高橋慶帆インタビュー 後編(前編:シニア代表で「ガチファン」だった柳田将洋と過ごした時間>>) 男子バレー日本代表のB代表が銅メダルを獲得した昨年の杭州アジア大会で、7試合中5試合もチーム最多得点をマークした高橋慶帆だが、大会中にプレーとは…

高橋慶帆インタビュー 後編

(前編:シニア代表で「ガチファン」だった柳田将洋と過ごした時間>>)

 男子バレー日本代表のB代表が銅メダルを獲得した昨年の杭州アジア大会で、7試合中5試合もチーム最多得点をマークした高橋慶帆だが、大会中にプレーとは別の部分でも大きな注目を集めた。端正なルックスで、SNS上で「イケメン」と話題になり、公式Instagramのフォロワーは今や16万人を超えている。

 しかし高橋は、そんな騒がしい周囲に惑わされることなく、法政大学に戻った後も関東大学バレーボールの秋のリーグで活躍。その後はⅤリーグのジェイテクトSTINGSにも参加し、昨年に続いて日本代表にも選ばれた。

 大きく成長中のオポジットに、大学在学中にプレーしたVリーグでの手応え、今年度の日本代表での目標などについて聞いた。



2023-24シーズンのVリーグではジェイテクトSTINGSでもプレー photo by 中西美雁

【大きく取り上げられすぎてプレッシャーも】

――アジア大会中、ご自身の知らないところで「イケメンバレー選手」としてブレイクしましたね。

高橋 気がついたらそんなことに(笑)。

――これまでも、芸能事務所のスカウトから声をかけられることがあったと伺いました。

高橋 そうですね、ちょくちょくありました。

――オフの過ごし方が気になるファンも多いと思いますが、どう過ごしているんですか?

高橋 けっこう自転車に乗りますね。地元(千葉県・旭市)は海が近いので、実家に帰ったら海沿いをサイクリングしたり。あとは、たくさん寝ます(笑)。

――今でもルックスが取り上げられることも多いと思います。それに対してはどう思いますか?

高橋 まずはプレーでしっかり活躍しないといけないと思っています。まだ実力や結果が伴ってないのに、ちょっと大きく取り上げられすぎてプレッシャーも感じています。僕に興味を持って試合に来ていただいた方が、プレーを見た時に「大したことないな」と思ってしまうのは悲しいですから。

 ただ、それは自分がスキルアップすればいいだけのこと、まずはバレーに集中して、できることからしっかりやっていきたいです。2023-24シーズンは大学生の身ながらV1のジェイテクトに参加させていただいて、すばらしい環境で練習や試合ができました。感謝の気持ちを忘れずに、今後もレベルアップしていきたいです。

【法政大の一部昇格に「やっと上がれた」】

――話が前後しますが、昨秋は法政大学が8年ぶりに関東大学バレーボールの一部昇格を決めましたね。おめでとうございます。

高橋 ありがとうございます。

――法政大学は、かつて日本代表で活躍した青山繁さんや大竹秀之さんらを輩出した名門ですが、二部に落ちた後はなかなか一部に戻れませんでした。この1年で高橋選手がさまざまな経験を積み、チームに還元できたことも大きいのでは?

高橋 僕が昨年度の代表に選ばれて、春のリーグは代表合宿にも行きながら、土日は大学に戻ってリーグ戦を戦うというハードスケジュールで体もけっこうきつかったです。春リーグの頃の法政大は僕の調子次第な部分があったチームだったので、勝てる試合を落とすこともありました。

 ただ、春のリーグが終わり、僕が完全に代表活動に専念するとなった後に、チームの中に「慶帆なしでも勝てるようにならないといけないという意識が芽生えた」と聞いています。結果として、秋のリーグは僕が代表から戻るまで全勝。合流後は僕も助けられましたし、全員の力で一部昇格を勝ち取れたと思います。

 決して僕が代表を経験したから、それをチーム内に広めたからチームが強くなった、というわけではないと思います。本当に全員が、自分で考えながら練習やプレーができるようになったからこその昇格だと思っています。

――昇格が決まった時の気持ちを教えてもらいますか。

高橋 嬉しかったです。本当にやっと、やっと上がれたという感じでした。でも、昇格したことがゴールではない。これから一部の強いチームと戦って、勝てない試合も必ず出てくるでしょうけど、敗けた試合でも自分たちの成長につなげられるものを見つけて、チームをレベルアップさせていきたいですね。

――法政大の「名門復活」への思いは?

