カナダ・サンダーベイで開催中のU-18ワールドカップに挑んでいる高校日本代表は、メキシコ、アメリカ、キューバという…

 カナダ・サンダーベイで開催中のU-18ワールドカップに挑んでいる高校日本代表は、メキシコ、アメリカ、キューバという難敵ばかりと対戦した1次ラウンド序盤3戦を2勝1敗で乗り切った。12カ国が2組(A・B)に分かれ、それぞれの上位3カ国が進むスーパーラウンドに向け、グループBの日本は一歩前進といったところだろう。

 7対2で勝利したキューバ戦後、「調子の悪いときの自分が全部出ている。わけがわからなくなっている」と語ったのは清宮幸太郎(早稲田実業)だが、不調の主将に代わって、高校日本代表を牽引しているのが大阪桐蔭・藤原恭大と、報徳学園・小園海斗の2年生コンビだ。



日本代表の不動の1番としてチームを牽引する藤原恭大

 小枝守監督が打線を頻繁に入れ替えるなか、大阪桐蔭同様、不動の1番・ライトとして打席に立つ藤原は、ここまでの3試合すべて、初回の第1打席にヒットを放ち、メキシコとの初戦では一死満塁から走者一掃の二塁打を放つなど、バッティングで勝負強さを発揮している。

 また小園はメキシコ戦で3安打、アメリカ戦でも1安打、打順が2番に上がったキューバ戦では3安打(2打点)。捕球から素早く送球する安定したショートの守備もあり、大車輪の活躍を見せる。小園は言う。

「アイツ(藤原)は一番のライバル。代表のベンチでも、『アイツが打った』『オレが打った』と言い合うことで、お互いに競争心が生まれるし、刺激になる。それが代表の打線のつながりにもなると思っています」

 実はこのふたり、中学時代は同じ枚方ボーイズで、やはり1・2番コンビを組んでいた仲だ。小枝監督は、チーム発足当初から「上位と下位でかき回して、中軸で返す野球」を標榜してきたが、わずか2安打に終わったアメリカ戦(0対4)で、その2安打を放った2年生コンビを、キューバ戦では上位に並べることで、より効率的かつ効果的に3番の安田尚憲(履正社)、そして4番の清宮にチャンスで回せると考えたのだろう。その采配が、見事的中したのがキューバ戦だった。

 長くPL学園の廃部問題を取材してきた筆者にとって、兄(海成・大阪経済法科大学野球部1年)がPL学園の最後の部員だった藤原は、大阪桐蔭の入学直後から注目し、強い思い入れを持って成長を見守ってきた選手だ。

 強豪校で1年夏からベンチ入りした藤原は常々、「第1打席を大事にしています」と口にしてきた。

「初回に自分が塁に出れば、いきなり足でかき回すことができますし、それが得点につなげられれば、相手にはプレッシャーを与えることになりますから」

 50mを5秒7で走り、センバツの決勝・履正社戦で2本塁打を放ったように一発の魅力もある藤原は、ソフトバンクの柳田悠岐に憧れているという。

 大阪桐蔭の先輩で、高校日本代表でもエースを務める徳山壮磨は、大舞台でも物怖じしない後輩をこういじった。

「アイツは”アホキャラ”。代表でもそれがもうばれていて、みんなから可愛がられています(笑)。だけど試合になったら頼りになる男です」

 藤原は言う。

「3番、4番、5番にすごいバッターがいるんで、僕は気楽にやっています(笑)」

 1年生から大きな注目を集め、甲子園や日本代表で活躍した清宮や、大阪桐蔭の最大のライバル・履正社の主砲である安田との邂逅(かいこう)は、2年生ながらプロを見据える藤原にはいい刺激となっているのではないだろうか。

「やっぱり清宮さんは、存在感が頭ひとつ抜けている感じです。代表に合流して、初めてお話ししましたが、いつも『力を抜け』と言われています。清宮さんが打席に入ったときの力の抜き方を真似しているんですけど、それがなかなか難しくて……。どちらかというと、自分は清宮さんよりも、安田さんタイプの打者だと思う。清宮さんはバットをしならせて、ボールをバットに乗せて運ぶじゃないですか。安田さんは、パンチショットのような形で打つ。参考にしています」

 センバツ決勝での2発をライトスタンドに込んだように、藤原はどちらかというとプルヒッターのイメージがあったが、高校日本代表のここまでの3戦で放った4安打はすべてが逆方向(三塁内野安打含む)だ。

「意識しているわけじゃないんですけど、逆方向の打球がヒットになるのは、自分の調子がいい証拠だと思います。海外の投手は、日本の投手と違って、いつ投げてくるか分からないので、タイミングがとりにくい。タイミングが遅れて差し込まれないようにだけ意識しています」

 大阪桐蔭の西谷浩一監督は、藤原に限っては「ノーサイン」で盗塁することを許している。送りバントのサインを出すこともない。藤原自身も、セーフティバントを狙うこともせず、積極的にファーストストライクからバットを強く振っていく。

 しかし、そういう大阪桐蔭での藤原と高校日本代表での藤原は明らかに印象が違う。キューバ戦での第1打席では、日本選手の全員が初見となる相手投手に球数を放らせ、塁に出てもむやみには走らない(といっても、キューバ戦の4回に盗塁死あり)。いわゆる典型的な1番打者に徹している。

「金属バットやったら、どこでも打てるというか、ホームランを打てるかもしれないですけど、木のバットだったらまだ打てないんで。しっかりミートすることを意識しています。小園とは、『2年生のオレらが頑張って、試合を作っていこう』と話しています。日本の力になって、世界一に貢献したい」

 大阪桐蔭の韋駄天が、日本の、そして世界の韋駄天となれば、高校日本代表として初めてのビッグタイトルにグッと近づく。