4位:鈴木 優喜  1t2 3b7
5位:田端 真依  1t2 2b4
6位:吹野 麻耶  1t3 3b8

BE A ROCKSTARクラス 男子
1位:番匠 大樹  2t6 3b7
2位:渡辺 颯海  1t1 3b9
3位:伊藤 寛太朗 1t1 2b2
4位:斉藤 正樹  1t3 3b9
5位:島根 正芳  1t4 3b10
6位:永坂 澪弥  1t8 3b10

ROCKSTARクラス 女子
1位:野中 生萌 3t7 3b6
2位:野口 啓代 2t5 2b5(スーパーファイナル優勝)
―――――
3位:青栁 未愛 1t5 2b5
4位:工藤 花  1t5 1b2
5位:加島 智子 1t5 1b3
6位:柿崎 未羽 0t 0b

ROCKSTARクラス 男子
1位:楢崎 智亜 2t3 2b2(スーパーファイナル優勝)
2位:山内 誠  2t3 2b3
―――――
3位:藤井 快  2t7 2b7
4位:緒方 良行 2t9 2b5
5位:原田 海  1t2 3b10
6位:亀山 凌平 0t 2b4

CREDITS

取材・文

篠幸彦 /

写真

窪田亮