日本球界を沸かせた生粋の“お祭り男”、杉谷拳士――。帝京高校からドラフト6位で北海道日本ハムファイターズに入団し、パンチ力のある打撃と俊足、そして内外野可能なユーティリティープレイヤーとしてプロ14年間を戦い抜いた。2022年限りで現役を…
日本球界を沸かせた生粋の“お祭り男”、杉谷拳士――。帝京高校からドラフト6位で北海道日本ハムファイターズに入団し、パンチ力のある打撃と俊足、そして内外野可能なユーティリティープレイヤーとしてプロ14年間を戦い抜いた。2022年限りで現役を引退した現在も、東京と札幌を拠点に解説者、テレビ出演、実業家、YouTubeと、これまで以上の“万能ぶり”を見せている。
その杉谷氏が現役時代、強く願いながらも叶えることができなかったのが、オールスター出場だった。高卒3年目の2011年にファームのフレッシュオールスターで優秀選手賞を受賞した実績も持つ杉谷氏だが、1軍昇格後に“夢の舞台”への切符を掴み取ることはできなかった。
「子どもの頃からオールスターに出たいっていう気持ちはずっと持っていましたし、現役時代はファン投票の動向をメチャクチャ、気にしていましたね(笑)。特に投票期間中は、ここで1本打ったら一気に票が増えるんじゃないかって思っていましたし、ノミネートされただけでモチベーションが上がっていた。そこで頑張ったら、監督推薦の可能性もあるかなって、栗山(英樹)さんだったらもしかしたらあるかなって期待していました。特に2015年の時は絶好調(交流戦終了時点で規定打席未到達ながら打率.322をマーク)だったんですよね!あの年は正直、あるかなと思った…。でも、いろんなポジションを守っていたので、票が割れちゃったんじゃないかと、自分ではそう思っています(苦笑)」
プロ野球選手の中でも、ごく一部の選手にしか立つことができない“夢舞台”。杉谷氏も多くの名場面が記憶に残っている。
「松坂(大輔)さんとイチローさんの対決とか、新庄(剛志)さんのホームスチールとか、いろんな印象的なシーンを思い出しますね。でも個人的には赤星(憲広)さんかな。初めてオールスターに出た時(2003年)です。それまでちゃんと見たことがなかったんですけど、衝撃的でした。もう“めちゃくちゃ速い!”って思いましたね。その意味では、松井稼頭央さんもすごかった。走りまくっていましたからね。最近だと、清宮(幸太郎)選手かな。あのホームラン(2022年の第1戦でのサヨナラ本塁打)は、ただただ嬉しかった。まだ一緒にプレーしていた時ですけど、“幸太郎!”って叫びましたね。“こういう時だけ打つんかい!”とも言ってましたけど(苦笑)」
■日本ハムの“球宴ジャック”への想い
多くの名場面を思い出されるからこそ、「やっぱりオールスターは夢でしたし、オールスターで人生は変わると思います」と杉谷氏は言う。そして今年は、ファン投票の中間発表の時点(取材時)で日本ハムの選手たちがパ・リーグ12部門中9部門でトップに立っているが、この“球宴ジャック”に喜びながらも、複雑な心境を吐露する。
「今の日本ハムには若い選手たちがたくさんいるので、このまま選ばれたとすれば、このオールスターの経験を後半戦に活かしてもらいたい。魅力のある選手が多いですし、オールスターに出ることで、より多くの人に知っていただけるというのは率直に嬉しいです。でも正直、まだまだ“これから”の選手が多い。だから勘違いはしてもらいたくない。今の成績に満足するのではなく、もっと打てるし、もっと投げられる。その能力がある選手たちだと思っています。ですので、この成績で選ばれたことに満足せず、オールスターでの経験を必ず、自分自身の成長へと繋げてもらいたい」
果たして、最終的に日本ハムから何人の選手が選ばれるのか。Web投票に続いて、スマートフォンアプリからの投票も可能になった今年のオールスター。そこで選ばれた選手たちが、どのようなドラマを演じるのか。プロ野球「マイナビオールスターゲーム2024」の第1戦は7月23日にエスコンフィールドHOKKAIDO、第2戦は7月24日に明治神宮野球場で開催される。