約2週間の中断期間に入っていたJ1が8月7日に再開。24試合終了時点で3位につけていた鹿島アントラーズは降格圏に沈むサガン鳥栖をホームに迎えた。  7月に垣田裕暉(柏)、松村優太(東京V)、土居聖真(山形)の3人が移籍し、鈴木優磨に続く得…

 約2週間の中断期間に入っていたJ1が8月7日に再開。24試合終了時点で3位につけていた鹿島アントラーズは降格圏に沈むサガン鳥栖をホームに迎えた。

 7月に垣田裕暉(柏)、松村優太(東京V)、土居聖真(山形)の3人が移籍し、鈴木優磨に続く得点源のチャヴリッチが長期離脱。知念慶も出場停止と、戦力的な手薄感が不安視された鹿島。それでも「この1週間で守備のスライドのところは(ランコ・ポポヴィッチ)監督から口酸っぱく言われた。スライドをマメにやって数的優位を作ることはしっかり練習した」と右サイドバック(SB)の濃野公人が話すように、中断前の総失点30という守備の改善を図り、重要な一戦に挑んだ。

 鳥栖がボールを大事につないでくるチームというのを認識したうえで、相手に持たせながらも締めるところは締めるという戦い方を選択した鹿島。今季11ゴールのマルセロ・ヒアンには植田直通関川郁万がガッチリとマークに行き、打開力のある横山歩夢には濃野と三竿健斗、あるいは師岡柊生が人数をかけて止めるという形が徹底されていた。

 守りでリズムをつかむ中、彼らは前半18分に先制点を奪う。関川のサイドチェンジに濃野が反応。師岡とワンツーを仕掛けたが、相手に引っかけられ、失いかけた。そこで柴崎岳が力強くボール奪取。これを濃野がペナルティエリア外から決め切り、チーム全体に勢いが生まれたのだ。

■際立った得点力

「岳君が球際で勝って、僕のところにボールをこぼしてくれたのが一番大きかった。あとは自分の思い切りの良さが出たゴールだったかなと。(鈴木)優磨君が動き出しているのも見えたけど、クロスを上げるよりシュートを振った方が可能性があると思った。自分としても1本目だったんで、思い切り振り抜こうという気持ちを出せてよかったです」と今季7ゴール目を挙げた濃野は笑顔を見せた。

 濃野の目覚ましい働きはこの一撃だけではなかった。23分に再び関川のロングフィードに反応してゴール前へ突き進み、後半に仲間隼斗の2点目が入った後には、三竿の浮き球のボールに名古新太郎が反応し、最終的に濃野が逆サイドに入って惜しいシュートを放つという決定機も作った。

 もともと関西学院大学の途中までFWだったとはいえ、ここまで際立った得点力を持つ右SBは滅多にいない。濃野自身は鳥栖U-15出身で、ユースに昇格できずに大津高校に進んだ経緯もあるため、「ゴールを奪って成長を示したい」という思いは強かったようだが、それを具現化してしまうところは見事だ。

「シンプルに新人だろうがベテランだろうが、SBで7点取るっていうのはなかなかできないこと」と7月に古巣復帰した三竿も感心していた。「彼が思い切り上がれるように、自分は横のサポートだったり、背中をカバーすることを意識していて、今日も守備負担を減らせるように『カットインのところは俺が狙うからタテだけやらせるな』と伝えました」と彼は年長者らしいサポートもしており、鹿島全体で鈴木優磨に次ぐ得点源に上り詰めた濃野にゴールを取らせる体制が確立されつつあるようだ。

■生かせた教訓

 それに加えて終盤にはビルドアップや守備で貢献していた安西幸輝も3点目をゲット。チャヴリッチ不在の中、複数プレーヤーが点を取って勝ち点3をゲットし、2位に浮上した鹿島。首位・町田セルビアがセレッソ大阪と0-0で引き分けたため、勝ち点差も再び3に縮まった。5~6月にも一気に首位浮上できるチャンスがありながら、自らそれをフイにしてきただけに、今回は絶対にモノにしなければいけない。

「6月の代表の中断後にかなり大敗を喫してしまった部分もあったので、今回はその教訓を生かせたと思いますし、ここから勝ち続けていかないといけない」と植田も語気を強めたが、本当にトップに立てるかどうかは11日のジュビロ磐田戦、17日の浦和レッズ戦と続く8月の戦いぶりにかかっているといっても過言ではなさそうだ。

(取材・文/元川悦子)

(後編へ続く)

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