いよいよサッカー日本代表のパリ五輪挑戦が始まる。大岩剛監督が率いるＵ―２３代表、若きサムライブルーのキャプテンを務めるのは、藤田譲瑠チマ（２２）。パリ五輪の切符を手に入れたＵ-２３アジアカップで、大会ＭＶＰに輝いた守備的ミッドフィルダー(…
いよいよサッカー日本代表のパリ五輪挑戦が始まる。大岩剛監督が率いるＵ―２３代表、若きサムライブルーのキャプテンを務めるのは、藤田譲瑠チマ（２２）。パリ五輪の切符を手に入れたＵ-２３アジアカップで、大会ＭＶＰに輝いた守備的ミッドフィルダー(ボランチ)だ。
アジアカップにおける藤田のプレーで世界中のサッカーファンに強烈なインパクトを残したのは、２－０で勝利した準決勝のイラク戦だろう。
細谷真大の１点目、荒木遼太郎の２点目を、いずれもアシストしたのは、頼れるキャプテンだった。
そして、最後の強化試合となった開催国フランスとの一戦では見事、先制点を挙げる活躍。好調を維持しているようだ。
元日本代表の城彰二氏も｢別格｣と絶賛する彼の持ち味、得点を生むパスや広い視野、ボールを奪取するデュエル(１対１)の能力、そして戦局を見極める力は、どのようにして育まれたのだろうか。Ａ代表で活躍するリヴァプールの遠藤航以上の才能といわれる新時代の司令塔の、これまでのサッカー人生とは――。
日本代表の新ユニフォーム発表会のモデルとしてパリコレデビューを果たし、「楽しかったです」と語る藤田譲瑠チマに、インタビューを敢行した。
「すべて出し切って勝ちを狙いたい」
――東京ドームの敷地内に、日本サッカー協会の｢ｂｌｕｅ-ｉｎｇ!（ブルーイング）｣という施設があるんですが、なでしこジャパンＷ杯優勝のときの澤穂希さんのユニフォームとキャプテンマークと同じ場所に、Ｕ-２３アジアカップで優勝したときの藤田選手のキャプテンマークとユニフォームが展示されています。すでに日本のレジェンドと並んだといえる藤田選手ですが、パリ五輪で日本代表として戦うということは、藤田選手にとって、どういうことでしょうか？
藤田 自分の中ではまだまだだと思っていますが、オリンピックは年代別として戦うことができる最後の試合なので、今まで同世代の選手たちと積み上げてきたものを、すべて出し切って、勝ちを狙いたいなと思います。
――では、パリ五輪の目標は？
藤田 優勝したいと思っています。
――先日、日本サッカー協会の宮本会長にインタビューした際、パリ五輪で男子サッカーはザ・ファイナル、決勝戦を目指してほしいと話されていました。藤田選手は、それを超える目標を宣言されました。
藤田 サッカー選手である以上、優勝を目指して、すべての試合をやるべきだと思うので、優勝したいと考えています。
――応援しております。ちなみに、グループリーグで対戦する３チームですが、初戦７月２４日に当たるパラグアイはブラジルを破って南米予選１位、２７日に当たるマリはアフリカ予選３位、また、３０日に当たるイスラエルはヨーロッパ予選３位タイと、ＦＩＦＡランキングでは、１７位の日本よりも下（パラグアイ５８位、マリ５０位、イスラエル７９位 いずれもＡ代表＝７月９日現在）ではありますが、油断できない相手です。
「みんながみんなすごく戦える選手」
――中でもマリとは３月に親善試合で対戦して、日本はホーム(サンガスタジアム)で１-３で敗れています。
藤田選手は７６分からピッチに立たれましたが、マリ戦の感想として「相手との瞬発力やフィジカルの差が多く見られた」「そこから相手のチャンスになっていた」と当時、話されていました。そのマリ戦を含め、その３チームとの闘いに向けて準備していること、たとえば、マリならば、瞬発力、フィジカルで勝る相手に勝つために考えていること、準備していることはありますか？
藤田 特に、準備していることは、チームとしてもないと思います。ただ、常日頃から剛さん(大岩剛監督)やスタッフの人たちには「世界基準でプレーしろ」と言われているので、そういった準備は、代表メンバーはみんな、できているのかなと思います。
――藤田選手は、前回の東京五輪のときに、五輪代表のトレーニングパートナーのメンバーに入っていたと思うのですが、前回ベスト４に入り、ただ、メダルには一歩、届かなかった東京五輪メンバーを間近で見ていて、そのチームと今回のチームの違い、それと、さらに上に行くためには何が必要だと思いますか？
藤田 東京五輪のスペイン戦に関しては、勝つか負けるかわからないギリギリの難しい試合だったと思うので、あそこで勝っていたら、優勝できていたチームだと思います。
すごいチームだと思いますが、今のチームも、いいものがあると思います。自分たちは、みんながみんなすごく戦える選手ですし、パリの本選で戦ってみなければ、分からないかなという感じです。
――日本代表の過去の実績では、初戦で勝つと上昇気流に乗りやすい傾向（２００４年アテネ、２００８年北京、２０１６年リオデジャネイロでは、いずれも初戦で敗れてグループステージ敗退。初戦で勝った２０１２年ロンドン、前回の東京はベスト４入り）がありますが、何か初戦に対する特別な思い、覚悟のようなものはありますか？
藤田 自分は、初戦が特に大事だとは思っていません。試合は全部、大事だと思っているので。それに、もし初戦にすべてをかけて、あまりに初戦が大事だと考えすぎて初戦がコケこけたときに、受けるダメージが大きいと思うんですね。
だから自分は、特に初戦が大事とは考えず、目の前の試合、一戦一戦に全力を注げたらいいなと思ってます。
――期待しております。チームを支えて頑張ってください。
では続いて、日本にパリ五輪出場権とアジア制覇のトロフィーをもたらしたＵ２３アジアカップ カタール２０２４について振り返らせてください。
藤田譲瑠チマ（ふじた・じょえる・ちま）
２００２年２月１６日生まれ、東京都町田市出身。ナイジェリア人の父と日本人の母との間に生まれ、小学生時代は町田大蔵ＦＣでプレー。東京ヴェルディの下部組織で才能を伸ばし、２０１９年９月にトップチームデビューを果たす。その後、当時Ｊ１の徳島ヴォルティスから横浜Ｆ・マリノスを経て、２０２３年７月にベルギー１部リーグのシント・トロイデンへ完全移籍。日本代表デビューは、２０２２年７月の香港戦。４月にカタール・ドーハで開催されたＵ２３アジアカップで、キャプテンとして日本代表を優勝に導き、自身も大会ＭＶＰに輝いた。パリ五輪出場を決めた準決勝のイラク戦では、長短２種類のパスで２アシストし、２-０の勝利に貢献。その広い視野、デュエルの能力、正確な技術、試合の流れを読む洞察力は、Ａ代表の遠藤航(リヴァプール)以上との評価も。大岩剛監督の下、７月２５日（パラグアイ戦）からのパリ五輪に挑む。ポジション＝ＭＦ。身長１７５cm、体重７６kg。
