7月某日、新宿区内で「T.LEAGUE×EPS 卓球でつながるコミュニティイベント」が開催された。 「静岡ジェード」の森薗政崇・監督兼選手と「トップおとめピンポンズ名古屋」安藤みなみ選手がゲストとして登場し、地元の小学生たちの交流を楽しむ…

7月某日、新宿区内で「T.LEAGUE×EPS 卓球でつながるコミュニティイベント」が開催された。

「静岡ジェード」の森薗政崇・監督兼選手と「トップおとめピンポンズ名古屋」安藤みなみ選手がゲストとして登場し、地元の小学生たちの交流を楽しむ時間となった。

(写真 / 文:白石怜平 以降敬称略)

Tリーグと企業がリンクしたイベントに

この日は臨床開発に関わる事業を展開するEPSホールディングス株式会社の本社内にある「筑土テラス」で行われた。

同社は2018年から21年まで、オフィシャルパートナーとしてリーグの支援を行ったのちに、22年からは協賛型の「ウェルネスパートナー」としての関係を築いている。

今回のイベントは、ウェルネスパートナーとしての取り組みの一環として開催された。

同社広報の神園氏は本イベントの開催経緯を明かしてくれた。

「弊社は健康産業の発展に貢献することを理念に掲げています。スポーツの中でも特に卓球は、生涯スポーツとして老若男女で楽しめるスポーツであり、Tリーグの目指す『地域の活性化および国民の健康寿命延伸に貢献する』ことにリンクしてやっていこうと始まりました」

森薗政崇・監督兼選手と安藤みなみ選手

イベントは昨年に続き2回目の開催。昨年は本社のある神楽坂エリアの方々を対象としてスタートし、今年はさらに詳細な意義を持たせたものとなった。

「本社のあるエリアは小学校が多いのもあり、将来を担う子どもたちのために感動を与えたいと考えました。

今回は近隣の小学校に通う卓球ファンの児童や、神楽坂地域で活動している卓球クラブの生徒を対象にしまして、一流選手との触れ合いを通じて喜びや感動を味わい、夢と学びを提供したいという思いで開催しました」

現役選手と交流できるまたとない機会になった

一流選手よる解説と実演に子どもたちも驚きの様子

この日は地元の小学校や卓球教室に通う親子約60人が集まった。2023-2024シーズン前期(2023年9月〜11月)のMVPを獲得した2人。

日本を代表する現役選手と直接交流できる特別な機会となった。イベントが開始し、登場すると拍手と共に2人とのハイタッチから始まった。

冒頭に挨拶する両選手

ウォーミングアップで2人でラリーを行うと、その素早さと正確さに子どもたちがすぐさま目を奪われていた。2人の迫力が伝わったのか、ピンポン球とラケットがぶつかる音が会場を包んだ。

司会から今何割の力でやっていたかを問われると森薗は「まだ2割」と答える一方で、安藤は「7割ほどです」と答える。そこからさらに距離を取りギアを上げるとさらに激しい音が響きわたった。周りから「おぉ」とどよめきが起こった。

ウォーミングアップながらも真剣さが伝わってきた

ここで森薗はラケットの面ごとに打つ際の球の違いを解説した。

「ラケットはツルツルの面の裏ラバーと、安藤選手が持っている黒のつぶつぶの(表)ラバーで打つと”いやらしいボール”が行きます(笑)。

と言うのも、今安藤選手のボールは下回転がかかっているので、つぶつぶの面で打ったいやらしいボールを打てます。なので僕は下から突き上げるように打っています」

下から突き上げる打ち方を見せた

さらに司会者が安藤に「下回転で森薗選手を攻めてみてください」とリクエスト。要望通りに安藤が打つと、森薗の力強い返しがネットに度々当たった。

子どもたちも前後そして横からの視点で、回転の違いをまず目で体験した。森薗は下回転の球を打つテクニックとして、「ボールが来るのが遅めなのでしゃがみながら打ちます」と説いた。

下回転の球の返しも実演した

その後安藤が普段行っているという練習を披露。フォアハンド2本・バックハンド2本ずつ交互に打つ練習を見せた。スピーディーな動きに再び驚きと拍手が起き、子どもたちの目が点になるかのようなリアクションだった。

お互いのパフォーマンスの披露の際は、安藤は森薗から強烈なスマッシュをブロックし続け青森山田中学・高校の先輩である森薗を封じる。

さらに変化に飛んだ球や強い球で翻弄し、先輩もタジタジの様子だった。

安藤の正確な返しに森薗も苦笑いを見せる

イベントで大切にした”体験”

