(12日、第106回全国高校野球選手権大会2回戦 福井・北陸1―7東東京・関東第一) 関東第一のアルプススタンドにはこの試合、好リリーフで試合の流れを変えたエース坂井遼(はる)(3年)の母、一恵さん(43)の姿があった。 母子家庭で、2人暮…

(12日、第106回全国高校野球選手権大会2回戦 福井・北陸1―7東東京・関東第一)

 関東第一のアルプススタンドにはこの試合、好リリーフで試合の流れを変えたエース坂井遼(はる)(3年)の母、一恵さん(43)の姿があった。

 母子家庭で、2人暮らしだった。「初めての子で、遼に教わりながらだった」と振り返る。坂井は野球に夢中で、「野球の監督さんたちが父でした」。

 幼少期、坂井は一恵さんに反発することもあった。でも、手を上げたりはしない。「体をくっつける相撲で解決した」と笑う。だが、ある日、相撲中に両手で抱えられ、そっと下ろされた。それから、坂井は一恵さんに反抗しなくなったという。

 「寮生活で成長したい」と、関東第一に入った。連絡は月に1~2回程度だったが、「寂しいよりも本人の充実している様子がうれしかった。洗濯も自分でしているんだなって」。

 この日の北陸戦、四回から救援し、6回3安打無失点に抑え、勝利をたぐり寄せた。一恵さんは「本当に普通の子が、普通にやっているだけなんです」と話す。だから、「遼が控え選手でも、スタンドで応援する側に回っても、『今の遼』を応援すると、入学時から決めていました」。

 将来の夢は「プロ野球選手と、母に恩返し」。坂井は事前に取材にそう答えていた。一恵さんはそれを知ると目を丸くして、「うれしい」と笑った。(中村英一郎)