花咲徳栄の埼玉県勢初となる優勝で幕を閉じた第99回高校野球選手権大会。来年はいよいよ第100回大会を迎える。記念大…

 花咲徳栄の埼玉県勢初となる優勝で幕を閉じた第99回高校野球選手権大会。来年はいよいよ第100回大会を迎える。記念大会となるため、出場校は今年よりも7つ多い56校となる(埼玉、千葉、神奈川、愛知、大阪、兵庫、福岡も2校出場)。そして100回大会の主役となる現2年の選手たちは、多くが2000年生まれで、しかも逸材揃いということもあり”スーパーミレニアム世代”と呼ばれている。

 実際、この夏の甲子園でも「おっ、いいな!」と思う選手は、たいてい2年生だった。彼らが主力となる来年は、今からハイレベルな戦いが期待されている。そこで甲子園で見つけた第100大会の主役になりそうな逸材たちを紹介したい。



センス溢れるプレーを見せた聖光学院の矢吹栄希

 筆頭は、根尾昂(投手・内野手・外野手)や藤原恭大(外野手)、柿木蓮(投手)の”大阪桐蔭組”と、万波中正(投手・外野手)や斉藤大輝(内野手)の”横浜組”。高校球界を代表するこの名門2校には、「なんとしても100回大会で優勝するんだ!」との気迫を感じるほど、全国から選りすぐりの精鋭たちが集められた。ひとりひとりは紹介できないが、まだまだ宝が埋まっているのは間違いない。

 このほかでは、優勝チームの4番を担った野村佑希(花咲徳栄/内野手)、興南戦で特大の一発を放った林晃汰(智弁和歌山/内野手)、2試合で3本塁打の中澤樹希也(青森山田/外野手)、打率6割をマークした浜田太貴(明豊/外野手)らの選手が、評判通りの活躍を見せた。

 前述した大阪桐蔭、横浜の選手たちを含め、彼らはこれから1年の結果次第ではドラフト上位候補になりうる存在である。当然、彼らのことは大会前から知っていたし、甲子園での活躍を見ても驚きはなかった。

 一方で、大会が始まって「こんな選手がいたのか!」と、あらためて”スーパーミレニアム世代”の奥深さを見せつけられたのが、この3人だ。

 まずは、聖光学院のセカンド・矢吹栄希(やぶき・はるき)。

「こんなうまいセカンドいたんだ……」と昨年の記憶をたどっても思い当たらないので、メンバー表を見たら”2年生”だったから驚いた。

“常勝・聖光”の内野手で、しかも打順は上位。そんな重責を担っているのだから、プレーは慎重で、堅実な野球をするのだろうなと勝手に想像していたら、とんでもなかった。こんなに奔放なプレーをする二塁手は、なかなかお目にかかれない。「エラーをしないように……」とか「失敗しないように……」といった”守りの姿勢”がまるでない。矢吹のスタイルは守備でも攻撃でも、とにかく攻める。

「こっちに飛んできそうだ」と思ったら迷わずポジショニングを変え、そこで悠然と待ち構える。読みの確かさと華麗なフィールディング。さらにスナップスローも鮮やかにこなすなど、基本の技術もしっかり身につけている。

 バッティングでも、ショートバウンドになりそうな変化球はじっくり見極めるものだが、矢吹は積極果敢に打ちにいき、バットのヘッドをタイミングよく返して内野手の間を抜いていく。

「やれる!」という自信と、高度なプレーをイメージ通りに体現できる体の柔軟性とメカニズム。勝負度胸というよりは”怖いもの知らず”。おそらく今は、この表現の方が合っているだろう。

 新チームとなり、常勝・聖光の攻守の大黒柱となっていくはずだ。”勝利”を意識するあまり、伸びやかなプレーがしぼんでしまうことのないように……。

 その矢吹よりも、さらに自分のポジションを支配し、自由自在に甲子園のグラウンドを駆け回ったのが、東海大菅生の遊撃手・田中幹也。

 選手の大型化が目立つ昨今の高校野球界にあって、田中のようなサイズ(166センチ、61キロ)の選手は逆に目立つ。しかも体は小さいが、やることが大きいから、見ていてこんなに痛快な選手もいない。

 三遊間も二遊間も、前も後ろも、苦手なコースがない。かつてプロ球界の名手と呼ばれた選手から「実は苦手な打球のコースはある」と告白されたことがあったが、田中のプレーを見ていると、まったくそれを感じさない。

 三遊間を抜けようかという打球でも、そこに田中がいる。超人的なポジショニングと打球への反応、そしてボールにチャージするまでの猛烈なスピード。決して地肩は強くないが、その分、捕ってから投げる速さと送球の正確性は、やはり高校生レベルの域をはるかに超えている。

 こんな選手がチームメイトにいたら、毎日の野球がどんなに楽しいことか。田中幹也は、そういうすごさを持った”小さな巨人”である。

 その田中とは対照的に、181センチの長身を生かしたダイナミックなプレーを持ち味としているのが、天理の遊撃手・太田椋。

 長身の高校生遊撃手がこれほどバランスよく動いて、安定したフィールディングをする姿は、坂本勇人(光星学院→巨人)の高校時代と重なる。

 なかには、手足の長さが邪魔になる選手もいるが、太田はそれを味方につけて、守備範囲を広くしているのが彼の才能といえる。

 ちなみに、坂本の高校時代のバッティング練習は、ほとんどの打球がセンターから右方向へ集中していた。常に”インサイドアウト”のスイングを心掛けていれば、左方向へはいつでも打てる――その意識が、坂本のバッティングのメカニズムをプロ仕様にしていった。太田もぜひ参考にしてほしい逸話だと思う。

 この夏の甲子園で輝いた多士済々の”スーパーミレニアム世代”。当然、甲子園出場を果たせなかった逸材は、まだまだ全国にいっぱいいる。そんな2年生のうち、記念すべき第100回出場を果たせるのは……あと1年、今から胸ときめかせて待つことにしたい。