高橋 もともと強豪だったので「復活できればいいな」とも思いますが、その代はその代ですから。自分たちは自分たちの代で、できることをやって最大限の成績を残すことを第一に考えてやっていけばいいのかなと思います。

【ジェイテクトで関田誠大ともプレー】

――そして、大学在学中にジェイテクトに参加することになりましたが、どんな経緯があったのでしょうか。

高橋 B代表で国際大会を経験したことで、「高いレベルでプレーしたい」と強く思うようになりました。アジア競技大会が終わって大学に戻った当初は、決して大学バレーを軽んじているわけではないんですが、自分のスイッチがうまく入らない時もありました。より厳しい環境に身を置いたほうがスキルアップするとわかっていましたし、大学バレーのオフシーズンで「来年の代表に向けてやれることをやりたい」と思い、ジェイテクトに参加させていただくことになりました。

 ジェイテクトには日本代表の正セッターである関田誠大さんがいることも、代表がどんなバレーを目指しているのかを把握する上で大きいと思いました。大学に通って授業やテストを受けながら、移動時間もけっこう長いので大変ではありますが。「大変なうちが華」といいますか(笑)。ほかの大学生ではあまり経験できないことから、さまざまなことを吸収していこうと。

――大学在学中にVリーグでも活躍する例としては、パナソニックパンサーズでプレーした大塚達宣選手(当時・早稲田大学)やエバデダン・ラリー選手(当時・筑波大学)が参考になりましたか?

高橋 かなり参考になりました。「大学生のうちにこういうこともできるんだ」と、いうことをふたりが証明してくださったので。

 ジェイテクトのみなさんはすごく気さくで、コミュニケーションも取りやすいです。わからないことがあったら何でも聞いてくれますし、ご飯も一緒に連れていってくれます。僕はチームに合流した当初、ちょっと遠慮していたんですけど、だんだん自分からもコミュニケーションを取れるようになりました。

――関田選手とのコンビなど、Ⅴリーグでのプレーで印象に残っていることは?

高橋 やはり国内トップリーグで外国人選手もレベルが高いですから、ブロックも高いですし、フロアディフェンスもすぐれているのでスパイクを決めるためにも頭を使わないといけない。関田さんは本当にすばらしいセッターなので、一緒にプレーすることができて学びの時間となりました。

【右利きのオポジットとしての武器】

――日体大在学中にセリセAでプレーした高橋藍選手のように、海外リーグでプレーすることは考えましたか?

高橋 今季は考えませんでしたが、今後はわからないですね。海外に行ってみたい気持ちも、なくはないです。

――今季も日本代表に選ばれました。現在の日本代表には、西田有志選手や宮浦健人選手など左利きのオポジットが多いですが、右利きのポジットとして武器だと考えている部分は?

高橋 ライト打ちなので、右の打点までトスを持ってきてもらうとだいぶ打点が高くなる。そこが武器だと思っています。レフト打ちもそんなに苦手ではないので、どのローテーションも回せます。あとは、打ち方にちょっとクセがあるんですが、そこも有効に使っていきたいです。

――今後の目標は?

高橋 代表に入る、という目標は達成できたので、次は世界と戦って活躍できるようになること。昨年はアジア大会でプレーできましたが、まだまだだと思いますし、そこに向けて頑張っていきたいです。

 そして今年度は、ネーションズリーグに出たいです。男子代表は五輪の出場権をすでに獲得しているので、フィリップ・ブラン監督も「今年のネーションズリーグは若手の選手を試す」とおっしゃっていた。まずは、そこになんとか入れるようにと考えています。

 さらに欲張るなら、パリ五輪に出場したい。現実的には、僕がパリ五輪に出られる可能性はそんなに高くないと思います。だからまずは、昨日の自分を超えていく、過去と比較してここまでできるようになった、ということを積み重ねていきたいです。ありきたりかもしれませんが、「今の最大のライバルは自分」という感じですね。

【プロフィール】
◆高橋慶帆(たかはし・けいはん)

2003年10月13日、千葉県生まれ。身長193cmのオポジット。イラン人の父と日本人の母を持つ。小学2年生から始めたサッカーを怪我の影響でやめ、中学2年生の途中からバレー部に入部。習志野高時代にはエースとして春高バレーに3年連続出場し、3年時にはベスト16に入った。法政大も進学し、2022年はU-20代表メンバー入り。2023年にはシニア代表にも選出され、杭州アジア大会の銅メダル獲得に貢献した。