金メダルを手にした瞬間に涙したリン・ユーチン。(C)Getty Images こみ上げる涙は抑えきれなかった。 現地時間8月10日に行われたパリ五輪の女子ボクシング57キロ級決勝で、リン・ユーチン(台湾)がユリア・シェレメタ(ポーラ…
金メダルを手にした瞬間に涙したリン・ユーチン。(C)Getty Images
こみ上げる涙は抑えきれなかった。
現地時間8月10日に行われたパリ五輪の女子ボクシング57キロ級決勝で、リン・ユーチン(台湾)がユリア・シェレメタ(ポーランド)に5-0の判定で完勝。見事に悲願だった金メダルを獲得した。
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決して楽な道のりではなかった。リン・ユーチンは66キロ級で金メダルに輝いたイマネ・ケリフ(アルジェリア)とともに、昨年に国際ボクシング協会(IBA)が主催する世界選手権の検査で「XY」染色体を持つと証明され、女子選手としての出場権を剥奪。このパリ五輪は国際オリンピック委員会(IOC)が「女性として生まれた2人のボクサーがいる。何年もの間、女性として出場してきた」と出場を認可するも、二人の参戦を巡って世界的論争が起きていた。
東京五輪に出場していたリン・ユーチンも世間の誹謗中傷の的となった。それでも彼女はリング上のパフォーマンスに集中し続け、あっという間に決勝まで勝ち進んだ。
迎えた決勝でリン・ユーチンはリーチ差を活かした得意のアウトボクシングで、着実にポイントを奪って優勢に試合を展開。相手に付け入る隙を与えずにフルマークでの快勝を収めた。目を閉じ、判定結果を祈るように待った。そして勝ち名のりを聞いた瞬間に思わず雄叫びを上げた。普段はクレバーな彼女が感情を爆発させた。
試合後の表彰式で黄金に輝くメダルを手にした際には、思わず涙を流した28歳。セレモニー後に母国メディア『Focus』の取材に応じた彼女は感極まった理由について「本当に多くの台湾人が私を支えてくれた。あの瞬間、ボクシングを始めた時から今に至るまでの色んな苦労が一気によみがえってきたんです。仲間や国のために、このメダルを獲得できたことはとても大きな意味があり、涙が出ました」と明かした。
世間からの批判については「もちろん、私に関する騒ぎやニュースはコーチを通じて情報だけ聞いていましたけど、あまり気にしていなかった」と語ったリン・ユーチンは、「私はIOCからオリンピックに出場するよう招待されたんです」と強調。そして、こう続けている。
「トップアスリートとして、試合に集中し続けることが極めて重要だったんです。対戦相手が誰なのか、そして次の試合に向けてどのように準備すればよいのか。それを考えるだけで私は精一杯でした」
世間の喧騒を最後まで意に介さなかった。そのメンタリティーこそ、彼女が悲願の金メダルを手にできた要因かもしれない。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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