大谷は投打でプレーすることへの情熱は「変わっていない」と言い切った(C)Getty Images ドジャースの大谷翔平は、投手としての復活ロードを着実に歩んでいる。昨年9月19日に2度目の右肘手術を行ってから8か月が経過。距離はまだ…

大谷は投打でプレーすることへの情熱は「変わっていない」と言い切った(C)Getty Images

 ドジャースの大谷翔平は、投手としての復活ロードを着実に歩んでいる。昨年9月19日に2度目の右肘手術を行ってから8か月が経過。距離はまだ短いが、キャッチボールの強度も徐々に上がり、本人によると80マイル (約129キロ)までに回復したという。打者で出場しながら、連戦の移動やチーム休養日などで変更はあるが、基本的には1日おきの投球練習でリハビリを継続。初動のセットポジションでヒップを意識し、腕の振り方にも工夫を重ねている。

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 5月中旬、『USA TODAY』の名物記者ボブ・ナイチンゲール氏が大谷の考えに詳しい人物の情報として、①球団からの要請があれば素直に受け入れ、二刀流を断念して野手に専念すること、②大谷自身が打撃ほど投球への情熱を注いでいないこと、2点の見解を示した。

 確かに、二刀流は大谷の希望だけで成り立つものではない。これまでも日本ハムやエンゼルスのサポートと後押しがあり、実績を積み上げてきた。一方で、エンゼルス時代の元同僚ウォルシュやロレンゼン、パドレスのクロネンワースらは球団の意向もあり、投手もしくは野手に専念。選手本人の意思と球団側のプランが合致してこそ、二刀流が可能になるのが前提にある。

 大谷はメジャーに挑戦した2018年、投打でトップレベルの才能を示した。その後は右肘と左膝の手術など故障が続いた。その度に、二刀流への意欲を問われた。かつて、「野手をやれって言われたらやりますし、ピッチャーだけやれと言われたらやりますけど、どちらもできるのであれば、その可能性があれば、やりたい」と言った。おそらく、基本的な考え方は変わっていない。球団からの要請があれば将来的に打者専念の選択を迫られることもあるだろう。ただ、現時点でその可能性を考えることはない。

 昨年、右肘の靱帯(じんたい)損傷が見つかってから約3週間、最善の手術法を模索した。1回目と同様、ドジャースのチームドクターでもあるエラトロッシュ医師が執刀し、手術直後に「ショウヘイと慎重に検討した結果、肘が長持ちするよう生体組織を移植し、健康な靱帯(じんたい)を強化した」と声明を発表。代理人のネズ・バレロ氏も「ショウヘイはこの先、何年も投打で出来る機会を探りたかった」とコメントした。

 手術を行うにあたっての長期的なプランや、日々のリハビリに取り組む姿勢を踏まえれば、二刀流の復活へ強い気持ちで臨んでいることは間違いない。5月27日、投打でプレーすることへの情熱について「特に変わってないですね。この手術も1回目ではないですし、2回目で、ある程度どういうスケジュールでいくかは分かっているので、あまり焦ることなく出来ているかなと思います」と言った。時折、同僚・山本由伸のフォームのモノマネなどで楽しみ、リラックスした様子も見せる。リハビリスタッフとともにコミュニケーションを取りながら、着実に段階を上げている。

 長期的な二刀流継続を目指しつつ、自分らしさを貫く覚悟もある。投手・大谷は100マイル (約161キロ)前後のフォーシームが大きな魅力の1つ。一方で肩肘には負担がかかり、故障のリスクも高まる。大谷は「出力が上がれば、パワーピッチャーだとしょうがない部分ではあるので、そこは前回から今回もそうですし、ある程度割り切ってというか、パフォーマンスを下げないように、そこだけは注意してというか、自分自身であまり諦めないように、そのままの感じでいきたい」と話し、妥協するつもりはない。

 打者専念の今季はここまで、腰痛や左太もも裏の打撲が悪化して張りが出たが、大きな故障はなくプレーを続けている。今後、ケアすべき箇所については「一番は肘じゃないですかね。別にかばうことはないと思いますけど、ケアしなければいけないポイントではあるので、毎日ケアしますし、状態を確かめながらやるのは大事」と話した。出来る限り、投手でもプレーを継続する――。その姿勢は毎日の練習や言葉からも伝わってくる。

[文:斎藤庸裕]

【著者プロフィール】

ロサンゼルス在住のスポーツライター。慶應義塾大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。プロ野球担当記者としてロッテ、巨人、楽天の3球団を取材した。退社後、単身で渡米し、17年にサンディエゴ州立大学で「スポーツMBAプログラム」の修士課程を修了してMBA取得。フリーランスの記者として2018年からMLBの取材を行う。著書に『大谷翔平語録』(宝島社)、『 大谷翔平~偉業への軌跡~【永久保存版】 歴史を動かした真の二刀流』(あさ出版)。

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