アルゼンチンの2連覇で幕を閉じたコパ・アメリカ。 今大会では、アルゼンチンが優勝候補筆頭の前評判にふさわしい強さを見せた一方で、ブラジルは準々決勝で敗退するなど、さまざまな話題があったが、日本のサッカーファンにとっては、この大会がアメリカ…

 アルゼンチンの2連覇で幕を閉じたコパ・アメリカ。

 今大会では、アルゼンチンが優勝候補筆頭の前評判にふさわしい強さを見せた一方で、ブラジルは準々決勝で敗退するなど、さまざまな話題があったが、日本のサッカーファンにとっては、この大会がアメリカで開かれたこともひとつの注目ポイントになったのではないだろうか。

 というのも、2年後のワールドカップがアメリカ、メキシコ、カナダの3カ国共催で開かれるから。しかも、全試合の7割以上がアメリカで行なわれるからだ。

 つまり、次回ワールドカップでほとんどの試合が行なわれる国の現状はどうなっているのだろう? というわけだ。

 ワールドカップで使用される全16会場のうち、今回のコパ・アメリカでも試合が行なわれたのは半分の8会場ではあったものの、実際に現地で取材してみた印象で言えば、それらすべてが普段はNFLやMLSで使われているだけに、観戦環境としては申し分ないものだった。

 スタンドは横に広がるのではなく、何階層にも積み上げる構造になっているため、最上階の座席であってもピッチを上から見下ろすような位置になり、非常に見やすい。加えて、どのスタジアムにも複数の大型ビジョンが設置されており、どの席からでも見やすくなっている。

 また、コンコースが広く、立ち並ぶ売店が数のうえでも、種類のうえでも充実しているので、試合前にはしっかりと飲食も楽しめる。これほど充実した環境でサッカーを見ることができるスタジアムは、残念ながら日本にはなく、はっきり言って、羨ましいのひと言だ。

 次回ワールドカップは、スタジアムだけで言えば、史上最高レベルの観戦環境が整っていると言ってもいいだろう。


2026年W杯では決勝の舞台となるメットライフスタジアム

 photo by Getty Images

 しかしながら、無邪気に喜んでばかりもいられない。いざ日本からワールドカップ観戦に出かけるとなると、とにかくお金がかかるのだ。

 アメリカだけでも十分に広大な国土を持っているのに、3カ国共催となると、試合を見るための移動距離がさらに長くなる。必然、移動を飛行機に頼らざるを得なくなり、交通費は高額になる。

 ちなみに、コパ・アメリカで優勝したアルゼンチンは、初戦のアトランタから決勝までのマイアミまで、総移動距離は8000㎞を超えたという。

 宿泊費にしても、コロナ禍後のアメリカは高騰傾向にあり、どの都市もホテル代は高め。次回決勝の開催地はニューヨーク・ニュージャージー(メットライフスタジアム)なのだが、マンハッタンのホテルは何もなくても最低3万円前後が当たり前なのに、これがワールドカップ価格に上がるとしたら、どうなるのだろう? と今から戦々恐々だ。

 交通費や宿泊費だけではない。

 スタジアム内の売店が充実していることは前述したが、そこでの飲食も安いものではない。コパ・アメリカでの試合会場の売店をのぞいてみたが、概ねビール1杯が16ドル前後。確認したなかで最も高かったのは、サンフランシスコ・ベイエリアのリーバイス・スタジアムで20ドルだった。

 1ドル=157円換算で、なんとビール1杯およそ3000円だ。

 当たり前の話だが、飛行機代にしろ、ホテル代にしろ、1ドル=100円が150円になれば、値段はすべて5割増し。ワールドカップの観戦を計画するうえで、歴史的円安はあまりに痛い。

 とはいえ、1ドル=100円だったとしてもビール1杯2000円なのだから、物価の高さは決して円安だけの問題ではないのだと実感させられるのだが。

 こうなると、せめてもの願いは、日本ができるだけ移動の負担が小さく、しかも、ホテル数が多い大都市で試合をするグループに入ってくれることだ。

 たとえば、アメリカと同組(グループⅮ)になり、初戦でアメリカと対戦することになれば、グループリーグ3試合の会場は、ロサンゼルス→サンフランシスコ→サンフランシスコ。これならば飛行機を使わずとも、陸路での移動も可能だ。サンフランシスコは、もともとホテル価格が高いことで知られる都市だが、近郊都市にもホテルは多いので、まずまず悪くない条件である。

 しかも、グループ1位通過なら次の試合会場もサンフランシスコ。移動だけを考えれば、最高だ。

 逆に同じ共催国のひとつでも、メキシコと同組となり、初戦でメキシコと対戦することになった場合、グループリーグ3試合の会場は、メキシコシティ→アトランタ→モンテレイ。グループリーグの段階でメキシコとアメリカを行き来しなければならないことになる。

 どのグループに入るか、さらには、そのグループ内でどのポジションに入るかによって、移動の負担(つまりは、金銭的負担)は大きく変わってくることになりそうだ。

 もちろん、開催されるのは2年後。為替レートをはじめ、さまざまな環境が変わっている可能性がないわけではない。

 しかしだからといって、急激に状況が好転するとも考えにくい。

 アジア最終予選が始まってもいないのに少々気の早い話かもしれないが、北中米3カ国共催のワールドカップは、日本人にとってなかなかに観戦のハードルが高い大会となりそうだ。