◆プロボクシング ▽WBA、WBC、IBF、WBO世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)タイトルマッチ12回戦 王者・井上尚弥―WBC同級1位ルイス・ネリ(6日、東京ドーム) 世界4団体スーパーバンタム級統一王者・井上尚弥(大橋)が、W…

◆プロボクシング ▽WBA、WBC、IBF、WBO世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)タイトルマッチ12回戦 王者・井上尚弥―WBC同級1位ルイス・ネリ(6日、東京ドーム)

 世界4団体スーパーバンタム級統一王者・井上尚弥(大橋)が、WBC同級1位の挑戦者ルイス・ネリ(メキシコ)を6回1分22秒、TKOで粉砕し、4団体王座の防衛を果たした。

 WBC、WBOは2度目、WBA、IBFは初防衛に成功。世界戦連勝記録を22とし、井岡一翔(35)=志成=の日本人最多勝利数で22と並んだ。1990年2月のマイク・タイソン―ジェームス・ダグラス戦以来、34年ぶりにボクシング興行が行われた東京ドームで、井上尚が初の日本人メインイベンターを務め「とてつもない試合をする」と予告した通り、4万人近い大観衆を沸かせる伝説を作った。

 歴史的興行にふさわしい戦いとなった。

 1回1分50秒過ぎ。衝撃が走った。近距離でネリの左の強振をまともに食らって、尚弥が横倒しになるようにダウン。ドームに悲鳴が沸き起こった。プロ27戦目で初めてのダウン。カウントが数えられる中、尚弥もぼう然とした顔になった。しかし、2回には反撃だ。今度は尚弥が右のカウンターでダウンを奪い返す。ネリの左の強振をかわして、カウンターでキャンバスに倒し、王者の意地を見せた。5回2分30秒過ぎには頭をゴリゴリとつけてパンチを打ってきたネリに離れ間際に放った強烈な左フックで2度目のダウンを奪った。フィニッシュは6回だ。右の強打でネリをなぎ倒すかのようにキャンバスに沈める。ロープから上半身がはみ出す様な体勢でグロッギーになったネリにレフェリーが近づくと、手を振って試合を終わらせた。

 井上尚は、2014年4月6日、WBCライトフライ級(48・9キロ以下)タイトルマッチで、当時王者のアドリアン・エルナンデス(メキシコ)を6回TKOで破り、当時日本選手最速となるプロ6戦目で世界王座を獲得した。あれから10年。「やるべきことを突っ走ってきたら10年経過しました。特にプレッシャーも感じることもなかった。強くありたいという気持ちがでかいのかなと思う」と連勝記録を積み重ね、日本人で初めて東京ドームのメインを務めた。

 もっと強くなりたいという思いで進化を続けてきたモンスターを見るため、東京ドームには大観衆が詰めかけた。これまでの日本人メインでの最多観衆は、白井義男が日本人初の世界王者となった1952年5月のダド・マリノ(米国)との世界フライ級(50・8キロ以下)タイトルマッチ(後楽園球場)の4万5000人。世界王者として10年目、大橋ジム創立30周年でもある記念の年に、歴史的興行をけん引した。

 相手のネリは17年の元WBC世界バンタム級(53・5キロ以下)王者・山中慎介(帝拳)戦後にドーピング検査で陽性となっていたことが発覚。翌年の再戦では体重超過でタイトルを剥奪され、アンフェアな条件で戦った山中は2連敗を喫し、涙を流した。日本人とは因縁深い相手である「悪童」を退治。日本が生んだ世界的スーパースター「モンスター・井上尚弥」がドームの中心で勝利の雄たけびを挙げた。

 ◆井上 尚弥(いのうえ・なおや)1993年4月10日、神奈川・座間市生まれ。31歳。相模原青陵高でアマ7冠など通算75勝(48KO・RSC)6敗。12年10月にプロデビュー。14年4月に6戦目でWBC世界ライトフライ級、同12月にWBO世界スーパーフライ級、18年5月にWBA世界バンタム級王座を獲得し3階級制覇。19年11月のWBSS決勝でドネア(フィリピン)を下して優勝。22年12月にバンタム級では世界初の4団体王座統一。23年7月に日本人2人目の4階級制覇を達成し12月にスーパーバンタム級でも4団体を統一。身長165センチの右ボクサーファイター。