次にサービスとレシーブ。安藤から解説が行われた。

「私はフォアハンド側からサーブを出します。なぜかと言いますと、回転を相手に分かりにくくすることも大事ですが、私は回転よりもコースを分かりづらく出すことやサーブの軌道を意識しているからです」

実際に安藤のサーブを受けると、正確にコントロールされた打球に「おぉ」という声が上がった。

出し方のコツについて問われると以下のように解説した。

「(打球の距離が)短いサーブを出す感じで長いサーブを出すようにしています。なので体の向きを短いサーブと同じにして打ちます」

安藤からサーブの実演を見せる(提供:EPSホールディングス株式会社)

森薗は、「いろんなところに曲げています」と回転のバリエーションを多くしているという。たくさんの子たちに体験してもらえるように多くのサーブを打ち込んだ森薗。

子どもたちも一流選手のサーブをしっかり返し、拍手が沸き起こった。ここでみんなでサーブ練習へと移る。ここで森薗がテクニックを伝授した。

「卓球で難しいのは回転をかけることです。ボールの真下をきれいに薄く拾うイメージです。人差し指に力を入れてボールを切ることです」

続いて森薗も披露した

サーブの次は3球目攻撃。強く打つためのコツをそれぞれ明かしてくれた。

「スマッシュすることが多いので、すごく低いボールでない限りはスマッシュしていて、横に引っ張るような感覚でやっています。

バックハンドはそのまま打つと安定しないので、回転をかける感じで打っています」と安藤は説明。

スマッシュのコツは”横に引っ張る感覚”だという

森薗はまず「一番大事なのは気持ち」と語り、こう続けた。

「僕も最初から打てたわけじゃないです。毎日強く打とうと思って練習すると強くなります。一番みんなが失敗しがちなのはサーブを打つと後ろに下がってしまって体の前に受けること。そうするとコントロールできないです。

サーブをしたら前に来ます。ボールと体の距離で近いところで打つことを心がけてください!」

気持ちを込めてボールを返した

このイベントでは触れ合いを大事にしている通り、体験する機会を多く設けた。

両選手も「やってみましょう!」と促し、スマッシュを受けてみた。逆に子どもたちも3球目攻撃を体験し、反応の良さを見せると会場はさらに盛り上がりを見せた。

特に安藤は”アンパンチ”と称される強烈なスマッシュが得意の一つ。司会からポイントを問われると、

「ラケットを引かずバックスイングなしで前で捉えて力を加えます」とシンプルに説明した。

子どもたちも実際に選手の打つ球を体験した

後半は2人の”真剣勝負”

後半では、”MVP同士”の直接対決が実現。すでにウォーミングアップで準備はできている二人がここで真剣勝負を繰り広げた。

子どもたちがバルーンで両選手を応援すると力になったのか、両選手はみるみる表情が引き締まっていく。

シーズンさながらの全力プレーを見せた

サーブや3球攻撃で既に力で押していた安藤がここでも森薗に真っ向から向かっていき、森薗も負けじと打ち返した。

そんな緊張感と得点を決めた時の歓声が入り混じった試合は安藤に軍配。

安藤も着々と点を重ねた

「まだ100%の力を全然出してないです(笑)」と先輩を相手に余裕の表情を見せた。

森薗は爽やかな表情で「いやぁ〜負けてしまいました(笑)。アリーナではこういう熱い試合がたくさん観れるのでぜひ会場に足を運んでください!」と呼びかけた。

応援がさらに活気をつくった(提供:EPSホールディングス株式会社)

最後は質問コーナー。1つずつ質問が寄せられた。

まずは森薗へ。「ダブルスを組む張本智和選手と同じ熱さで盛り上がれるのは森薗選手だけだと思いますが、どのように感じていますか?」と言う質問。

「今は感情を表に出す・出さない、さまざまなスタイルが確立されています。僕は熱く戦うのが好きでテンションが合うのでいつも組むのが楽しいです」

熱い気持ちを常に表現していると語る

また安藤へは「サーブの格好良さに魅了されていますが、あの速さの秘訣は?」という問いに、

「普段の練習の中で速い練習をたくさんするので。ただ、逆に遅いボールが苦手で練習中です(笑)」と答えた。

スピーディーなプレーは日々の練習の成果であると答えた

その後フォトセッションとサイン会でイベントは締められた。

イベントを終えて、Tリーグの阿部氏は、

「Tリーグとして”卓球を通じて人生を豊かにする”という経営理念のもとで、今回のイベントでも卓球を通じて地域の方が繋がり、より素晴らしい関係を構築していくことに期待します。

そしてウェルネスパートナーでありますEPSグループと一緒に、地域コミュニティ活性化や貢献となることを望んでいます」

と今後の展望について述べた。卓球を通じた地域活性化と健康増進に寄与できるイベントとして今後も継続されていく。

(おわり)