シンプルなデザインとなっている選手村の一室。ここにエアコンが導入されなかったことで反発を招いている。(C)Getty Images いよいよ本格的な開幕が迫るパリ五輪。「花の都」で100年ぶりに開催される一大スポーツイベントにおいて…

シンプルなデザインとなっている選手村の一室。ここにエアコンが導入されなかったことで反発を招いている。(C)Getty Images

 いよいよ本格的な開幕が迫るパリ五輪。「花の都」で100年ぶりに開催される一大スポーツイベントにおいて、小さくない関心を集めているのが、207か国の選手たちの大半が集う選手村の環境だ。

【画像】エアコンなしの質素なデザイン? パリ五輪選手村の全容をチェック

 セーヌ川沿いの広大な敷地に完成した同施設は至れり尽くせりの環境ではある。24時間営業の食堂に加えて映画館も完備。アスリートたちがストレスのない生活が送れるようにありとあらゆる工夫が凝らしてある。

 一方で懸念事項も噴出。とりわけ各国で物議を醸したのが、各室にエアコンが設置されていなかった点だった。

 大会招致の段階で「史上最も環境にやさしい大会を目指す」と謳った組織委員会は、地下水を利用した床下冷房を採用。エアコンを使わずとも、選手たち負担のない環境を作ることを約束していた。

 しかし、昨年に熱中症などにより5000人の死者を出したパリは、今夏も猛暑が予想される。ゆえに各国代表チームから反発の声が殺到。米国や英国、そして日本などが自費でのエアコン導入を決断し、合計2500台の移動式エアコンの持ち込み申請を受けていることが判明している。

 早々と「史上最も環境にやさしい大会」という目論見は崩れた形となった。こうした各国の動静を受け、パリ市長のアンヌ・イダルゴ氏も「私はアスリートが快適な環境を望むことを大いに尊重しているが、人類の生存についてもっと考えている」と公言。環境問題を重視する考えを示していた。

 だが、エアコン導入を決めた代表チームの首脳陣からは「当然」と言わんばかりの指摘が飛んでいる。米版『Yahoo! Sports』の取材に応じた米オリンピック・パラリンピック委員会のサラ・ハーシュランドCEOは「一貫性と予測可能性な状況がパフォーマンスにとって重要」と指摘。「選手たちとの話し合いの中で、これ(エアコン導入)は非常に優先度の高い事項でした。彼らはパフォーマンスにとって、慣れ親しんだ状況が重要と感じていた」と論じた。

 また、同メディアの取材に応じたオーストラリアのオリンピック委員会は「理由は最高のパフォーマンスを出すために必要だから」と明言。同じくブラジルのオリンピック委員会は「数回のミーティングを行った後に、我々はエアコンを借りずに理想的な休息と回復の条件を保証する方法はないと理解した」と指摘した。

 さまざまな意見が飛び交っている選手村のエアコン未設置。その問題に対する余波は、大会が始まることでより大きくなりそうな気配だ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

【関連記事】設備に不満? 選手村に各国代表がエアコンを続々導入 仏メディアからは“懸念”の声も「大会の評判に打撃を与える」【パリ五輪】

【関連記事】12歳少女への性的暴行で服役した蘭選手の五輪参戦が波紋 「選手村出禁」などの“特別措置”も反発の声止まず【パリ五輪】

【関連記事】「多くのメンバーはエアコンがなかったら大変そうでした」パリ五輪選手村のエアコン問題 体操代表監督の”実感”に「選手の体調管理が大事」【パリ五輪】