セーヌ川で“強行開催”されたトライアスロン。(C)Getty Images 水質汚染が問題視されているセーヌ川では、今夏のパリ五輪でトライアスロンとープンウォーター(10キロレース)の2競技が行われた。【関連記事】「日本人の組織力は無敵だ」…
セーヌ川で“強行開催”されたトライアスロン。(C)Getty Images
水質汚染が問題視されているセーヌ川では、今夏のパリ五輪でトライアスロンとープンウォーター(10キロレース)の2競技が行われた。
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いずれの競技も大会組織委員会が水質の基準値を「下回った」とゴーサインを出しての実施だった。しかし、大腸菌などの細菌濃度が依然として高いと報じられ、トライアスロンやオープンウォーターの公式練習が中止となるなど、出場予定のアスリートへの配慮に欠けた「強行開催」という感は否めず……。各国メディアや識者の間では、運営方針が大きな波紋を呼んだ。
もっとも、パリの象徴するセーヌ川で約100年間も禁止されてきた遊泳を成功させることは、もはや国家プロジェクトでもある。事実、フランス政府は水質改善のために総額14億ユーロ(約2400億円)という莫大な予算をつぎ込んでいる。国際的な影響力を考えても、「五輪で競技を開けませんでした」と失敗するワケになどいかないのである。
ゆえに関係者の言葉からは何としても成功させるという強い意志が滲み出る。パリ市の副市長を務めるピエール・ラバダン氏は、米スポーツ専門局『ESPN』で「あらゆる批判は必ずしも建設的ではなかった」と主張。そして、酷評が相次いだ強行開催について、こう豪語する。
「私たちが正しかったのか? そして競技を行う価値があったのか? あったに決まっている。なぜなら、アスリートがセーヌ川で泳ぎ、そして将来的にパリ市民も泳げるようになることは、セーヌ川にとって良いことだからだ。とにかくやる価値はあった」
一方で、泳ぐしかなかった選手たちからは“本音”が漏れる。男子トライアスロンのオーストリア代表のフェリックス・オーベックは、『ESPN』で「もしも、『全く問題はないし、不安もない』なんて言える選手がいるなら、それはたぶん嘘だ。不安だった。ただ、安全が確認されたときだけ川に入れると言うから、組織を信頼するしかない。でも、誰も病気になりたくないから心配なんだ」と語った。
また、ベルギーの男子トライアスロンのマルテン・ヴァン・リールは、国際トライアスロン連盟のInstagramで「選手の健康が最優先なのであれば、今大会はとっくの昔に別の場所に移されていたはずだ。結局のところ、僕らは操り人形に過ぎない」と指摘。より強い言葉で大会委員会の決定を断じた。
これだけ現場からは不安と反発を招いた、汚染不安の拭えぬセーヌ川での競技開催。これが国内はもちろん国際的にも好影響を及ぼすアピールになったのかは不透明だ。しかし、あくまで成功を謳うラバダン氏は、こう結論付けている。
「今大会のレガシーは、将来的に他の多くの都市に刺激を与えるはずだ。少なくとも私たちにとって、より良い水質を取り戻すことができたのは、想像しうる最大の遺産だ」
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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