試合序盤は好プレーを見せた日本だが、徐々にマオリ・オールブラックスの勢いに飲まれていった(C)産経新聞社 6月29日にラグビー日本代表に準ずるジャパンⅩⅤはマオリ・オールブラックスと対戦し10-36のスコアで敗れた。エディー新体制下での国際…
試合序盤は好プレーを見せた日本だが、徐々にマオリ・オールブラックスの勢いに飲まれていった(C)産経新聞社
6月29日にラグビー日本代表に準ずるジャパンⅩⅤはマオリ・オールブラックスと対戦し10-36のスコアで敗れた。エディー新体制下での国際試合は6月22日のイングランド戦に続いて2連敗となった。
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マオリ・オールブラックス(以下MAB)は、ニュージーランドの先住民マオリ族の血を引くプレーヤーで構成されるチームで、国の正式な代表チームではないため、世界ランキングに登場することはないが、常に世界ランキング5位程度の実力を保っていると見なされている強豪チームだ。日本代表チームと3回対戦して3勝しているのをはじめ、オールブラックスのライバルである豪州やフランス、イングランド、ブリティッシュ&アイリッシュライオンズ(英国の3協会とアイルランドの選抜チーム)に勝利した歴史もあり、直近では2022年に当時世界ランキング1位のアイルランドに勝利している。
このチームの特長はそのままオールブラックスの特長と言ってよい。
・個々の走力が強く、FW、BK関係なくランプレーでのロングゲインが可能。
・同じく、FW、BK関係なくオフロードパスの技術、精度が高い。
・攻守の切り替えが迅速で、ピンチを一気に挽回することに長けている。
・上記三つの特長から、相手キックをキャッチした後や、密集近辺でのこぼれ球など、アンストラクチャーな場面からのトライが多い。
極々粗っぽくまとめてしまうと以上のような特色がある。ある意味ジャパンⅩⅤにとっては前週のイングランドよりもやりにくい相手だ。迂闊にキックを蹴れば突破力のあるBK陣に走られるし、攻めていってもちょっとフォローが遅れてボールキャリアーが孤立してしまえば、すぐさまターンオーバーを喰らうからだ。そして、こうした逆襲はかなりの確率でトライに結びつく。プレーの局面局面では善戦しているものの、ちょっとしたミスから逆襲されて得点差だけが開いていくという、観ていて一番イライラする展開になることが多いのだ。
しかし、この試合、こうした不安を吹き飛ばすほどに、ジャパンⅩⅤの入りは良かった。先制トライは相手とのコンタクト後、ラックが成立する前にHO原田が素早くボールを拾い上げてインゴールに雪崩れ込んで挙げたが、これは「超速ラグビー」の一つの理想型だったと言えよう。その他にも2回連続でスクラムで反則を誘ったことなど、さまざまな場面全てで厳しいプレッシャーをかけ、MABのプレーヤーたちを散々に慌てさせた。
そんな中でも一瞬の隙をついてゴール前まで迫り、すぐさま同点のトライを奪い返したMABは流石だとしか言いようがないが、しばらくはジャパンⅩⅤの攻勢が続く。素早い仕掛けに、度重なる反則を犯したMABは自陣に釘付けにされながらシンビンによる退場者で1名少ないという状況に追い込まれたのだ。
ここで、一気に畳み掛けてリードを広げたかったジャパンⅩⅤだったが、MABは追加点を許さなかった。これは王国の底力の現れでもあり、またジャパンⅩⅤのチームとしての成熟度の低さの現れでもあった。この後は筆者が戦前に予想した通りの、ミスを突かれて逆襲を喰らい、一気にトライまで持って行かれて点数差だけが開いていく、という負け試合パターンに見事にハマってしまい、試合終盤までこの状態が続いた。最後の最後でスクラムで押し勝って得たチャンスから根塚が1トライを返したものの、時すでに遅し。観衆も選手もフラストレーションが溜まった一戦だったろう。
収穫はスクラムで優位に立ったこと。4回も反則を誘ったことは大いに誇ってよいと思う。今後もスクラムは大きな武器になることだろう。
イングランド戦に比べ、敵陣で戦う時間が長くなったことも収穫の一つだ。能動的な仕掛けで敵陣深くまで攻め込むことまではできるようになったのだから、後はスペシャルなムーヴメントを用意するか、絶対的なフィニッシャーを育成するかということになろう。この試合フル出場して度々快走を見せた矢崎にはフィニッシャーとしてもムーブメントの中心的な存在としても成長していくことを期待したい。
一方で残念だったのがラインアウトからの攻撃。スチールを3度くらったのも大いに反省すべきだが、それ以上にラインアウトからのモールプッシュにこだわりすぎた印象があった。しかも、押し切ってトライを取るどころか2度も相手にボールを奪われるという失態も犯した。スローのミスは減ったという印象があり、ある程度安定してボールを確保できる目処は立ったのだから、モールプッシュ以外のオプションもぜひ開発していただきたい。2027年W杯に向けての大きな課題の一つだ。
この2戦でまだまだチームとしての成熟度が足りていないことが明らかになり、課題も山ほど見つかった。2027年までの3年は長いようで短い。この2試合の敗戦の教訓をどう活かして3年後に繋げていくのか。エディーHCの手腕に注目したい。
[文:江良与一]
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