■「4冠」目標に掲げた今季もすでに勝ち点を落とし崖っぷち 伏兵がチームの窮地を救った。明大は18日、東京六大学春季リーグ…
■「4冠」目標に掲げた今季もすでに勝ち点を落とし崖っぷち
伏兵がチームの窮地を救った。明大は18日、東京六大学春季リーグの慶大1回戦に5-0で先勝。途中出場の吉田匠吾内野手(3年)が値千金のリーグ戦初本塁打を放った。
2022年春から昨春まで3連覇を達成した明大だが、昨秋は慶大の後塵を拝し2位。今季は春、秋のリーグ戦に全日本大学野球選手権、明治神宮大会も加え「4冠」を目標に掲げて臨んでいるが、すでに早大に勝ち点を落とし、負けられない状況に追い込まれている。
1-0とリードして迎えた7回、2死から左打者の光弘帆高内野手(2年)が逆方向の左前にヒットを放ち出塁。途中から一塁の守備に就いていた吉田が同じく左打席に入った。
「光弘が目の前で逆方向へ、いい打球を打ったので、自分も逆方向へのイメージを持って打席に入りました」と言うが、慶大先発のエース・外丸東眞投手(3年)が真ん中付近に投じたストレートを一振りすると、打球は狙いとは反対の右翼方向へ。ポール際のスタンド中段に飛び込み、劇的2ランとなった。この1発で勝利をぐっと引き寄せた。

「外丸くんはやはり、いい投手で、今日も打たされるケースが多かった。終盤に入って球数が増え、少し甘い球が来たところを逃さず、チームにとって苦しい場面で吉田がよく打ってくれた」と称えたのは田中武宏監督。吉田自身にとっては通算14打席目にしてリーグ戦初本塁打となり、「初めてのホームランなので新鮮というか……うれしかったです」と夢見心地だった。
吉田はセンスの塊のような選手で、埼玉・浦和学院高時代は投手、遊撃手、二塁手などを兼ねていた。3年生の夏に甲子園出場を果たすと、最後の試合となった日大山形との2回戦で、投手として2回2失点で降板後、二塁→遊撃→二塁とシフトチェンジした。
明大進学後は野手に専念。当初は遊撃か二塁を守っていたが、遊撃には1学年上の主将で今秋ドラフト1位候補でもある宗山塁内野手(4年)が君臨し、二塁にも同学年で強打を誇る木本圭一内野手(3年)がおり、なかなか出場機会に恵まれない。昨秋からは、それまで経験のなかった一塁を主に守っている。

「今はチーム事情でファーストをやっていますが、練習の時から非常に元気よくやってくれている。そういう吉田が打ったから、余計にチームの士気が上がったのではないか」と田中監督は指摘する。
チームは8回にも2点を追加し快勝。吉田は「声を出して元気よく、というところは誰よりも意識しています」とうなずき、「常々『チームで勝つ』と言っているので、これからも自分勝手にならず、チームのために1つ1つやっていきたいです」と自分に言い聞かせるように付け加えた。
明大は昨年に比べると、主戦だった村田賢一投手(現ソフトバンク)、蒔田稔投手(現JFE東日本)、石原勇輝投手(現ヤクルト)の3人が一気に抜け、投手力の低下が否めない。それでもこの日は、先発の高須大雅投手(3年)が5回2安打無失点に抑えた後、3人のリリーバーが無失点でつなぎ、計4人で完封リレーを達成した。一方、主将の宗山は「上半身のコンディション不良」を理由に4試合連続欠場中で、苦しい戦いは続く。
田中監督は最後に「吉田はシーズンに入ってから打撃の状態がいいですし、嫌な顔ひとつせずに、どこでも守ってくれる。あとは困った時にピッチャーをやらそうと思っていて、『誰もいなくなったら、最後に投げろ』と言ってあります。何しろ、甲子園投手ですから」とジョークをまじえながら、殊勲の伏兵をもう1度持ち上げた。「4冠」の目標を、そう簡単に下ろすわけにはいかない。
(Full-Count 宮脇広久)