「スポーツには人と人をつなぐ力がある」。 植松剛史氏が理事長を務める北摂ベースボールアカデミーが2024年10月、「豊中スポーツまつり」を開催する。 北摂ベースボールアカデミーは、野球をはじめとしたスポーツ文化の発展と成熟に寄与すること…

「スポーツには人と人をつなぐ力がある」。

植松剛史氏が理事長を務める北摂ベースボールアカデミーが2024年10月、「豊中スポーツまつり」を開催する。

北摂ベースボールアカデミーは、野球をはじめとしたスポーツ文化の発展と成熟に寄与することを目的に2019年に設立され、大阪府豊中市を中心に活動するNPO法人だ。理事長の植松氏は、筑波大学大学院・体育研究科を卒業。千葉県、大阪府で小学校教諭を務めた後、NPO法人を立ち上げた

スポチュニティコラムでは過去数回にわたり、北摂ベースボールアカデミーの取り組みを取り上げてきた。

野球をする、見る、楽しむ人を増やすために、ユニークな取り組みを続けるNPO法人「北摂ベースボールアカデミー」

肩肘張らず、気楽に「野球体験」、北摂ベースボールアカデミー「大人の野球イベント」

初心者向けの子ども野球教室や女性向けの野球教室など、野球教室に軸足を置いて活動を行ってきたが、2023年から新たな取り組みを展開している。

地元の野球場をもっと身近なものに

北摂ベースボールアカデミーは、2023年12月3日、17日の2回にわたって、豊中市新千里にて「新千里野球まつり」を主催した。立ち上げ当初からこのような野球イベント事業の構想は頭の中にあったというが、設立5年目で初めての大きなイベント開催となった。

 

NPO法人北摂ベースボールアカデミーの理事長を務める植松剛史氏

イベント開催の契機となったのは、地域の住民に地元の野球場の存在をあまり認知されていないということにあった。2019年から豊中市新千里北町の野球場で野球教室を行ってきたが、活動を行う中で野球場の近隣に住んでいるのにも関わらず、野球場があることを知らない人に多く出会ってきたという。

「野球をしている人しか野球場を使っておらず、公共施設としてもったいないと感じた」。

北摂ベースボールアカデミーでは地域住民に野球場を有効活用してもらうために、毎週水曜日に野球場を団体予約し、野球などをして遊びたい子どもたちに開放する活動を行ってきた。そして、野球場をもっと色々な人が集まる場所にすべく、スポーツの価値を上手く使って、お祭りという形に表現したのが、2023年12月に開催した「新千里野球まつり」だった。

大盛況だった新千里野球まつり

「新千里野球まつり」では豊中市新千里の東町、西町、北町、南町でチームを分け、町別対抗の試合を行った。野球をプレーする人だけでなく、野球を観る人も楽しめるのが、このイベントの特長である。野球を観るという関わり方であれば、より多くの人が野球場に足を運び、スポーツに関わる機会を提供できると考えたのだ。

普段の生活でプロ野球の試合を観ないという人でも、自分の町のチームを応援するというのは、野球を観る動機づけになる。試合では場内アナウンスで実況を付けたり、キッチンカーを用意し、食事を提供するなど、野球を観る人を楽しませる工夫を施した。

観客も楽しめるように球場周辺にキッチンカーを出した

また、野球以外のことに関心を持つ人も楽しめるように、野球場周辺にはストリートサッカーやなわとびなどのスポーツ体験コーナーや縁日を用意。スポーツをきっかけに地域の住民が集まり、つながる場所を創出した。

なわとびの体験ブース

北千里野球まつりの2日目には阪神タイガースで活躍した鶴直人選手が参加するなど、大きな盛り上がりを見せ、2日間で合計1300人以上の方が来場した。参加者の満足度も高く、中には直接お礼を言いにこられる方もいたという。

実際にイベントに参加した子供たちが後日、北摂ベースボールアカデミーの野球教室に参加したり、参加者同士が交流したことで、後にビジネスの話につながったりするなど、新たなコミュニケーションが生まれる事例もあった。初めての開催となったが、植松氏自身も手応えを感じ、スポーツには人と人をつなぐ力があることを再認識することとなった。

地域住民の共通認識となるような「スポーツまつり」に

「スポーツまつりをきっかけに、年に1回でも野球場に足を運ぶ機会を作り、地元に野球場があって良かったと思える取り組みを続けていきたい」とスポーツイベント事業を継続していくことを決めた。

そして、「新千里野球まつり」の第2回として、2024年10月に「豊中スポーツまつり」を開催することが決定した。今回は豊中市のクラブチーム対抗のソフトボール大会が予定されている。野球からソフトボールに種目が変わるが、前回同様に場内アナウンスによる試合実況、キッチンカーなど観客も楽しめるコンテンツが用意されている。

前回から大きく変わるのが、体験ブースの拡充だ。今年はなわとびなどのスポーツ体験に加え、ドローン体験や理科の実験など、スポーツ以外の体験ブースが用意されている。理科の実験は豊中市で理科の実験教室を行う方に協力を依頼し、ロケット作り体験を行う予定だ。また、豊中市に拠点を置く企業のPRブースも設置される。前回以上に地元企業と地域住民をつなげる場を増やした。今年度は1日1000人以上の来場者を目標に掲げる。

新千里野球まつりでは多くの地域住民が交流した

「将来的には豊中スポーツまつりを地域住民の共通認識にしたい。『毎年この時期になれば、スポーツまつりがある!』と楽しみにしてもらえるような市民の定番となるイベントを目指しています」と植松氏は今後の展望について語る。

「アメリカでは野球の独立リーグが野球だけを楽しむ場所というより、その場を楽しむ社交場的な側面を持っている。豊中スポーツまつりも人が集まり、コミュニケーションが生まれる場所を作っていきたい」。

豊中市はベッドタウンとして知られ、大阪府内でも人口が多い地区である。その一方、地域住民が集まるコミュニティが少ない印象があるという。豊中市には多くの人が住み、多くの企業が地元を拠点に活動を行っている。スポーツまつりをきっかけに地域住民や地元の企業など、様々なコミュニケーションが生まれる場所を作っていきたいというのが、植松氏の願いだ。

北摂ベースボールアカデミーの地域住民をつなぐ取り組みに今後も注目だ。